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カテゴリ:美術館・博物館
スペイン・マドリッド『プラド美術館』エル・グレコ El Greco 主な作品・解説 1541-1614 スペイン(ギリシャ) マニエリスム イタリア(ヴェネツィア・ローマ等)やスペインで活躍した マニエリスム最後にして最大の画家。 出生はギリシャ クレタ島。 そこでビザンティン様式を取得した後、 イタリアに渡り約10年間、 ティツィアーノなどのヴェネツィア派の色彩や ミケランジェロの量体表現、 パルミジャニーノなどマニエリスムの先駆者の作品から、 引き伸ばされた人体比率を学ぶ。 イタリア滞在時は 報酬などでの金銭トラブルが絶えず、 生活ができないほど貧しい暮らしを強いられた。 1576年頃スペインへ渡り宮廷画家を志すが、 エル・グレコ自身の独自性となり始めていた奇抜な構図と非現実的な色彩が、 当時絶対的な権力者であったフェリペ二世の不興を招いた。 その結果、宮廷画家への道は閉ざされるが、 宗教関係者や知識人からは圧倒的な支持を得た。 以後、逞しい肉体の表現から、人体の長身化が顕著になり、 形態は流動性を帯びていった。 バロック絵画の台頭により、 晩年~死去後は忘れられた存在になったが、 20世紀初頭、印象派の画家達やピカソらによって、 その独自性が再評価された。 また彼の作品は数こそ多いが、 長期にわたり劣悪な状態に置かれていたものが大半を占めるため、 描かれた当初の状態を保っている作品は少ない。 300×178cm Oil on canvas プラド美術館(マドリッド) エル・グレコの残した数多い傑作のひとつで、 トレドのサント・ドミンゴ・エル・アンティグオ聖堂のために制作され、 現在はプラド美術館に所蔵されている『聖三位一体』。 ミケランジェロの彫刻作品≪ピエタ≫や、 ドイツ・ルネサンスの巨匠アルブレヒト・デューラーの 木版画を元に構図が展開される本作の主題 ≪聖三位一体≫は、神の実体は唯一でありながら、 その位格は、この世のあらゆるものを創造した父なる神、 人間の罪を十字架上で償ったイエス、 使徒などに下される聖霊の3つが同位にて存在することを意味し、 現在のキリスト教の最重要教義とされているもので、 エル・グレコの力強く荒々しい筆跡と、 マニエリスム独特の人体表現の奔放さによって、劇的に表現されている 。この深い陰影と、引き伸ばされた人体構造によって表現される父なる神とイエスは、 高い聖性を示すものとして、当時の宗教関係者や知識人から、圧倒的な支持を得た。 315×174cm 油彩・画布 プラド美術館(マドリッド) マニエリスム最後にして最大の巨匠 エル・グレコ後期を代表する傑作『受胎告知』 マドリッドのドーニャ・マリア・デ・アラゴン学院の 大祭壇衝立下段中央部として制作された本作に描かれるのは、 大天使ガブリエルから父なる 神の意志により神の子イエスを宿す聖なる器として聖胎を告げら、 それを静粛に受ける聖母マリアを描いた≪受胎告知≫の場面で、 現実感を超越した極めて象徴的な表現が示されている。 画面中央よりやや上に描かれる父なる神の三位のひとつである 聖霊が放つ非常に神秘的な光によって超自然的に表現される全体の雰囲気は、 エル・グレコの古典的表現からの逸脱を示し、 画家独特のうねるような筆跡によって 他に類をみない独特の世界観を構築することに成功している。 このような神秘性を携える表現手法は エル・グレコ後期の大きな特徴のひとつであり、 本作はそれが最も明確に示される作品としても知られている。 また本作はドーニャ・マリア・デ・アラゴン学院の後は バラゲール美術館が所蔵していたものの、 プラド美術館へと寄贈された来歴を持っている。 聖霊降臨 (Pentecostes) 1605-1610年頃 275×127cm 油彩・画布 プラド美術館(マドリッド) エル・グレコが1600年代当初に手がけた 宗教画作品の代表的作例のひとつ『聖霊降臨』 確証はないものの、ドーニャ・マリア・デ・アラゴン学院礼拝堂の 大祭壇画衝立の一部であったとも推測されている本作に描かれるのは、 神の子イエスの昇天から10日の後(イエスの復活から50日目)、 五句節の日に聖母マリアや 使徒らが集まる家へ嵐のような大きな音が鳴り響き 各々の頭上へ舌の如き炎が灯り、 一同を聖霊で満たし、 永久に神の子イエスの弟子であることを示すと共に、 布教のために異国の言語を話す能力を授かった 奇跡的な逸話≪聖霊降臨≫で、 エル・グレコの最も大きな特徴である引き伸ばされた人体構造や、 強烈な色彩描写による眩い光の表現が顕著に表れている。 教会の誕生を意味する本作の主題でエル・グレコは、 書く人物に劇的な驚きを感じさせつつ、 非常に神秘的な場面表現を用いることで、 品格性を欠いた俗作に陥ることなく、 ≪聖霊降臨≫の感動の一瞬と深い聖性が見事に捉えられている。 なお同サイズで半円形アーチの額縁処理がなされている点などから 同美術館が所蔵する『キリストの復活』の対画であったと考えられている。 エル・グレコが1600年代当初に手がけた 宗教画作品の代表的作例のひとつ『キリストの復活』。 確証はないものの、 ドーニャ・マリア・デ・アラゴン学院礼拝堂の 大祭壇画衝立の一部であったとも 推測されている本作に描かれるのは、 磔刑に処され絶命し石墓に埋葬された主イエスの亡骸が、 三日後の早朝、死に勝利し復活を遂げるという、 新約聖書内で特に重要視される主題のひとつ ≪キリストの復活≫で、 画面上部に配される勝利の旗を持ち復活した 主イエスの瞬間の静寂すら感じさせる神々しい姿とは対照的に、 画面下部の復活を目撃する(イエスの墓を見張っていた)兵士らは、 巨匠ミケランジェロの表現に通じる運動性の非常に高い肉体表現と、 マニエリスム様式を超えバロック的な様式に近い、 誇張と独創性に溢れた構図的展開が大きな特徴である。 本作に登場する人物へ示される、 この肉体的表現は画家の現存する唯一の神話画である 『ラオコーン』にも示されており、 本作はエル・グレコの晩年期における表現手法の変化や 特徴を研究する上でも、非常に重宝されている。 なお、同サイズで半円形アーチの額縁処理がなされている点などから 同美術館が所蔵する『聖霊降臨』の対画であったと考えられている。 320×180cm 油彩・画布 プラド美術館(マドリッド) マニエリスム絵画最大の巨匠のひとり エル・グレコ晩年の代表作品『羊飼いの礼拝』 数多くの作品が現存するエル・グレコの作品は 工房作の多い事でも知られているが、 画面全てが画家の筆によるものとされる本作に描かれるのは、 神の子イエスが降誕した夜、 ベツレヘム郊外の貧しい羊飼いのところへ 大天使が降り救世主が生まれたことを告げられた後、 急いでベツレヘムに向かい厩の飼葉桶に眠る降誕して間もない 聖子イエスを礼拝するキリスト教美術における 代表的な図像のひとつ≪羊飼いの礼拝≫で、 特に晩年期のエル・グレコ様式に顕著に示される特徴、 輝度の大きい光彩表現による激しい明暗対比や、 極端に縦へ引き伸ばされた人体プロポーション、 原色に近い強烈な色彩感覚などによって、 現実世界を超越した超自然的な事象として、 本場面を極めて象徴的に表現している。 本作では降誕し威光を放つ幼子イエスを中心にし奥手へ 聖母マリアと夫聖ヨセフの姿を、 手前へ厩へ駆けつけた羊飼いを、 そして上部に神の子イエスの降誕を祝福する天使たちが配されている。 エル・グレコは工房作も含め本主題を描いた作品を幾つも手がけているが、 内容、構図、構成、色彩、そして表現手法において お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.10.09 05:16:58
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