私は告白する 山田風太郎短編集「山田風太郎コレクション 1」
みなさんこんばんは。16年リオデジャネイロ五輪競泳男子400メートル個人メドレー金メダリストの萩野公介氏と、19年8月に結婚したシンガー・ソングライターmiwa夫妻が離婚したそうです。今日も山田風太郎作品を紹介します。山田風太郎コレクション 1山田風太郎出版芸術社「タイムスリップ森鴎外」「タイムスリップ明治維新」と、たて続けにタイムスリップものを著して、すっかり鯨統一郎氏は、トンデモ歴史ものの魅力にはまってしまったようだ。映画でも、いくつも作品が作られているテーマ「タイムスリップ」は、いたく作家の想像力を刺激するらしい。かの山田風太郎氏も、この例に漏れず。本書に収録されている「江戸にいる私」は、風太郎SFでお馴染みらしい素広平太(すえひろ・へいた)博士が登場する。すえひろへいた→スピロヘータ。いつもながら、このネーミングセンス、何ともはや。彼は350年後に覚醒する冷凍睡眠を実施するが、そこにならず者の壮吉と千代子が割り込んでくる。ところが彼等は、何故か350年前の1610年に目覚めてしまう。ノーベル賞を日本で二度目に受賞した博士の発明が、こんないい加減でいいのか?と突っ込みを入れたくなるが、あいにく大坂の陣前夜。風雲急を告げようとしている最中、ええい邪魔だと突っ込みは、けっ飛ばされて、どこへやら。40ページ足らずの短篇に、宮本武蔵、佐々木小次郎、加藤清正、千姫、春日局、そして御大徳川家康と、これでもか、の有名人オンパレード。いつもながらのサービス精神には、脱帽。歴史上のスター達が、あんまりものを考えてなさそうな現代人に翻弄されるシーンは、ユーモラス。壮吉と千代子の予言(=彼等にとっては史実)に、「おいおい、そこまで言っちゃっていいの?BTTFのマーティにだって、それなりの分別があったのに。」と不安になる。けれど、心配ご無用。無軌道に広げたように見えて、最後は現実に言ったとされる家康の一言で締めて見せる。ううむ、やっぱり古だぬき。家康も、山風も。トリックにも驚いたが、更に最後の心情の捩れに驚き、若き先生と学生の描写は、「何だか栗本薫さんの世界みたい。」 と思った表題作、「うーん、これって禁じ手では?それともあり?」と迷った「二つの密室」他、Part1は、「この罠に罪ありや」「夢幻の恋人」などミステリー作品が収録。Part2は、珍しいショートショート「贋金づくり」「パンチュウ党事件」「こりゃ変羅」「江戸にいる私」などユーモア小説篇。Part3は姫と爺とその孫の少年の3人組が、昭和30年の新宿で敵を探すという、時代劇の設定をそのまま持ってきたような一話完結の連作ミステリー。昭和30年代をそもそも知らないので、どこまでがパロディで、どこまでが事実なのかなぁ、と恐る恐る読んだ。「三人の辻音楽師」「新宿殺人事件」「赤い蜘蛛」「怪奇玄々教」「輪舞荘の水死体」Part4には心理サスペンスの要素が強い「あいつの眼」「心中見物狂」「白い夜」「真夏の夜の夢」を収録。幅広いジャンルで山田風太郎を楽しみたい!という方にはぜひお勧め。『中古』天狗岬殺人事件 (山田風太郎コレクション)KSC