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カテゴリ:ショートストーリー
月曜日の朝から幼稚園児のマー君4歳の
お母さんと出勤前のお父さんが何やら夫婦喧嘩をやっているようです。 まずは、お母さんが 「マーが書類をゴミ箱に捨てたけどいいの?」 と、心配そうに言いますと 「ええ!どこどこ・・・」 ビックリしたお父さんは、ネクタイを締めながら 家中のゴミ箱に頭を突っ込んだり ひっくり返したりして走り回っています。 捨てられたらしい書類が見つからないお父さんは、 だんだん頭に血が登ってきました 「おい、どのゴミ箱だよ」 お母さんがお父さんのそばで言いました 「ちがうの。パソコン」 「パソコン?捨てたのか」 「違うわよ、マーがパソコンのゴミ箱に何か入れてたのよ」 「パソコン・・・早く言ってくれよ」 と、プリプリ怒ったお父さんのネクタイは大きく曲がっています。 どうやら、マー君が捨てたと言うのは、 マー君が最近使いはじめたパソコン上のゴミ箱だったようです。 こんなマー君、最近、近所にできたピアノ教室に お試し入学しました。男の子のマー君がピアノってのは どうも納得行かないお父さんは 「男の子なんだからさあ、野球やサッカーの方が いいんじゃないかなあ」 と言うのですが、お母さんは 「何をやるにしても、リズム感よ。 ピアノ教室の先生が言ってたのよ。 大工さんも腕があがると、トントンって トンカチ叩く音が、うるさい音からリズミカルな音になるんですって」 「あ、それでか、ベートーベンに第九(だいく)ってあるの」 お父さんは、ちょっと、冗談でも言ってみたくなったのでしょう。 しかし、お母さんは軽蔑したように 「バカじゃないの。真面目に考えてよ」 最近、教育熱心なお母さんの気迫にお父さんは、タジタジです。 さて、肝心のマー君ですが、最初の一日は楽しそうに過ごしました。 ピアノ教室で滅茶苦茶ひかせてもらえるのが うれしかったようで、 「ジャンジャンガンガン・・・」 なんて言いながらやっていた様ですが。 二日目になって先生がドレミ・・・を教えはじめると 「幼稚園の先生とおんなじやな」 って言い出して、すっかりやる気をなくしてしまいました。 先生が 「ドレミ・・・・・」 と言うとマー君 「ガタンコトンガタンコトン・・・」 大好きな貨物列車の走る音で言い返します。 「ドレミ」「ガタンコトン・・」「ドレミ・・・」「ガタンコトン・・・」 先生が何度「ドレミ」と言っても、 マー君は「ガタンコトン」と言い返すので とうとう先生はギブアップ、 「お母様、まだマー君にはピアノは早いんではないでしょうか。 まだまだ、お電車の方がよろしいようで・・・オホホッホ」 と愛想笑いで言うと、マー君のお母さん、 「違うんです。うちの子は貨物列車なんです」 と答えてプリプリ怒って帰ってきました。 そして、その夜、お母さんは仕事から帰ってきたお父さんに 「大工のトンカチのリズムだって・・なんて言ってたくせに 貨物列車のガタンコトンが、どうしていけないのよ。 マーは4歳よ・・・ドレミなんて言っても面白いはずないでしょ」 と言って超興奮気味です。 お父さんは、何とかお母さんの興奮を抑えようと 「エジソンのお母さんも、そうやって子供の味方したんだよね」 お母さん、この言葉に踊り上がるように喜んで 「そうよね。エジソンのお母さんは、いつだって子供の味方だったのよ。 さすが、あなた、よく分かってるわあ」 アッという間に上機嫌になったマー君のお母さん 「がんばれよ、エジソン君」 とマー君の頭をナデナデしたのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.08.29 09:55:08
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