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レプリコーンの世界-冒頭部… (健康・ダイエット)楽天ブログ 【ケータイで見る】 【ログイン】
ホリスティック・セラピーから

レプリコーンの世界-冒頭部

第一章

多くの人にとって人生のなかで血筋に呼ばれるということがあるものである。つまり人が自分自身や親の出身地に呼び戻されるのである。私のケースではこれはアイルランドであった。

話しの始まりはカナダのトロントで起こった。私のパートナーとの16年間
続いた関係が終わりに近づいていた。家は売りに出され、私のキャリアは衰退
しつつあり、私自身は人生のより深い意味を捜し求めていた。私はどこかに引
きこもりたくなり、その時アイルランドに手招きされたような気がしていた。
それと同時に、私の友達の一人がアイルランドに行くことになり、私は彼女に
蟄居できる場所を探してくれるように頼んだ。町や村から離れた小さな小屋
で、夏の間中座り、瞑想をしたかった。目的は悟りを得ることであった。私が
読んでいた精神世界の本では、執着を絶ち、精神世界の道に専念すれば悟りを
得ることが出来るはずであった。私は家を捨て、家族を捨て、キャリアを捨
て、それ以外に執着しているものも思いつかなかった。明らかに私には悟りを
得る資格があるように思えた。

2ヶ月後私の友達のエリザベスがアイルランドから戻り、私に会いたがっ
た。彼女は旅行中静かな田舎の小屋を知らないかと人々に聞いたが、ついに最
後の夜ダブリンで旧知の友達と食事をしている時に話しが出てきた。彼女の友
達が夏借りられる小屋を知っているというのである。アイルランド西海岸のア
キル島にあるという。

2週間経たないうち、私は古い生活に別れを告げ、ダブリンに向かう機上に
いた。私が戻るまでには、トロントの家は売れ、パートナーのビルは新しい人
生を始めていることを確信していた。

私がダブリンに着いたのは週日の明け方で、小屋の持ち主のもとに行き、代
金を払って鍵を受け取ろうとしていた。デイビッドソン氏は、アイルランドで
長年働いている、そこそこ成功した中年の英国ビジネスマンであった。礼儀正
しく控えめに、彼は私に椅子を勧めた。

「デイビッドソンさん」と、ファーストネームでは人を呼ばないヨーロッパ
流マナーに配慮しながら私は尋ねた。
「どのくらい小屋をお持ちでいらっしゃるのですか?」
「20年になりますが、夏の間しか使いません。それ以外の時は空家になっ
ていますが、近所のオテュールさんに面倒を見てもらっています。もう彼女に
はあなたのことを伝えてあり、ドアを開けておいてくれるでしょう」
彼はちょっと間をおき、咳ばらいを一つしてから、こう言った。
「残念なことに悪い知らせがあります。ここ2週間で小屋は売られてしまっ
たのです」
私が失望するなか、彼は続けた。「ただ、よい知らせは新しい持ち主には、
私があなたにお約束したから1ヶ月待ってくれと伝えてあります。ただ1ヶ月
後にはどこか他の所を探してもらわなくてはなりません」

私は口もきけずにそこに座ったままだった。私の蟄居する計画は信じられな
い速度で変わっており、どうも良くなっている兆しはなかった。思いつくのは
2つの可能性である。1ヶ月で悟りを得るか、予想だにしなかった面倒に巻き
込まれるかである。後者のほうが可能性が高く、悟りへの道は思ったほど簡単
ではないように思われた。イギリスのマナーを思い出し、デイビッドソン氏と
握手し、小屋を一ヶ月貸してくれることのお礼を述べた。不安で心臓は高鳴る
なか、タクシーに乗りバス発着所に向かった。

時間は経過し、1時間以内にマヨ郡アキル島に向かうバスに私は乗ってい
た。都市から町へ、町から村へ、村から郊外へ、景色はより人里離れより荒れ
てきた。マヨ郡に着く頃には丘は剥き出しで岩だらけになった。丘の高い部分
は、私有敷地から泥炭を取る農民や住民によって切り出されていた。ダブリン
を出て約5時間後、田舎道の麓でバスは止まり、運転手は遠くの丘を指して、
あそこに小屋がありますよ、と言った。

なんて薄気味悪い、と私は思った。ダブリンの運転手が私が探している小屋
の場所を知っているとは。そのころは極めて効率的なアイルランドの「口コミ
ネットワーク」を知らなかったのである。
私は荷物を担いだが、そこには寒いアイルランドの夏に備え、シーツや着物が
詰まっていた。私が坂を登り始める頃には、夕闇が近づいてきており、歩むた
びに不安感が増してきた。

1ヶ月後ここを追い出されるときにはどに行けばいいのだろう? この小屋に
は何があるのだろう? アイルランドに来る理由を誤解したのだろうか? 何故
私自身の決心をいつも迷い将来を心配しているのだろうか? 今回の決断は正
しかったのだろうか?

30分ほど歩くと、スレート屋根吹、青い木戸、周囲を白塀で囲まれた小さ
な白い小屋に到着した。その小屋はディビッドソン氏の説明に合致しており、
私は木戸を空け、ドアに近づいた。驚いたことにそれは開け放しになってお
り、「すいません、どなたかいらっしゃいますか?」と声をかけたが応えはな
く、静かに私は中にはいった。

暖炉には火が燃えていた。荷物を床に置き、手近な椅子に腰をかけた。暗く
なりかけている部屋に目が慣れるにつれ、ゆっくりと周りの様子が見て取れ
た。暖炉の脇には泥炭の山があり、フイゴが下向きに立てかけてあった。暖炉
の前には、たるんだ古い緑のソファがあり、その後ろには6脚の丈夫そうな椅
子と木製の大きなテーブルがあった。私の左側には明らかに使われていない小
さな空部屋があり、私の右側のドアのむこうには、窓と衣装入れが見え、寝室
のようであった。私の後ろには小さな台所があり、玄関ホール兼用となってい
た。

私が小屋にはいってからずっと誰かの家に侵入したかのような感覚があっ
た。あたかも誰かがちょっと席をはずし、戻ってきて私を見つけるかのようで
あった。私はその感覚を退けようとしたが、余計に私が監視されていることを
確信し始めた。さらに暗くなる明かりになれた目は、このバイブレーションが
発せられている角に向かった。驚いたことに四人の人間が私を見ていた。小さ
な男、小さな女、そして二人の子供。私はその場で立ちすくみ、息が止まっ
た。誰かの家に入ってしまったのか、と私は思ったが、彼らが着ている妙な着
物に目が行った。なんてことだ!彼らは人間ではない! 一瞬のうち私がのろ
われた小屋にいることを悟った。クソッ!と私は思い、ヒステリーが高まるの
を感じた。

私の考えがこれ以上進む前に、小さな男が私に声をかけた。
「我々はあなたがたの年で100年間この小屋に住んでおり、あなたと同居
することは構わないが、条件がある」

彼の要望は彼の言葉ほど権威を持っていなかった。彼の背丈は1メートルた
らずで、古臭いボタン留めの緑の上着を着ており、それは腰のところまでで
あった。丸々としたおなかに上着はかぶり、茶色のズボンは膝のところで切ら
れ、厚手の靴下が下に続き、大きな木靴に押し込まれていた。その靴はどう見
ても彼の足には大きすぎるようだった。この奇妙な容貌を締めくくっているの
は巨大な黒いシルクハットだった。

二人の少年は父親のミニチュアだったが、おなかのでっばりとシルクハット
はなかった。彼らはもごもご動いており、明らかに親の言うことをきこうとし
ていたが、別の場所で別のことをしたいのは明らかだった。小さな女性は、床
まであるスカートをはいており、その下からは夫と同じような木靴が見えてい
た。彼女のかぶっている帽子は、ニューイングランドの巡礼者の帽子を思い出
させ、彼女の頭には大きすぎるようだった。彼女の赤毛は頭の後ろで丸めて留
められていたが、うまくとまらずに、見ているうちにも崩れてきていた。彼女
は手を動かさないように苦労しているようで、手を握りつづけ、そして体の後
ろに隠した。次に彼女は私に微笑みかけ、彼女の夫をみて、顔から笑いを消
し、まじめな表情をした。

小さな男は、無理して我慢したような顔の表情で、彼の提案に対する私の答
えを待っていた。私はめまいがした。しかし、何か予想しないチャンスが待ち
受けているような感覚があった。特に求めたわけではないが、貴重なチャン
ス。彼のまじめな口調を真似て私は答えた。

「どんな条件なの?」
「我々は取引をしたい」と彼は答えたが、私が話せることに安心したよう
だった。
「どんな取引ですか?」と私は守勢にまわり聞いた。その頃には、彼の
「我々」は本当は「私」だけで、小さな女性と子供達は応援の為にだけいるの
ではないかと思い始めていた。
「そうだなあ。あなたがいるここの通りは呪われており、ここに居るエレメ
ンタルの全部が人間に友好的ではない」
「ちょっと待って」彼と私が同じ言葉を話していることを改めて確認しなく
てはなるまい。「そのエレメンタルというのはどういう意味?」
彼は我慢しきれない様子で言った。「あなたがた人間は、我々をノームと
か、ゴブリン、小人、妖精、レプリコーンなどと呼ぶが、我々はみんなエレメ
ンタルなのだ。それが我々の種であり、それはあなた方の種が人間であるよう
にね。人間にも多くの種類があるように、エレメンタルにも多くの種類があ
る。さて、話しを戻すと、我々があなたを夏中護ってあげよう。あなたがここ
に来た理由も理解しているので、あなたが私達の保護を必要としていることも
分かっている」
私は、それを聞いたとき、もう一度口を挟みかけたが、その内わかると思い
直した。
彼は、私の注意が揺れたことが分かったかのように、ちょっと間を置き、続
けた。
「代わりに、夏の終わりに贈り物が欲しい」
「贈り物って何が欲しいの?」
「今はあなたに教えない。夏の終わりに教えるから」
私の記憶の彼方に妖精やエルブに騙された人間の話しを思い出し、条件を詰
めない取引をすることを不安に思った。私は選択肢がないということも出来
る。というのはこの小屋は彼のものだし、私には他に行くべき場所もない。し
かし、これは必ずしも正しくない。夏の間物理的にここに住み、彼ら小人を二
度と見ないように自分自身をシャットアウトすることも出来る。しかしそうす
ることにより同時にどのような想像を超える経験をシャットアウトすることに
なろうか?
心の深い部分では、彼は不当な要求はしないという感覚があり、それをあた
かもその時点でさえ、彼を信頼しているかのようであった。そこで私は「わか
りました」と言った。
私はロバート・フロストの「歩んだことのない道」という詩を思い出してい
た。そのなかで詩人は森を散歩中、二股の分岐路に来て、こう言う
「そして私-私はかつて選ばれたことのない道を選ぶ。それがそれ以降の状
況を全て変えた」
私には、このレプリコーンが私に、かつて選ばれたことのない選択肢を与え
てくれているように思えた。その行き先はどこになるのか全く判らなかった
が、このチャンスを逃したら後悔することになると思った。
我々の取引は成立し、レプリコーンは心をそらし始め、その晩の我々の会話
が終わったことが明らかになった。小さな女性と子供達は既に消えていた。疲
労困憊し、私は荷物を拾い上げ、寝室に入った。木製のヘッドボードとフット
ボードのある頑強なダブルベッドは、明らかに何世代にもわたって疲れた体に
癒しを与えてきた。私に荷物のファスナーを開け、ベッド・シーツを取り出
し、ベッドの準備をした。たんすには幾枚かのウールの毛布があり、私はそれ
らを全部ベッドの上に載せた。寒さに震えながらメガネを取り、脇のテーブル
に置いた。それからグラニー・ガウンに着替え、布団にもぐり込んだ。数分の
内に私は眠りに落ちた。
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