1710588 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

非常に適当な本と映画のページ

非常に適当な本と映画のページ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Freepage List

Category

カテゴリ未分類

(339)

洋画

(279)

邦画

(85)

邦書

(140)

洋書

(57)

ニュース

(734)

DVD

(8724)

Comments

Favorite Blog

まだ登録されていません
2016.04.08
XML
カテゴリ:邦書

 シベリア抑留から日本に帰国した都野医師が、数々の犯罪に巻き込まれ、それらを解決していく様子を描いた連作短編集。
 初版行は1959年。
 そんな事もあり、まだ経済成長期に入っていなかった日本の、のんびりとした様子と殺伐とした様子の双方が描かれている。
 8篇から成る。


粗筋

第一話 瓶詰めの拷問

 シベリア抑留から日本に帰国した医師の都野は、東京のある病院で医師として復帰。
 院長から、夫人の堕胎手術を行うよう、要請される。都野は、命じられた通り手術を実施。無事完了した。
 その直後に、院長夫人がやって来て、都野を殺人者呼ばわりする。何故なら、堕胎は夫人が望んでいた訳ではなかったからだ。
 院長は子供を作れない身体なので、胎児の父親は院長でないのは明白だった。院長は、胎児を「望まれていない子」として処分させたのだった。
 胎児は、院長により、アルコール入りの瓶に詰められた。夫人の出身校である医大に寄贈する、と院長は言い出す。夫人と離婚すれば院長の座を失う立場の弱い婿養子として、せめての抵抗のつもりらしい。
 都野は、いくら何でも酷過ぎると思ったが、これには院長の別の思惑があった。寄贈された後に胎児を取り返すのは困難だが、その前だったら盗み出すのは可能、と見せかける事で、胎児の父親を炙り出せる。院長は、その思いを都野に長々と話す。
 しかし、相手はその策略に乗らず、胎児は盗まれなかった。が、直後に院長夫人が自殺しているのが発覚。側に、若い医師がいた。その医師こそ夫人の浮気相手だった。
 夫人は堕胎によるノイローゼで自殺、として片付けられるが、都野はふとした事から真相に気付く。
 院長は最初から夫人を殺害する予定だった。胎児の父親に関しては事前に知っていたというか、興味が無く、アリバイ工作の為に利用しただけだった。都野に院長が「思い」を長々と話していたのは、アリバイ作りの為だったのだ。
 都野は、それらの事実を院長の愛人で、殺人に加担した看護婦に突き付けると、病院を去る。

第二話 首を縮める男

 都野は、東京の下町で診療所を開く。
 小野小枝子いう患者が頻繁にやって来るように。自分は近々死ぬかも知れない、と言い出す。都野は、そんな事は有り得ないと一蹴し、彼女を送り出した。
 都野が、知り合いの警官がいる派出所にいると、男女が現れる。小枝子を訪ねに来たという。警官は、住所を教えてやった。が、暫くすると、男が一人で戻って来て、再び小枝子の住所を訊く。川島というその男は記憶が飛ぶ病を患っており、ふと気付いたら連れの女の道子とはぐれてしまったという。
 都野は、川島と共に、小枝子の住まいを訪ねる。
 すると、そこには道子の死体があった。死体は首が切り落とされていて、生首が胴体の側に転がっている状態だった。
 通報で駆け付けた警察は、小枝子の行方を捜す。
 すると、近くの線路で列車に何者かが飛び込んだ、との情報が。
 急行すると、また別の死体が。小枝子だった。こちらも首を切り落とされていて、側に生首があった。
 警察は、小枝子が訪れてきた道子を殺害し、自ら命を絶った、と考える。
 都野は、身元確認の為、検死を要請される。すると、死体には、彼が施した注射の跡が見当たらなかった。首こそ小枝子だが、胴体は小枝子のものでなかった。
 その時点で、都野はカラクリに気付く。川島は道子と共に小枝子を訪れ、小枝子を殺害。首を切り落とした後、今度は道子を殺害。小枝子の首と道子の胴体を線路の側に置いた後、「道子とはぐれた」と言い訳して派出所に戻り、都野と共に小枝子の住まいに戻り、死体を発見した様に装ったのである。

第三話 或る暴走記録

 都野が、最近引っ越してきた吉岡勝美という女性の訪問診療に向かっていると、知り合いの警官と遭遇。
 警官は、勝美の隣人であるクリーニング屋に用事があった。勝美とクリーニング屋の主人が、土地を巡っていがみ合っていたからだ。
 勝美は、クリーニング屋の隣の空き地を購入した。もう少し広い土地が欲しかったので、クリーニング屋に土地を売ってくれと持ちかけるが、クリーニング屋は拒否。勝美は、市場の倍の価格で買い取ると申し出たが、それでもクリーニング屋は応じなかった。
 勝美は、仕方なくそのまま家屋を建て、引っ越す。が、土地を売ってくれなかった腹いせに、自宅を囲む塀を通常より高くする。それにより、クリーニング屋は日当たりが悪くなり、洗濯物が干せなくなってしまった。クリーニング屋は営業妨害だと憤るが、勝美は自分の土地に何を建てようとこっちの勝手だ、と譲らない。
 すると、クリーニング屋は物干し用の柱を立てる。なるべくボロボロの衣服を干し、勝美の家から丸見えになるようにした。
 勝美は、庭で焚き火をする、という手に出る。クリーニング屋の洗濯物は、風で舞い上がった焚き火の灰で汚れるようになってしまった。
 クリーニング屋は、更に高い物干し用の柱を立てる。
 すると、勝美は犬を飼った。犬は庭に穴を掘り、クリーニング屋の庭に侵入。飼っていた鶏を噛み殺す。
 クリーニング屋は、穴にトラバサミを仕掛けて対抗した。
 ・・・・・・以上がこれまでのいがみ合いの経緯だという。
 都野は呆れるしかなかった。
 警官がクリーニング屋を訪れるのは、自宅の庭とはいえトラバサミを仕掛けたら危険だ、と忠告する為だった。
 都野は、勝美を診察。隣人とのトラブルについて、悪びれる様子は全く見せなかった。
 診察後、都野は警官と再会。クリーニング屋は、トラバサミを撤去する事に嫌々ながらも同意し、更に庭の穴を板で塞ぐ事にも同意した、と報告する。
 その翌日、勝美が死体となって発見される。クリーニング屋の仕業かと思われたが、クリーニング屋には勝美の家に侵入する手段が無い。庭の穴から侵入したのではと思われたが、板で塞いであり、行き来出来ない。
 警察は、勝美宅の内部犯行を疑う。勝美の使用人の男が、行方不明となっていたからだ。
 都野も、当初は勝美宅の内部犯行だと思っていたが、クリーニング屋の庭の穴を塞ぐ板がネジで固定してあったと聞いて、真相に導かれる。
 事件当日、勝美の使用人は、彼女の気を引こうと、穴を通じてクリーニング屋に忍び込もうと企んだ。トラバサミが撤去されている、と聞いていたからだ。しかし、その時点ではトラバサミはまだ撤去されておらず、使用人は死亡してしまう。クリーニング屋は慌てて死体を隠し、穴を約束通り板で塞ぐ。ただ、使用人だけが行方不明になったら自分が疑われると判断したクリーニング屋は、勝美を殺害する事に。使用人の行方が分からないままだったら、使用人が勝美を殺して逃走した、と警察は判断するだろうと読んだのだ。
 クリーニング屋は、一旦塞いだ穴の板を外して隣の家に侵入し、勝美を殺害。穴を通じて自宅に戻る。再び穴を板で塞ぐ必要があったが、最初の時のように釘を使うと金槌の音が辺りに響き、2度塞いだのがばれるので、ネジを使って塞いだのである。
 使用人の遺体は、物干しの柱に掛かる大き目の洗濯物の中に隠してあった。

第四話 蜉蝣機関車

 都野の下に、ヘロイン中毒の女性旗江が患者としてやって来る。彼女に対し、都野はヘロインを止めるよう忠告するが、旗江は今更止められないという。
 それから間もなく、旗江の夫詮造が駆け込んで来て、妻が死んでいると訴える。
 都野は、旗江の死を確認。
 詮造によると、旗江はヘロインを絶つ事にしたが、病院で治療を受けたくなかったので、自宅でヘロインを身体から抜く事にしたという。家政婦の川瀬キミが、それを手助けする事になったが、ふと目を離していた隙に死亡していたという。
 都野は、禁断症状による嘔吐で、嘔吐物が喉に詰まり、旗江は死亡した、と診断する。
 翌日、詮造は、妻の死亡診断書を受け取りに、都野の下へやって来る。都野は死亡診断書を渡し、詮造を帰した。
 その直後に、隣の地区で開業している知り合いの医師と出会う。彼は、旗江が死亡したのとほぼ同じ時刻に死亡した女性の死亡診断書を書いたという。その女性の名は、川瀬キミだという。
 都野は、詮造が一つの死体で2つの死亡診断書を作らせた、と判断する。旗江の家の周辺は地区の境界線が入り組んでおり、2地区の役所を利用出来た。それを悪用し、2つの役所に内容の異なる死亡診断書を提出する事にしたのだ。別の地区なので、管轄が異なり、気付かれないだろうと。2つの死亡診断書で、保険金を2重取りするつもりだろうと思い、詮造の自宅に急行。棺を開けさせる。中にあったのは、旗江の遺体ではなく、川瀬キミの扼殺死体だった。
 都野の推理は外れたが、観念した詮造は全て自白する。
 詮造は、都野の当初の推理通り、妻を殺し、同時にキミも死んだ事にして、保険金を2重に受け取るつもりだった。キミにそうするよう、迫られていたからだ。
 が、いざ実行に移ると、詮造は躊躇う。それを見かねたキミは、代わりに旗江を殺害。これに怒った詮造は、キミを殺害してしまう。
 これにより、一つの死体で2つの死亡診断書を作らせたかのように見せかけて、実は死体は2つある、という状況になってしまった。

第五話 顔のある車輪

 都野は、知的障害を持つ女性のノブ子と遭遇。
 ノブ子は秋田から何者かによって東京に連れて来られたが、捨てられ、警察に保護された。
 下の名前こそ分かっているものの、それ以外の情報は得られず、故郷に帰す手立てが無い。捜索願も出されていなかった。
 そんな所、警察を定年退職する須貝が、ノブ子を引き取ると申し出る。知的障害者でも、簡単な家事手伝いなら出来る筈だと。それから4ヵ月後、ノブ子は妊娠させられていた事が発覚。既に妊娠8ヶ月で、堕胎するには遅過ぎた。須貝は、ノブ子と、生まれてくる子供の面倒を見る覚悟を決めた。
 それから数日後、須貝の住まいの直ぐ近くにある教会から、保呂神父が都野を訪ねる。保呂神父は、須貝とノブ子が如何わしい関係にある、と訴える。ノブ子の子の父親は、多分須貝だろう、と。
 都野は、須貝がノブ子の子の父親である可能性が無い、と反論。警察に保護された時点で既に妊娠していたからだ。保呂神父は言う。そもそもノブ子を秋田から連れ去った人物こそ須貝ではないか、と。
 都野は、何故保呂神父が須貝を毛嫌いするのか分からない。
 その段階で、連絡が入る。須貝が死んだ、と。毒殺だった。
 ノブ子の姿が見えなかったので、探し回ると、側の線路で礫死体となって発見された。
 ノブ子が須貝を殺し、自殺した、と保呂神父は訴えるが、都野は保呂神父の言動の違和感を抱く。
 保呂神父は、礫死体の胴体を見ただけで、ノブ子だと言い切った。が、ノブ子が着用していた妊婦服は前日に購入したばかりで、その妊婦服を見た事があるのは都野と、須貝と、ノブ子だけだった。保呂神父が妊婦服だけでノブ子の遺体だと言い切れるのはおかしい、と都野は指摘。
 保呂神父は、その証拠を突き付けられて自白する。彼は、学生の頃、刑事だった須貝にスリの容疑で補導されていた。それにより、保呂は学業を断念し、教会に入り、神父となった。数十年振りに須貝と再開した彼は、積年の恨みで須貝を殺害。ノブ子はその巻き添えを食らったのだった。
 
第六話 座席番号13

 都野の診察所を、好子が訪ねる。
 堕胎手術をしてほしい、と訴えた。望まれていない子だから、と。子の父親は、夫ではなかったのだ。
 都野は手術は出来ないと伝え、彼女を帰す。
 それから数日後、都野の下に電話が。好子だった。子の実の父親である学生を殺したので、これから自殺するという。都野は思い留まるよう説得するが、その直後に警察から電話があり、好子が自殺したと伝えた。
 警察は当初事件は好子の告白通りに起こったとして処理するつもりだったが、都野はある疑問を抱き、真相を導き出す。
 学生を殺害したのは好子ではなく、その弟だった。学生が姉を妊娠させたにも拘わらず責任を取ろうとしない事に腹を立て、殺害。好子は、弟をかばう為、自分が殺した事にして、自殺したのだった。

第七話 機関車は偽らず

 都野の診察所に、女子大生の陽子が訪ねて来る。妊娠中の子を堕胎してほしい、と。
 しかし、妊娠から既に4ヶ月経っていたので、堕胎は危険だ、と都野は諭し、そのまま帰した。
 それから数日後、陽子の遺体が発見される。列車に飛び込んで自殺したと思われた。
 警察は、陽子と一緒に暮らしていた3人の学生から事情を聞く。
 都野は、3人の発言の中から矛盾点を見付け、犯人を指摘する。

第八話 ノイローゼ殺人事件

 都野の診察所に、みさおという女性が訪ねて来る。
 知人の医師である麻実子によりヒステリーと診断されたが、それは有り得ない、とみさおは言い張る。何故ならヒステリーは女性の病で、自分が発症するのは有り得ない、と。
 都野が何故だと問うと、みさおは答える。自分は男だと。
 単なるオカマかと都野は思ったが、事情はそう簡単なものではなかった。何故なら、みさおは戸籍にも女性として記録されていたのだ。
 話によると、みさおの父親は彼が生まれる前に大陸で戦死していた。みさおを身ごもっていた母親は、そのまま彼を出産。女児を期待していたが、生まれたのは男児だった。男児だと育てても徴兵されて父親と同様、死ぬだけだと悲しんだ母親は、みさおを女子として育てる事に。
 母親は地方を巡る劇団の一員だった。そんな母親と共に育ったみさおは学校に行けず、他人と殆ど接触しなかった事もあり、自分を完全に女だと思っていた。十代半ばに、漸く自分が女ではなく、男だという事実に気付くが、今更男として生きれないと思い、女性として通した。結婚もしたという。無論、男性と。その男性は、彼を女性だと思って結婚していた。
 都野は、その身の上話を聞いて驚く。
 みさおが都野を訪ねたのは、身の上の相談ではなく、最近身の回りで感じている事だった。誰もいない筈の部屋で人が話す声が聞こえるという。
 都野は、単なるノイローゼだろう、と診断。更に、女でない以上、夫とは離婚すべきだと進言する。
 それから数日後、警察から連絡が入る。みさおらしい人物の死体が発見されたので、身元を確認してほしいと。
 都野は、下着姿の死体がみさおである事を確認。自殺か事故死だと推測する。
 しかし、みさおが死の直前にクロロホルムを嗅がされていたらしい事を知り、真相に気付く。
 みさおの夫と、愛人の麻実子医師は、財産目当てにみさおを殺す事に。二人は、みさおが男である事は、とっくに知っていた。みさおがノイローゼになるよう、麻実子は彼をヒステリーだと診断。夫はみさおの部屋にスピーカを仕掛け、誰もいない部屋から声が聞こえるようにした。
 みさおがノイローゼの兆候を見せた時点で、二人はみさおをクロロホルムで寝かせ、3階に移動させ、下着姿にして放置。
 クロロホルムが切れて目を覚ましたみさおは、下着姿の自分を見て、男である事が皆にばれたと思い、窓から外へ逃げ出そうとするが、まだ意識が朦朧としていたので、自分が3階にいる事に気付かず、転落死した。


解説はこちら






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2016.04.09 00:13:00
コメント(0) | コメントを書く
[邦書] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.