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東大の小宮山総長の本は、「ウェブ進化論」の梅田望夫さんが推薦していたので読んでみた。この二人はプレジデント1月号で対談していて読んだことがある。小宮山総長が、東大の教授にならないかと梅田に提案したら、「先生からそういわれたら、1000人のうち999人は、「ありがとうございます」って受けるわけですよね。でも僕は残りの一人になりたい。組織に属さないでこれだけ大きなことができるっていうのを、身をもって示したいんです」と断っていて痛快に感じた。
小宮山総長は、「東大生の学力は落ちたと思いますか」「お金持ちでないと入れないのでしょうか」「東大の時価総額は」「もっと給料をもらうべきだと思っていますか」など55の質問に対して率直に語っている。こういう本の編集は、本音が出るので面白いと思った。 小宮山総長が語る中で「知の構造化」「学術俯瞰講義」という言葉が頻繁に出てくる。構造化や俯瞰は「図解コミュニケーション」の中心概念である。あらゆる分野に蔓延する個別化、細分化、矮小化という流れを、構造や俯瞰という考え方で再構築できる。個々の優れた部品を全体像として体系化し一つのいのちとして動かそうということだと思う。トップになるとそういう思いを抱くはずだ。合意を得るためには、それをどういう形で見せるかが重要である。それには全体と部分、部分同士の関係をあらわす図解コミュニケーションの方法を用いるのがいいと思う。 この本の最後の部分は小宮山総長と梅田望夫の対談を収めたものだ。組織の変革を目指すトップと在野の個人との対話だが、新しい時代の流れからみる梅田の指摘は改革者・小宮山宏の意表を衝いているようで興味深い。 以下、本を読みながら印をつけたところ。 ----------------------------------------------------- ・ビジネススクールをつくるかどうか、ここ1年ほどの間に最終的な決断をくださなければな らない。 ・(理科系では)教授陣の厚みでは、慶應大学、早稲田大学の10倍はあるだろう ・総合大学の中核は文学部・理学部・教養学部。その周りに法学・経済学・工学・医学・薬 学・農学といった実学がある。さらに研究所やセンターが最先端の研究を行う。 ・東大には2500人の学者(教授・助教授)がいる。そのうち三分の一の800人ほどは世界で通 用するレベルだろう。 ・インターナショナル・ゲストハウスをつくる。起債で資金を集めようと思っている。 ・大学における教養教育の再構築は東大がやらなければならない。 ・駒場に「理想の教育棟」という大規模校舎を新築する計画。教養教育の牙城にする予定。 ・大学で教えている学問には、実学の方が圧倒的に多い。 ・東大の50歳くらいの平均的な教授の年収は1100万円。 ・国立大学の学長は、企業のCEOとCOOを兼務しているようなものだ。 ・任期中に「世界の知の頂点を目指す東大」をつくりたい。 ・給与見直し。50歳くらいをピーク、あとはなだらかにさがる。それに応じて自由度も増す。 ・アメリカの大学生も、圧倒的多数は親が全額学費を出している。 ・大学院生は学生本人は払っていない。ほぼ全員が奨学金をもらっている。 ・私の給与年収は2480万円だ。せめてこの倍は欲しい。 ・毎年60億円の戦略資金が欲しい。今の年間予算は2000億円だが、総長裁量予算はたった7 億円しかない。優秀な学生への特別奨学金20億円(1000人の大学院生に200万円。優秀な1 00人の研究者に2000万円で20億円。優秀な研究者招聘資金が20億円。 ・日本の東大から世界の東大を目指している。そのために「知の構造化」「自律分散協調系」「 学術俯瞰講義」「理想の教養教育」がコンセプト。 --------------------------------------- 梅田望夫との対談での梅田の発言。 ・東大の先生の頭の中にある知識の1%もインターネット上には載っていないんじゃないです か。ブログを書いている方や自分の論文の背景にある発想や思考過程をネット上で公開して いる人はほとんどいないでしょう。 ・インターネットって、人間の脳みそと脳みそをつないでくれんです。この脳みその中身を構 造化したり、俯瞰したりしたものがネットに載せられるようになれば、知の共有財産になる わけです。 ・善意の集積はネットで実現できる。 ・新しいものを生み出すために、組織が必ずしも必要でない時代に入っているんです。 ----------------------------------- お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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