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JAFの趣味なページ

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AEW・AWACS・J-STARS

現代航空戦の陰の支配者、AEW・AWACS・J-STARSについてです。

まずこの3種の航空機は共通した運用思想があるのですが、それが「広範囲の敵を捕捉・監視して、その情報を配布する」というものです。
そもそも戦闘というものはいち早く敵を発見し先手をとった方が戦いの主導権を握るものです。殊に現在の戦闘では、最初の一発で勝負が決まってしまうこともしばしばですのでとにかく情報がものを言います。それを一手に把握できるというのは、「戦車や戦闘機の性能がいい」といったこと以上のアドバンテージを生み出すことができます。
それは今までの数々の歴史が証明しています。桶狭間然り、日本海海戦然り、ミッドウェイ海戦然りです。

早期警戒の重要性も太古からのもので、例えば道具を叩き合わせて音を出したり大声で叫んだりといったことがされ、後には狼煙なども編み出されました。人間のみならず自然界でもこの早期警戒は極めて重要で、例えば草食動物の目は広い視野を確保するために頭部の横についていますし、ウサギの耳は遠くの音を聞くために大きいのです。情報の重要性は人が考えずとも自然界で元から重要視されているものなのです。

さて、本題に入ってこの3種を大別すると、AEW・AWCS組とJ-STARSに分かれますが、これは何を監視するかによる分類です。AEW及びAWACSは空中の目標を監視し、一方J-STARSは地上目標を監視します。それぞれ専門が違うわけです。またAEWとAWACSの違いは管制能力にあります。日本語ではAEWは「早期警戒機」となりAWACSは「早期警戒管制機」となります。
では次はそれぞれの特徴について述べていきましょう。


・AWACS(早期警戒管制機)
E-3セントリー
米空軍E-3早期警戒管制機 米空軍公式サイトより転載

"Airborne Warning And Control System"の頭文字をとった言葉で、日本語では「早期警戒管制機」です。
機体の全方向に対して走査可能な3次元レーダーを搭載(機体の上の丸い皿がそれです)し、数百km先の航空機などの目標を探知できるとされています。
目標を探知するだけでなく、味方航空機などの針路・戦術その他の指示、すなわち管制を行うことができます。これは非常に重要なことで、全てを把握した管制官が指示を出すというのはパイロットが独自で考えるよりもより適切な指示を行えます。戦闘機などのレーダーは自らの前方の狭い範囲しか走査することができず、やはりAWACSからの情報は必要なのです。
現代航空戦の中で大きな役割を果たし、アメリカの航空作戦もこのAWACSに支えられています。

高空から走査するために地表の曲率の陰になってしまったりといったことが地上設置レーダーサイトに比べて遥かに起き難く、低空の目標探知に優れています。
機体はほとんどが大型旅客機を改造して作られた巨大なもので、そこに積まれるコンピューター・データリンクシステム・通信システムなどの機材は膨大なものです。戦闘機の探知したレーダー情報などのデータリンクでもAWACSに一度集積してから司令部に送られます。まさに空飛ぶ情報基地と言っても過言ではないでしょう。

ただし機体自体ももちろん、そのシステムが優秀な分非常に高額です。維持費もかなり額がかかります。
例を出せば、航空自衛隊がE-767を導入する際には500億円を超える単価がつきました。なのでかなりの金持ち国家しか採用することができません。AWACSに唯一の弱点があるとすれば、それでしょう。

なお「AWACSは脆弱。それ自体は武器を持っていないから攻撃されたらお終い」とかいう意見が時折見られますが、的外れです。そもそもAWACSは攻撃されるような場所までノコノコ出て行かずにもっと後方から管制を行いますし、敵機は攻撃する前にCAP(戦闘空中哨戒、要するに戦闘機によるパトロール)の網も潜り抜けなければなりません。仮にCAPがいなくても、探知して向かってきたらすぐさまスクランブルがかけられ、AWACSは敵に探知される前にさっさと逃げます。

ついでに言えば真上の敵は探知できないので、宇宙から攻めてこられたりすれば一たまりもありませんが・・・今のところはその心配は無いでしょう(笑)

アメリカ・イギリスなどが採用しているE-3セントリー、ロシアのA-50メインステイ、日本のE-767などがこれにあたります。
ただロシアや中国などのAWACSは整備不良などでまともに動作していない情報もありますが。


・AEW(早期警戒機)
E-2C 第五空母航空団
第5空母航空団のVAW-115所属E-2C 

"Airborne Early Warning"の頭文字をとった言葉で、日本語では「早期警戒機」と呼ばれます。
機体の360度全方向に対して走査する事ができるレーダーを備え、数百km先の航空機などを探知できるとされています。と、そこまではAWACSと同じです。
搭乗員は少なめで、機体もAWACSと比較すると小さく、積んでいる機材も少ないために管制能力や処理能力がどうしても劣ってしまいます。そもそも劣ることを覚悟の上で廉価版AWACSを作ったともいえるので弱点かと言われれば違うと思います。
主な使い方はAWACSとほぼ同じですが、前述のように管制能力や処理能力に劣るためAWACSほどの効果は期待できません。とはいえ無いよりも遥かによいことは間違いありません。また到底AWACSなど積むことができない空母航空団では、AWACSが進出してくれるまでの補完、またいつでも自由に使うことのできる貴重な情報源です。
E-2ホークアイを除いて、ほぼ全ての機体が旅客機などからの改造です。
またアメリカでは麻薬密輸防止という独特の任務にも使われています。麻薬を運んでくる船舶などを探知して、それを警備隊などに通報するわけです。アメリカでは軍のほか沿岸警備隊や税関なども独自の早期警戒機を保有しています。さすがはアメリカです。
第二次世界大戦中、コーストウォッチャーと呼ばれる見張りをあちこちに展開して敵機襲来を報じさせていたりしましたが、あの一種の発展形と考えてもいいと思います。

なお"AEW&C"と呼ばれるAWACSほどではないものの管制能力を持った機体も開発されています。これについてはよく知りませんので今回はパスさせていただきます(笑)

両者の違いは前述の通り「管制能力の違い」なのですが、AEWにも管制能力が無いわけではないのでその基準は曖昧です。

アメリカや日本・イスラエルなど世界各国で採用されているE-2Cが代表的です。


・J-STARS
J-STARS
米空軍のE-8J-STARS 米空軍公式サイトより転載

"Joint Surveillance and Target Attack Radar System"の略語で、日本語では「統一監視目標攻撃レーダーシステム」ですがほとんどこの名称が使われることはなく「ジョイントスターズ」と呼ばれます。
現在のところアメリカ陸軍とアメリカ空軍が共同で開発したE-8のみがもつ名称で、これまでのAWACS・AEWと違って地上目標を監視することが目的です。
任務はAWACSのそれをそのまま地上に移し変えたものと考えてよく、目標の位置や動きを上空から捕捉し、地上部隊に直接データリンクを行ったり指示を出したりします。停戦状態がきちんと続いているかどうかを監視するのも本機の役目です。
E-8には悪天候下でも安定した性能が期待でき、比較的高解像度を得ることのできる側方レーダー(SLAR)、それにさらにマイクロ波を使用することでさらに解像度を上げた合成開口レーダー、移動目標を追尾するためのドップラーレーダーなどが搭載されています。
中古のE707旅客機を軍が買い取って、ノースロップグラマン社(当時ノースロップ社)で改造が施されて1988年に試作機が初飛行、湾岸戦争では勃発に伴って急遽2機が派遣されました。この湾岸戦争でその有用性を、いきなり実戦で証明することになりました。



さて、以上のように特徴を挙げてきて、それと一緒にだいたいの運用方法を述べてきました。
最初にも書いたように、3種とも空から情報を集め、それを処理して味方に配ってまわるのが仕事です。ただそれだけなのですが、それが極めて重要な意味を持つのです。
くどいようですが、戦闘の勝敗は情報が決めます。一分一秒でも早い正確な情報、それを手にしたほうがその戦いを制します。逆にどんなに強力な兵器を手にしようが、闇雲に振り回しているだけでは負けるのです。
ここでもう一度F/A-22のキャッチコピーを書いておこうと思います。

ファーストルック・ファーストキル

それが戦闘です。


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