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カテゴリ:洋画
レイダース/失われたアーク《聖櫃》、インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説、インディ・ジョーンズ/最後の聖戦に続く考古学者インディ・ジョーンズシリーズの第四弾。 第三弾から19年振りの新作。 製作はスターウォーズシリーズのジョージ・ルーカス、監督はE.T.、バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ、ジュラシック・パークシリーズを手掛けたスティーヴン・スピルバーグ。 インディ・ジョーンズを演じるのはこれまで通りハリソン・フォード。第一作のヒロインだったマリオンを演じるのは、第一作と同じカレン・アレン(27年振りに演じたことになる)。悪役の女KGBを演じるのは名女優ケイト・ブランシェット。 原題は「INDIANA JONES AND THE KINGDOM OF THE CRYSTAL SKULL」。 粗筋 1957年。 第二次世界大戦が終結し、ナチスドイツは過去のものとなっていた。しかし、アメリカは今度はソ連という新たな脅威と対峙する羽目になってしまい、いわゆる「赤狩り」が横行していた。 ふとしたことからアメリカに潜入したロシア軍に遭遇してしまったジョーンズは、ロシア軍と銃撃戦を交わし、命辛々逃げ出すが、米国連邦捜査局FBIから、「ソ連の協力者なのでは?」という疑惑を向けられてしまう。 大学で考古学を教えていたジョーンズだが、大学は赤狩りの標的になるのを恐れ、ジョーンズを解雇。ジョーンズは、国外の新たな大学へ向かうことになった。そんなところ、「俺はお前の知人の息子だ」と名乗る若者マット・ウィリアムズが、ジョーンズの前に姿を現す。 どうやら、超常現象的なパワーが宿っているという秘宝「クリスタル・スカル」が絡んでいるらしい。 知人の危機となっては、ジョーンズは動かない訳にはいかなかった。しかし、ジョーンズの行動は、「クリスタル・スカル」の秘宝を付け狙うロシア軍とって折込済みだった。 ジョーンズは、マット・ウィリアムズの母親が、マリオンだと知る。そしてマリオンは、マットの本当の名前はヘンリーで、ジョーンズの息子だ、と打ち明ける。マットのフルネームはヘンリー・ジョーンズ三世だった……。 感想 20年振りの新作。 主人公を演じるのはやはりハリソン・フォード。 しかも、第一作でのヒロインだったマリオンも帰って来る。 ジョーンズが今回対決するのはナチスドイツではなく、旧ソ連。 面白くない訳がない。 ……と思っていたのだが……。 本作品は、劇場から逃げたくなるほどつまらなくはない。 「面白いか、面白くないのか?」の二者択一を迫られたら、「面白い」を選ぶだろう。 ただ、第一作から第三作までで得られたのと同等のワクワク感というか、興奮を味わえるかというと、「うーん」と唸ってしまう。 思えば、第一作では聖櫃の謎を追い、第二作ではインド奥地の密教の謎を追い、第三作では聖杯の謎を追った。 シリーズ的には、追えるものがなくなってしまっている。 今回のクリスタル・スカルは、何か強引に捻り出されたものの感が否めない。南米の古代文明は、そういったものが好きな者からすれば興味深いのだろうが、一般的にはマイナー過ぎる「謎」だし。 20数年振りの新作といえば、ジョージ・ルーカスが手掛けたスターウォーズシリーズの新三部作が記憶に新しい。 ただ、新三部作は、年代的には旧三部作の前の出来事、という設定になっていて、旧三部作で登場した俳優が新三部作で再登場する、ということはなかった。ファンからすれば、それが物足りなさに繋がっていた。 本作は、その失望の声に応えてか、主人公は勿論、ヒロインも第一作と同じキャラ、同じ俳優に演じさせた。これならファンも納得するだろう、と。このファンへの心遣いは嬉しい。 ……筈だったのだが……。 ファンというのは我がままなもので、ファンの心理というのは複雑なもの。 あることをやらなければ、「なぜやらなかったんだ?」とファンから糾弾されるし、逆にあることをやれば、「なぜこんなことをやったんだ?」とケチを付けられる。 本作品でも、主人公を19年前の前作と同じハリソン・フォードに演じさせる必要はなく、もっと若く、体力のある役者にしてもよかった。ヒロインも若くて美しい女優を選んでも良かった。しかし、製作者側はこう思ったのだろう: 「フォード以外の役者がジョーンズを演じてもファンは納得してくれない」 「年を取ったジョーンズに、若いヒロインを付けたところで説得力がない」 ……等々。 そんな訳で、製作者側は還暦をとっくに迎えているフォードをジョーンズとしてキャスト。そして第一作でヒロインを演じたカレン・アレンをキャスト。こうすれば、第一作から第三作を観ていたオールドファンの心を確実に掴める、と。 全てファンの為。 その心遣いはあり難い。 ……あり難いと思わなければならない。 ただ、製作者側も、オールドファンも忘れていたのは、前作から19年という歳月が過ぎていた、ということ。 作中のキャラクターは、歳を取ることはない。1981年に公開された第一作のジョーンズは、20年経とうと、50年経とうと、若々しいまま。「久し振りに再生したらジョーンズがお爺さんになっていた」ということにはならない。 映画のキャラクターは、その意味では不滅なのである。 残念ながら、演じている俳優はそういう訳にはいかない。 ハリソン・フォードは、前作から19年歳を取っている。 カレン・アレンは、出演していた第一作から27年も歳を取っている。 となれば、若々しい訳がない。 本作で登場するハリソン・フォードはどう見てもオジサンだし、カレン・アレンはどう見てもオバサン。 オールドファンとしては、二人の再登場は嬉しい筈なのだが、スクリーンで観ると経ってしまった月日を感じさせてしまい、心底から喜べない。 「もっと若々しいフォードとアレンは無理だったのか?」と不可能なことを願ってしまう。 前述したように、ファンというのは我がままで、その心理というのは複雑である。 本作は、日本人から見ると不可解というか、不愉快に感じる場面がある。 冒頭辺りで、ジョーンズは核実験施設に紛れ込んでしまったことを知った。あと数秒で原爆が爆発する。ジョーンズはどうやってこの危機の乗り越えるのか? ……ジョーンズは、鉛製の冷蔵庫に閉じこもり、原爆の爆発をやり過ごした。冷蔵庫は爆風によって安全なところに飛ばされ、ほぼ無傷のジョーンズが冷蔵庫から出ると、目の前にキノコ雲が立ち上っていた……。 ……この一連のシーンを観る限り、「アメリカ人、て原爆や水爆を単なるでかい爆弾としか思っていないんだな」としか思えない。 作中のように原爆の爆風をもろに受けていたら、冷蔵庫なんて木っ端微塵になっていただろう。「安全なところに吹き飛ばされる」なんて有り得ない。仮に「安全な場所にまで吹き飛んでいた」とする。クッション性のない冷蔵庫の中では、衝撃によってジョーンズの身体はバラバラになっていただろう。少なくとも、冷蔵庫から何でもないように這い出る、なんて生易しいことにはならなかった筈。 仮に爆風を受けずに済んだとする。キノコ雲を間近に望めるほど爆心地に近かったら、確実に放射能を浴びている。数日後に原爆症に悩まされ、世界を飛び回って冒険を続ける、なんてできなかっただろう。 アメリカ人、てのは核を持っているくせに、その威力を過小評価している。 恐ろしいことである。 クリスタル・スカルは、実は宇宙人のもので、最終的にはクリスタル・スカルを回収した宇宙人は地球を去る、ということになっている。 前作のファンタジーを通り越して、SFになってしまった。 インディ・ジョーンズシリーズをSFにしてしまうのは、どうなのか。 やってはならぬ、というルールがある訳ではないが、別のジャンルの映画になってしまっている感じがする。 冒頭で、ロズウェル(宇宙船が不時着したとされる場所)が挙げられているので、そんな結末は予測できたのだが……。 最後に宇宙人を出すなんて、インディ・ジョーンズっぽくない。 AIみたいである。 思えば、あれもスピルバーグ監督作だった。 スピルバーグは宇宙人ネタが好きなのか。 E.T.に携わったから、好きなのは当然か。 本作は、過去のシリーズ作のオマージュだらけ。 19年振りの新作だと、前作を忘れてしまった者が多いので、そうせざるを得ないらしい。 ヒロインは、第一作と同じ(第二作と第三作では、全く登場しないキャラ)。 ジョーンズとロシア軍が最初に対峙するのは、第一作のラストの場面となる「米国政府機密保管所」。そんな訳で、ジョーンズが第一作で命懸けで奪った「聖櫃」が一瞬だけ登場。個人的には、ロシア軍はクリスタル・スカルなんかより聖櫃を手に入れた方が良かったのでは、と思った。 第三作でジョーンズの父親を演じたショーン・コネリーは、写真で登場。既に故人になっている、という設定。また、第三作で活躍したブロディ教授も、他界している、ということになっていた。コネリーはまだ生きているのだから、出演は可能だったと思うのだが……。コネリーが蹴ったのか。 本作は、新たなジョーンズファンを獲得できるかどうかは分からないが、少なくともオールドファンをそれなりに納得させられる内容になっている。 本作が10年前に公開されていれば、もっと良かったのだろうが……。 関連商品: お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.06.24 10:25:23
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