1880年(明治十三年)四月 初代神谷傅兵衛浅草区花川戸町四番地にて、「みかはや銘酒店」を開業。酒の一杯売りを始める。
神谷バーにデンキブランと名付けられたカクテルが登場して、およそ百年の歳月が流れています。
その間デンキブランは、浅草の移り変わりを、世の中の移り変わりをじっと見てきました。ある時は店の片隅で、またある時は手のひらのなかで ― 。
電気がめずらしい明治の頃、目新しいものというと”電気○○○”などと呼ばれ、舶来のハイカラ品と人々の関心を集めていました。さらにデンキブランはたいそう強いお酒で、当時はアルコール45度。
それがまた電気とイメージがダブって、この名がぴったりだったのです。
デンキブランのブランはカクテルのベースになっているブランデーのブラン。そのほかジン、ワインキュラソー、薬草などがブレンドされています。しかしその分量 だけは未だもって秘伝 になっています。
あたたかみのある琥珀色、ほんのりとした甘味が当時からたいへんな人気でした。ちなみに現在のデンキブランはアルコール30度、電氣ブラン<オールド>は40度です。
大正時代は、浅草六区(ロック)で活動写真を見終わるとその興奮を胸に一杯十銭のデンキブランを一杯、二杯。それが庶民にとっては最高の楽しみでした。もちろん、今も神谷バーは下町の社交場。
仕事帰りの人々が三々五々、なかには若い女性グループも、小さなグラス片手に笑い、喋り、一日の終わりを心ゆくまで楽しんでいます。時の流れを越えた、じつになごやかな光景です。
明治・大正・昭和・平成、時代は移っても人の心に生きつづけるデンキブラン。デンキブランは下町の人生模様そのものです。一口、また一口とグラスを傾けると、時がさかさに動いて、見知らぬ 時の見知らぬ人に逢えそうな、そんな気がしてくるのです。
神谷バー
http://www.kamiya-bar.com/
【電気ブラン】 40% 360ml 628円
ビバ・オヤジ酒場 1365円
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
古きよき昭和が蘇るショートトリップ。安くてうまくて味がある、女性のための大衆居酒屋案内。
【目次】(「BOOK」データベースより)
北千住―『永見』『大はし』『天七』/南千住―『大坪屋』『鶯酒場』/上野・御徒町―『佐原屋』『味の笛 本店』『焼き鳥 文楽』/神田―『伊勢』『みますや』『三州屋』『洋酒スタンドDARUMA』/浅草―『
神谷バー』『鈴芳』『大林』/新橋―『王将』『立ちのみ吟 新橋店』『野焼』『立ちのみ竜馬』/錦糸町―『むさしや』『三四郎』『フィリピンパブ キャンディーハウス』/茅場町・八丁堀―『もつ焼 増家』『Stand bar maru』『ニューカヤバ』『カミヤ』/門前仲町・木場―『魚三酒場』『河本』『田子山』『大坂屋』/渋谷―『富士屋本店』『仲本工事の店 居酒屋名なし』〔ほか〕