少年漫画感想
『MAJOR』 その2・海堂高校・聖秀学院編
★海堂高校編
セレクション審査と夢島編は、
頭一つ抜けて浮いている「スポ根モノ」ですね。
「重いコンダラ」を引いちゃうような感じの。
「ねーよ、こんな高校」感。
私自身が、
スポ根モノというのをまじまじと読んだことがなかったので、
(主に「スポーツ」と書いて「ラブコメ」と訳す漫画しか手を出してこなかった;
スラムダンク以外は;)
なるほど!!これがスポ根か!!・・・という
新鮮さがありました。
野球バカたちの中で、一際目立ちまくる天才・吾郎くんの描写は、
これ、特に男の子の読者はしびれるだろうなぁ~~と思いました。
この辺りは、私も中・高校生の頃に読みたかったなぁ。
やっぱりそこそこ社会人やった今の感覚で読むのと、
大分入って来方が違ったと思うんですよね。
燃えないわけじゃないんですが、ここまで天才だと、
大人感覚が「冷静に」読もうとしちゃって;
しかし、
最近のスポーツものって、
こういう冷静に観なきゃいけないような天才が、
あんまり居ないですよね。
知らないだけだったら申し訳ないのですが。
クセを活かした主人公が多いっていうか。
それはそれでいいんですけど・・・
やっぱり、こういう天才主役も大事だと思うんですよ。
「この漫画があったからこのスポーツ始めた!」
って言ってもらえる、そういう漫画って、
天才主役の作品だけだと思うんです。
よっっっぽど上手い画面作りと
よっっっぽど上手いエピソード作りが出来なきゃ
面白くできない・・・のかもですが。
各審査内容・訓練内容がいちいちトリッキーで、
面白かった!
セレクション審査合格後、
勉強の試験を受けなければならなくなった吾郎くんが
これ以上なく苦しむエピソード、
吾郎くんが理想とするプレーヤー
「打って走って守れ、三振もとれるプロ野球選手」
を明言するシーン、
夢島の、夜の外野手練習シーン、
この辺りがお気に入りシーンです。
一軍との壮行試合の辺りでは、
寿くんに感情移入しちゃって辛いんですが;
海堂編があるからこその、
吾郎くんと寿くんの「親友」の説得力だと思います。
★聖秀学院編 33巻~47巻
ここの転換は、
まさにまさしく、「MAJOR」という作品にしかない切り返しでしょう。
異次元の超名門・海堂高校から、
男子生徒8名の元女子高へ転校、
全員を勧誘して、野球部を設立!
打倒海堂へ!!
読者としても、「そんなことしなくても・・・」と言いたくなる
茨の道のはずなのですが、
スポ根・ファンタジー感の強かった海堂から、
生活の場が「日常風景」に戻ったので、
実はすごくホッとしました。
家族も出てくるし、清水ちゃんも居ますしね。
吾郎くんの人格形成にとっても、
ものすごく影響のあったステージだと思います。
とにかく設定として上手いと思うのが、
吾郎くんが転入する前の男子生徒が7名・・・
そもそも一人足りない、先の保障がない状態なのに、
一人の漏れなく野球部に入ってもらわなきゃいけない、
ってところ。
普通、こんなん無理だと思うのですが、
いざエピソードで詰めて提示されると、
・・・なんか、落ちてくる。
内山くんと、宮崎くんなんて、
普通の状態じゃ、絶対に部活動なんてやらない子・・・
それも分かるのですが、
いざ、この状況・・・「絶対やってくれないと困る」、
ここに置かれたら、やると思うんですよね。
期限も決まっていますし。
それに・・・「やってみれば楽しい」。
これは鉄板でしょう。
私自身が、わりと宮崎くんと近いタイプというか;
「運動部活なんて無理」タイプなので、
なんかもう・・・すげぇ、羨ましいな、って思います。
星秀学園の男子生徒たちが。
まさかまさかの状態で、
わけもわからんまま、
夏の地区大会というベッタベタな地で、青春を謳歌出来るなんて。
本当は、誰にだって「やってみたい」気持ちはあるでしょう、
こんなの。
一度でいいから、私も
やらざるを得ない状況に追い込まれてみたかったなぁ。
口では「嫌」って言いながら、すげぇ楽しんだと思います。
何言ってんだ、勝手にやれ、って感じですね;;
このステージで登場する、新キャラクターの大河くんが
すごく好きなんです。
清水ちゃんの弟、という吾郎くんの人生的にも重要ポジションを、
後付けとは思えないような存在感で詰めてくれて。
最後まで、いい立ち位置で発言してくれるキャラクターです。
聖秀学院編は、とにかくどのシーンも大好きなのですが、
取り立てて・・・
お母さんに「勝手やった分はバイトしろ!」って怒られるシーン、
内山くん・宮崎くんを勧誘するシーン、
野球には詳しくないですが、なんとも「教師」的な観点で
野球部を導いてくれる白人英語教師・山田先生の描写は
どこも好きです。
相変わらず、親父はカッコいいし、
対三船戦は、聖秀・三船両校のメンバーたちの思いが交錯してて
本当にグッと来ます。
地区予選が始まってからは、
足のケガに苦しみながらも、
チームの精神的支柱を全うしようとする吾郎くんですが、
ここの意識・「チームのムードを常に好転させようとする姿勢」は、
特にこの先、プロのステージで常に輝きを発揮します。
・・・説得力があるんですよ。
これだけ、無茶苦茶な道筋を歩いてきた子だから、
「ここ」の能力に優れてるんだよ、っていうのが。
とにかく、「ザ・MAJOR」という聖秀学院編です。
このステージがあるからこその、
吾郎くんのその後の飛躍ですし、
また、この状況で目標に向かって野球がやれる、・・・というのは
突拍子もない転換をころころ迎える吾郎くんの人生を、
安心して観ることができる
その説得力になっている部分だと思います。
続く。
by姉