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2008.12.02 楽天プロフィール Add to Google XML

「オリンピックの身代金」 奥田英朗
[ ★★★★★な本 ]    

昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。


<感想> ★★★★★

奥田英朗さんといえばコミカルな作風のイメージをお持ちの方も多いと思

いますが、本書は本格的なサスペンスです。 既刊では『邪魔』をイメージ

すれば本書の作風に重なるのではないかと思います。


さて、あらすじにもある通り舞台は東京オリンピック開催前夜の昭和39年

の夏。 二人の青年を軸に物語が展開していきます。 一人はTV局に勤

務する須賀忠。 もう一人は大学院生の島崎国男。 

二人は東大で机を並べていましたが、須賀の家はいわゆる旧家で父親は

警察官僚。 一方、東北出身の島崎は兄の出稼ぎで糊口を凌ぐ貧しい家

庭に育ちます。 オリンピック直前に完成した首都高速をスポーツカーで疾

走する須賀。 出稼ぎに出たオリンピックの建設現場で酷使され死んだ兄

を持つ島崎。 


戦後復興を掲げた華やかなオリンピックの光の裏には、当然ながら影があ

ります。 光が眩ければ眩いほどその影は濃く長い。 まさに二人はその

象徴に他なりません。  


ネタばれするのでストーリーには触れませんが、500頁2段組の長編に関

わらず張り詰めた糸は最後まで緩むことはありません。 特にF・フォーサ

イスの『ジャッカルの日』を思わせる終盤の緊張感は見事としか言いようが

ありません。 


ラストに関しては様々な考え方ができると思いますが、彼が担っていた役割

(格差社会の負)を念頭に置くなら、そこには大きな意味がこめられている

ような気がしてなりません。 


そういえば東京オリンピックの年は水不足でよく断水してたなぁ~と感慨に

ふける方から、北京オリンピック開催ギリギリまで会場を造っていた中国って

ダメじゃん・・・
などと感じた若い世代の方まで、あらゆる世代の心の中に一石

を投じるエンターテイメントです。 




Last updated  2010.04.15 22:08:15





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