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ふゆゆん亭

ふゆゆん亭

私が読んだ本・10

●読んだ本●


「黒い季節」 冲方丁 著(うぶかた てい) 角川書店



黒い季節

黒い季節

価格:1,785円(税込、送料別)








■あらすじ■

暴力団員の黒羽組の藤堂惣一郎は少年を車で轢いてしまう。
明らかに死に至る事故。

しかし少年は無傷で、記憶を失っていた。

そのまま男の家で暮らすようになったその妖しいほどに美しい少年に、
男は「穂」(スイ)という名を与える。

やがて少年の背に彫られた両目がない美しい無明龍の入れ墨に導かれるように、
藤堂は彼の出自を辿り始めるが。

不思議な力を持ち、
世界に贖われた存在―少年と男の再生の物語。

『マルドゥック・スクランブル』の冲方丁、珠玉のデビュー作。




【著者情報】(「BOOK」データベースより)
冲方丁(ウブカタトウ)
1977年生まれ。早稲田大学中退。
在学中の1996年に本書『黒い季節』が第1回スニーカー大賞金賞を受賞し、デビュー。

その後2003年の『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞を受賞、
「ベストSF2003」国内篇第1位に輝く。

以降小説・コミック・ゲーム・アニメといった
メディアを超えるエンタテインメントの多才な創り手として注目を集めている






■感想■

神道の派生集団なのだろうか、
それぞれの地の<闇代>(のりしろ)を治めている
八方門家の一つ、東北の艮社(うしとらのやしろ)に属する
巍封(ぎほう)・八百万の贖いの者、
記憶を失った少年と女性・戊(ほこ)。

対する八方門家を統べる
北西の乾宮が各地に遣わした
乾宮警察の白髪赤目の女・蛭姫。

この裏の世界の闘いと
表の世界でも裏と言われるヤクザの世界で
尋常ならざる力を持つ者と

亡き父の最後の絵を捜し求めて
戊と出会った若者・誠、

過去を封じた男・黒羽組の藤堂らが入り混じり
力と贖いの闘いが始まる。


一つの大団円に向かって
それぞれの登場人物達が集められて行くのだが、

途中も最後も軸がぶれないので
とても読み易かった。


しかも盛り上がりからラストへの流れが
凄まじい迫力で描かれていて
途中で疲れたほどだった。

普通、入り組んだ話を面白く読んでいたのに
最後が拍子抜けと言う経験が多いだけに
この畳み掛けるようなエンディングには
非常に満足した。

超能力モノが大好きなので
尋常ならざる力や技の応酬はワクワク楽しかった。

しかも
不思議な世界がしっかり作り上げられていたので
不信感を持つ事もなく
たっぷりと話に浸れた。


自分の所業を心に刻んでいるヤクザって
ヤクザを続けていられるんだろうか?
と言う疑問は浮かんだけどね。

母親を殺し、何人もの人を殺した人が
こうも心豊かな人に変わるのだろうか
と言う疑問もあるんだけどね。


しかし楽しくするする読めた。
 
心の闇や欲望についての描写も
しっかり書き込まれていた。

漢字を沢山使った表現も
面白かったし、

登場人物の設定もしっかりしていて
スニーカー賞を取ったのは納得だった。


(スニーカー賞に疎いので調べたら
 「涼宮ハルヒの憂鬱」谷川流著もスニーカー賞を取っていた)


それにしても19歳での受賞とはビックリした。

19歳でこんなに表現力豊かで
構成もがっちり作り上げて、

しっかりした小説を書くんだーと、
驚いた。

人間観察も怠り無い人なんだろう。


冲方丁を教えてくれたLake Morainさん
ありがとうございましたー\(^ー^)/




    2010・06・26(土)




●読んだ本●


「舞面真面お面の女」 野崎まど著 メディアワークス文庫


舞面真面とお面の女

舞面真面とお面の女

価格:578円(税込、送料別)





■あらすじ■(抜粋)

お面の名を持つ男と
お面の女の物語。

工学部の大学院生・舞面真面(まいつらまとも)は、
ある年の暮れに叔父の影面(かげとも)からの呼び出しを受け、
山中の邸宅に赴く。

そこで頼まれたこととは、
真面の曽祖父であり、
財閥の長だった男、
舞面彼面(まいつらかのも)が残した遺言の解明だった。


従姉妹の水面(みなも)とともに
謎に挑んでいく真面だったが、
不思議なお面をつけた少女が現れたことによって
調査は思わぬ方向に進み・・・・・・・?


第16回電撃小説賞<メディアワークス文庫賞>受賞者、
野崎まどが放つ異色ミステリ!





■感想■

古本屋で見つけた真新しい文庫本だったが、
変わった題名と表紙のイラストに惹かれ手にした。

あらすじを読むと謎解きのようで
楽しそうだったので珍しく買い求めた。


山中の叔父の邸宅に向かう地味な始まりだったので
話がどう転がるのか全く想像が付かず、
のらりくらりと暇つぶしに読んでいたのだが
これがどうして大層楽しかった。

文章は難しい言葉や
奇をてらった単語も使われていないので
読みやすいうえに
淡々とした文章の中に謎がいっぱい散りばめられていて
気持ち良く読む事が出来た。


お面の少女が人を喰ったような
百戦錬磨な性格で(私の対極の人間だなぁぁ)
相手が誰だろうと関係なく対応するのだが
非常に頼もしくて大好きになった。


遺産の謎解きはちんぷんかんぷんだったが
解ってみれば納得が行き、
しかもどんでん返しもあって
読後感はとても愉快愉快。

ミステリを読んでこんなに愉快でワクワクしたのは
初めてではないだろうかと思った。


これで2作目だというので
野崎まど氏の作品は1作目もこれから出るものも
読んでみたいと思った。


いや、愉快愉快♪


2010・07・31(土)






●考えながら読んでいる本●



「オプティミストはなぜ成功するか」
マーティン・セリグマン著 訳=山村宜子 講談社




オプティミストはなぜ成功するか

オプティミストはなぜ成功するか

価格:660円(税込、送料別)



セリグマン博士はペンシルバニア大学教授。
オプティミスト(楽観主義者)とペシミスト(悲観主義者)
の研究を25年間続けて来た。






この本は
本来他人には理解出来ない、

他の人間の心と感情を分析して
思考の仕方と言葉で説明した珍しい本です。


長い間疑問だった、
ある出来事が人にとっては笑い飛ばす事だったり
同じ事が別の人にとっては大問題だったり

人によっては軽く乗り越えられたり
人によっては一生を左右する躓きの始まりだったり、

余りにも違うその後と結果は何故引き起こされるのか?

これの答えが詳しく載っている本だったので
この本を紹介してくれたしゅうべえさんに感謝いたしますm(_ _)m


自分の事、他の人々の事が
随分理解出来るようになりました。


少しでも自分や世界が幸せになって欲しい。

(この悲観的な発想がすでにペシミストだわ)






■理解を深めるためと、思い起こすために、
 心に響いたり、納得したりヒントになった所を抜粋しました■その1

()内は自分から湧いて来た思い。




P18

・ペシミスト(悲観主義者)の特徴は、悪い事態は長く続き、
 自分は何をやってもうまくいかないだろうし、
 それは自分が悪いからだと思いこむことだ。


・オプティミストは同じような不運に見舞われても、
 正反対の見方をする。
 敗北は一時的なもので、その原因もこの場合にのみ限られていると考える。
 挫折は自分のせいではなく、その時の状況とか、
 不運とか、他の人々がもたらしたものだと信じる。


(どう捉えて自分に説明するかと言う入り口で
 すでに真っ二つに分かれてしまうのだ)




P19

・悲観主義現象の核には、無力な状態がある。
 無力とは、自分がどんな選択をしようと、
 これから起こることに影響を与えることはないという状態だ。


(そう言われてみれば、私の中にはかなり強い無力感、虚無感がある。
 確かに物事を変える力があると思っていなかった)




P31

「成功と失敗を分けるものは何?」

・もし、才能や意欲と同じくらい重要な第三の要素――
 楽観主義または悲観主義――があるとしたらどうだろう?

・もし、私たちが必要な才能も意欲もすべて備えているのに、
 ペシミストであるために失敗するとしたら、どうだろう?

・もし、オプティミストのほうが学校でも職場でも
 スポーツでもよい成績を上げるとしたらどうだろう?

・もし、私たちがこの技術を
 子供たちに教え込むことができたらどうだろう?



(自分の才能をよりよく使いこなせたら
 こんなにうれしい事はない。
 ましてやそれを子供に伝えられたら)




P33

「健康を決定づけるものは何?」

・私たちの考え方、とくに健康に関して
 どのような意見を持っているかによって健康状態が変わる。

・オプティミストのほうがペシミストよりも感染症にかかりにくい。

・オプティミストのほうがペシミストよりも健康的な習慣を持っている。

・オプティミストのほうが免疫力がある。

・オプティミストのほうが
 ペシミストよりも長生きであることが証明されている。

(長寿の方々をテレビで見る限り、とても楽観的であり
 現状を受け入れ幸せそうで満足している・・・と感じる。
 これはいかに自分や現状を受け入れるかで
 人生が変わると言う事の現れだと思う。
 私は自分を受け入れ、人生を喜びたい)




P35

・自己コントロール理論――二つの基本的観念
 無力感の習得と説明スタイル。

・”無力感の習得”とは、あきらめの反応を指す。
 自分が何をしようと事態は変わらないのだからやめようという考え。

・”説明スタイル”とは、なぜこのような事になったのか
 普段自分に説明する時の方法。
 これは無力感の習得を大きく左右する要素。

・楽観的な説明スタイルは無力感に陥るのを防ぐのに対し、
 悲観的な説明スタイルは無力感を拡大してしまう。

 日常、挫折や大きな敗北を経験した時、
 自分に対してどんな説明スタイルを取るかによって、
 どれほど無力感に襲われるか、
 またを自分を奮い立たせることができるかが決まる。

・もしペシミストであっても、悲観主義から逃れて、
 必要な時に楽観主義を使いこなす方法を会得する事ができる。

 第一ステップは自分の心の中の言葉を見つける事だ。


(あらゆる前進に共通なものは、
 きっと「自分を知る」事から始まるのだと思う)
 




―― 続く――


2010・09・20(月)












●読んだ本●



「クリスマスに少女は還る」キャロル・オコンネル著

翻訳=務台 夏子  創元推理文庫



クリスマスに少女は還る

クリスマスに少女は還る

価格:1,260円(税込、送料別)







■あらすじ■ 抜粋


クリスマスも近いある日、
二人の少女が失踪した。

刑事ルージュの悪夢が蘇る。
十五年前に殺された双子の妹。

だが、犯人は今も刑務所の中だ。
まさか? 

一方、
監禁された少女たちは奇妙な地下室に潜み、
脱出の時をうかがっていた……。

一読するや衝撃と感動が走り、
再読しては巧緻なプロットに唸る。

新鋭が放つ超絶の問題作!





■感想■(少しネタバレあり)


愛と哀しさと切なさに満ちた
素晴らしい一冊だった。

登場人物一人一人が苦悩し、
喜び、楽しんで
生き生きと描かれていた。


15年前に双子の妹を誘拐され
殺害されたルージュ・ケンダルの視点。

ルージュの妹を殺したとして
刑務所で苦渋の日々を生き抜いている
神父の視点。

神父を慕い、
違う角度から事件を見つめている
アリの視点。

監禁されても脱走を企てる
少女達の視点。

己の秘守義務に縛られて
苦悩の日々を過ごす精神科医の視点。


沢山の人達の人生が織り込まれたような
重厚な一冊だった。


特に、
人に心を開くのが難しいディヴッドとルージュの交流は
町の人達を巻き込んで
ひと時の賑わいと心の温かさを思い出させた。

二人のキャッチボールを見て、
警官達が一人二人と参加して

2チームのベースボールになり、
通り掛った子供達も参加して
子ども達の楽しいゲームになって行く様子は
胸が高鳴ってワクワクして
人と関わる豊かさを思い出させてくれた。


子供を誘拐された親達の苦悩や
サディーのお母さんの愛と確信が
苦しく切なく、
私の胸を打った。

愛する者を奪われた人々の
愛と苦悩の日々が描かれていた。


どの登場人物に対しても
読んでいるうちに愛着が湧き、
胡散臭いFBIのアーニー・パイルさえも
人間臭さ故に好きになったくらいだ。


そしてあれこれ謎が残っているのも
読み手側の余韻を呼んで、
なかなか良いものだと思った。


最近で一番好きな一冊に出会えた。




紹介と感想をHPに載せてくださった
斑様のお陰で

この素敵な一冊に出会えた事を感謝します。








*この本の中古本が一冊余っているので
 是非読みたい方がいらしたら、
 左下の「メールを送る」で住所を教えていただけたら
 文庫本ですがお送りします。

 とてもとても良い本なので
 読みたい方に差し上げたいです。


追記 差し上げる方が見つかりましたーー(*^-^)ノ
2010・10・07

























●読んだ本●


「天使の帰郷」キャロル・オコンネル著

務台夏子=訳 創元推理文庫



天使の帰郷

天使の帰郷

価格:1,218円(税込、送料別)







■あらすじ■(抜粋)

これは確かにマロリーだ!
墓地に立つ天使像の顔を見て
驚くチャールズ。

カルト教団の教祖殺害と、
自閉症の青年への暴行の容疑で
勾留されたマロリー。

なぜ彼女は
誰にも一言も告げずにニューヨークを去り、
ルイジアナの小さな町に帰郷したのか?

そこで17年前に何が起きたのか?

いま、時に埋もれた罪を裁くために
天使が降臨する。

無類のヒロインの活躍を描く
シリーズ第4弾!





■感想■

地元の図書館で、
キャロル・オコンネルの本ですぐに借りれたのが
この本だったので

裏にあったあらすじも読まずに
読み始めた私は

これがシリーズものの4作目だなんて
知らないで読んでしまったから

時々混乱しつつ疑問符が多かったのだが
最初から知らなくても十分に楽しめた。


何しろ主人公のマロリーが強烈な女性で、
他にも強烈で魅力的な女性が沢山出て来る。

男性も
一癖二癖もある怪しい人が
沢山出て来るのだが、

読み終わってみると
女性陣の強さがずっしり残っている。


チャールズの誠実さやお人よしで
すぐに人に騙されたり
嘘がつけなかったり
軽くあしらわれたりする所が
滑稽で幼く感じたのだが、

チャールズの一々の反応が
まるで私のようで

私は改めて自分の事を
客観的に見る事が出来た。


どうして人の言う事を
何でも真に受けてしまうのか未だに解らないのだけれど

チャールズを見ていると
他の人がいじりたくなる理由が解った気がした。

私は娘と息子にいじられるばっかりなのだが
何でもストレートに反応するから
からかうのが面白いんだろうなぁ。


脇道にそれてしまったが、
マロリーも警察署長もカルト教団の人達も
町の人達もみんなの行動の理由が怪しくて
謎だらけだった。

それが後半で
ようやく理由が少しずつ解って来ると
色んな事情が絡まりあっている設定に
とても感心してしまった。


少し前に読んだ「クリスマスに少女は還る」と
つい比較してしまうのだが、
このマロリーが強烈な主人公であるためか
エキセントリックで濃い内容であったという読後感。


そしてこの町の人達が
今もしっかり生きているように感じる
表現力と設定の凄さ。


キャロル・オコンネルは凄い人だと思う。


でもマロリーシリーズを
一作目から読むかどうか迷っている。


濃かったんだーー。

強烈だったんだーーー。


こんな強烈な話しを続け様に読むのには
私の器が小さいんだと思う。


しばらく経ったら
すごく読みたくなるかもしれないけどね。



強烈な一冊を求めている人にお勧めです。




2010・10・24(日)








「一年でいちばん暗い夕暮れに」 ディーン・クーンツ著

松本依子・佐藤由樹子=訳  早川書房



  
【送料無料】一年でいちばん暗い夕暮れに

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価格:1,029円(税込、送料別)





■あらすじ■ 抜粋

ドッグ・レスキューとして
虐げられた犬の救護に情熱を傾けるエイミーは、
その夜、恋人のブライアンとともに
不思議なゴールデン・レトリーバーを助けた。

同じ夜、ある邪悪な男女が、
長年追い続けた獲物を捕らえる罠を
ついに完成させようとしていた。


因縁で結ばれた二組の男女の運命の岐路に、
突如現れた黄金の犬が起こす奇跡とは?


人の悪意がもたらす恐怖と
犬への深い愛が織りなす、
サスペンスフル・ドッグ・ストーリー。




■感想■

クーンツの「ウォッチャーズ」の
ワンコと話しがとても楽しくて印象深かったため

ワンコが出るこの話にもすぐに飛び付いて読んだ。


最初の不思議なゴールデン・レトリーバーの
ニッキーや自閉症児らしき少女の謎の発言やらの件で
面白く始まってすいすい読んでいたのだが、

途中で話しの終わりが見えてしまい
推理物好きな私としては
興味が失速してしまって一日に2ページと言う
超のろのろ運転になってしまった。



勿論、
私が読みきれていないオチもあったのだが。


ニッキーは最高の黄金の笑顔の
ゴールデン・レトリーバーで、
私もこんな犬がいたら是非友達になりたい!
と「ウォッチャー」の時のように思った(^^ゞ



超常現象的な様々な出来事は
私には問題なく楽しく読めたのだが

探偵さんの心の奥行きが
もう少し知りたかったのと、

アメリカ小説にありがちな
絶対悪と絶対善には物申したい思いが募った。


人はそんなに単純だとは思えないだなぁ、
私は。


ワンコの純粋性は納得行くけどね。


ドッグ・レスキューの現実が解り
勉強になった。


アメリカも日本も、
世界中で犬も猫も色んな動物が
人間の都合で捨てられ処分されている。



知っているけど何も出来ないから
あまり深く追求したくない自分がいたのだと思う。



処分される動物の事を思うと
胸が苦しくなって、
そのせいもあってこの本を読み勧めるのが
辛かったのだなぁと今思う。


エイミーは沢山の犬を救い、
ゴールデン好きの人達との輪を築いている。



沢山の素敵なゴールデンが出て来て
犬好きの人には
特に楽しく読めると思った。


あとがきを読んで解ったのだが
クーンツ家に初めてやって来て、
愛を振りまいていたゴールデン・レトリーバーが
亡くなった年にこの小説が書かれた。



クーンツの愛犬への
愛と感謝に満ちた作品だと納得した。



愛が一杯の小説だった。













●読んだ本●

「オババの森の木登り探偵」平野肇著 

小学館 


オババの森の木登り探偵

オババの森の木登り探偵

価格:1,680円(税込、送料別)






■あらすじ■

鎌を持ったオババと悪ガキたちとの
飽くことなき逃走劇。

あれから20数年……
都会に奇跡的に残る「オババの森」は、

彼らの思い出が詰まった
タイムカプセルになっていた。 

主人公・中里翔平も
かつてこの森で遊んだ悪ガキのひとり。

いまは森の管理人として
ツリーハウス(樹上の小屋)で寝起きしている。

小学生の女の子を相棒に、
近所の珍事件を解決する探偵でもある。

そんなある日、
オババの森を蹂躙する重機の音が響いた!  

睡蓮鉢の小宇宙を観察する少女、
夜は銀座のクラブで働く女性ナチュラリスト、
クチボソを釣る謎の老人、
森とともに生きてきたオババ……
個性的な登場人物たちが織りなす
野外探偵ミステリー小説。


ケータイ配信で大人気。
野外ミステリー小説






■感想■

息子が図書館で借りて読んだ本を
珍しくも「お母さんが好みだと思う」
と言って読むように勧めた本。


不動産屋を継いだ幼馴染から
目黒に奇跡的に残っている
オババの森の管理人を頼まれた中里は、

脱サラして
管理人だけでは食べていけないため
探偵(ご近所の探し物や何でも屋が主)
を兼業しているのだが、

入院生活が長いオババの家は
半壊状態のために
ツリーハウスを作って
そこで寝起きしている。


もうその条件だけで
私の好みだった(((((^m^


次々に起きる小さな事件が
次第に大きな問題へと流れて行くのだが、

とても読み易くて楽しかった。


東京の目黒に森が残っていたら
こんな問題が起きるだろうなと、

綺麗事だけで済まさない所も
現実的で理解しやすかった。


そして森と自然の大切さを認識してもらうのにも
解り易くて、
年代を問わず読める良い小説だと思った。


最後が尻切れトンボに思えたのだが、
息子は「それがいい」と言う。

私はつくづく起承転結が
はっきりしているのが好きなのだと思った。


この感想を書くために調べて
ケータイ配信小説と知り驚いた。


大人の小説家が書いたケータイ小説は
初めて読んだのだが、

設定や状況をしっかり書いてあって
リアルに描き易かった。

2010・12・25








「影」カーリン・アルヴテーゲン著

柳沢由実子=訳 小学館文庫



【送料無料】影

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価格:880円(税込、送料別)





■あらすじ■ 扉後ろから抜粋

ノーベル賞作家である父アクセル・ラグナーフェルトは、
脳疾患で全身麻痺となり施設に入っている。

息子ヤン=エリックは
その威光で尊敬を集めて生活しているが、
家庭は崩壊し
浮気三昧の日々だった。


物語は、
高齢で死んだ老女の身元確認から始まる。

彼女はかつて
ラグナーフェルト家で家政婦をしていた。

葬儀のために
探し物をすることになったヤン=エリックは、
事故死と聞かされてきた妹の死因に不審を抱く。

やがて彼は、
高潔なはずの父が
何かをひた隠しにしていることを知る・・・・・。


人は、
ここまで堕ちることができるのか――
生きることの絶望と希望に迫る問題作。




■感想■

実生活で
問題を抱えて生きている私にとって
この物語は現実の苦さを
益々刷り込むものだった。

だからどうだ。

何がそんなに問題なのだと
どこかに反発心を感じながら読んでいた。

人は普通に付き合っていては
内側はうかがい知れないものだ。


どの登場人物も自分を欺いているから不幸で
行き詰まりの人生が丁寧に書かれている。

何をそんなに苦しんでいるのかと
いぶかしく思いながら読んでいると
最後に理由が解るのだ。

自分を欺いている人は
いつか他人を巻き込み
苦しみや悲しさを引き込んで
嘘の上塗りの人生が増殖して行く。


ヨーロッパの、北欧の国々に
未だに濃い影を投げかけている
ナチスドイツの人種差別と大殺戮の「影」。


苦しい読書だったが、
つまるところ人はいかに自分を欺きつつ生きているのか、を
改めて強く認識したのだった。

5年前の私には理解できない所が
沢山あったのかもしれない。

その点で私は
5年前より自分を知るようになったのだろうと思う。


日本人は自分を欺いている事にさえ
気付きたくないように見える。

自分に騙されて生きていたい国民のように
見える。

だから「かわいい」文化
「幼児性」を重視する文化
になっているのではないのかなと思う。


現在の困窮や閉塞感を無視して
可愛いい楽しいで
誤魔化している文化のように見える。


なんて
私の思考はどんどん広がって行くのだが、
いつもはブログの感想には書かない。


いつもは書かない事を書きたくなる
そんな一冊だった。










「囚人分析医」アンナ・ソルター著 

矢沢聖子=訳 ハヤカワ・ミステリ文庫







■あらすじ■ 抜粋

妊娠八ヶ月を迎え、
出産に不安を抱く女性心理学者マイケルのもとに
衝撃的な知らせが届く。

刑務所につとめる女性カウンセラーが、
囚人と性交渉し、
医療資格を剥奪されかかっているというのだ。

なぜ女性は逸脱した行為をとったのか?

さらに厳重な監視体制下の刑務所内で、
幼児虐待犯が殺害された。

すべての囚人が
この殺人の容疑者という状況のなか、
マイケルは真相を追うが・・・・・・・

くじけぬ心で事件に挑む熱きヒロインの登場




■感想■

余りにも無謀な行動の数々に
妊娠八ヶ月の女性がこんな行動を取るのだろうか?
と何度も思った。

この作家は性犯罪問題を専門に扱う
司法心理学者・セラピストとして活躍し、
ウィスコンシン州矯正局のコンサルタントに勤務し
世界的に有名な専門家なのだった。

だから犯罪者達の描写はリアルである。

著者がミステリを書くようになった一因に
小説やマスコミでとりあげられる
性犯罪者や精神病質者の描写が
総じて不正確なのが気になったからだそうだ。

日本語翻訳で出版されたのは
本書が初めてだが、
マイケル・ストーン・シリーズとしては4作目だ。

活動的で孤独を好むマイケルは
妊娠による生活の変化と
その後の人生の変化とに戸惑い迷いながら
事件にぶつかって行く。

まさにマイケルはぶつかって行くので
2度出産を経験した私は
ハラハラしっ放しである。

お腹をぶつけたら炎症起こして
痛くて動けなくなるよ、
と言いたい。

初めての高齢出産の妊娠後期は
骨盤がミシミシ広がって腰が痛いよ、
とか

8ヶ月くらいになると
お腹が胃を圧迫して
ご飯が食べられなくなるんだよ、
とか

妊婦がドキドキしたら
赤ちゃんにもアドレナリンが巡るんだよ、
とか

本筋の話し以外の所に
突っ込みたくなった(^^ゞ

心理学者とは思えない行動型の主人公は
アメリカらしい小説だと思った。

でも読みやすかったので
すぐに完読した。

だけど後に残らない小説だったなぁ。









●読んだ本●


「老検死官シリ先生がゆく」コリン・コッタリル著

雨沢泰=訳  ヴィレッジブックス



【送料無料】老検死官シリ先生がゆく

【送料無料】老検死官シリ先生がゆく
価格:945円(税込、送料別)








■あらすじ■(抜粋)

シリ・パイプーン、72歳。

みごとな白髪に
透き通るような緑の目をした老人だが、
ただの年寄りではない。

ラオス国内で唯一の検死官だ。

引退して年金生活を楽しもうと
思った矢先に任命され、
やむなく勤務することになった検死事務所は、
医薬品も乏しく、設備もお粗末。

しかし、障害があるが解剖の腕は抜群の助手、
しっかり者のナースなど
一風変わったメンバーに囲まれて、
訳あり死体続出のスリリングな日々が待っていた!

そこでシリ先生は、
死者が語る真実にやさしく耳を傾け、
事件を解き明かしてみせる。

気骨と人情で慕われる老医師が
渋い推理を披露する、
素朴なアジアン・ミステリー。






・2005年バリー賞(THE BARRY AWARDS)最優秀処女長篇賞
(BEST FIRST NOVEL)ノミネート作品
・2007年度フランス国鉄ミステリ賞最優秀長編賞受賞
・2008年CWA賞最優秀長篇賞(THE DUNCAN LAWRIE DAGGER)
ノミネート作品


2008年8月20日ヴィレッジブックスより発行






■感想■

図書館のミステリコーナーで
ふと目に付いたのが、
殺伐とした題名の中で
唯一ほのぼのした題名のこの本。

表紙を見ると益々ほのぼのとして
俄然興味が湧いた。

あらすじを見ると
ラオスで唯一の老検死官の話し!


ラオスのミステリだと?!!
東南アジアのミステリなんて読んだ事がない。

しかも主人公は72歳。
著者はタイに住むイギリス人。

これは読むしかない!
と、わくわくして借りて来た。

内容は期待以上の面白さだった。


お話は、
長年に渡る他国からの支配と内戦に
うんざりしたラオスが、
人民共和国を樹立した翌年1976年の話しなのだが、

革命のために生きた妻を11年前に亡くし、
そろそろ年金生活でのんびりしようと思っていたら
ラオスで唯一の検死官に任命されてしまった
72歳のシリ先生が死体を解剖して
疑問の点を繋げて推理して行くお話し。


しかもシリ先生には霊魂が見えるので
皆が気付かない事にも気付いてしまう。


機材も薬品も足りないづくしの中、
看護婦のデツイとダウン症のグン君が助手と言う
おかしな3人組が上手く稼動して
なかなか優秀な検死事務所である。


シリ先生は毎日メコン川べりのベンチで
親友のシビライと昼食を摂る。

美味しいバケットを売っている屋台の
ラーおばさんは先生に気があるようだ。


先生はいつもユーモアに包んで表現し
困難にめげずに飄々と渡り歩いている。

バイクが壊れたらデツイ看護婦の自転車に乗って
出掛けて行くのだが、
これまたブレーキが壊れていて大変。

一つ一つがそんな感じなのだが
足りないものも困った事も
淡々とこなして行くシリ先生はとても頼もしい。


登場人物達がどの人も個性的でアクが強く、
すぐに憶えられたし、
今もラオスで生きているような気がする。


グーグル地図で見ると、
ラオスは細長い国で、
ベトナムとタイに挟まれ、

西はミャンマー、北は中国、
南はカンボジアと5つの国に囲まれている
海の無い国だった。


ビエンチャンの端っこをメコン川が流れている所に
病院があった。

ここか!
シリ先生とシビライが毎日昼食を摂ったのは
この川岸だな!!と興奮した。


では、先生が物質を調べるために
高校の理科の先生の所に薬品を借りに行くのは
どこだろうかと見てみる。

解らない。

シリ先生の住む部屋の隣に寺院があるから
寺院を探してみる。

解らない。


ラオスの歴史も調べてみた。

ラオスは長い長い間、
他国から支配占領され続けた国だった。

失敗してもいいから
自分達で国を運営したいと思うのは当然だと思った。


ユニークで楽しい小説だった。

ミステリとしても、
沢山あった伏線がみごとに解決された。

最後になって、
あれが伏線だったのかと驚いたりもした。


しかしラスト。
2作目が読みたくなる終わり方なので
是非とも出版していただきたい。

シリ先生シリーズは
5作まで出ているそうだ。


このシリーズ、
世界的にはとても評価が高いのだが
日本ではいかがだったのだろう?

ミステリで霊が登場するのが
物議をかもしているのだろうか?

私は小説の世間の評判を気にした事がない。
でも、
出版に関係する時だけとても気になるのだった。


こんな小説他にないので
2作目からも出して下さ~~い。










■著者紹介:コリン・コッタリル 1952年ロンドン生まれ。

教師をしながら各地を転々としたあと、
オーストラリア、アメリカ、日本で教職につく。

2004年本書で本格的な作家活動にはいる。

現在はチェンマイ大学で教鞭をとりながら、
年1作のペースでシリ先生シリーズを発表。

また、
ラオスの子どもたちに本を送る活動にも力を注いでいる



※ラオス人民共和国 ベトナム・カンボジア・タイ・
 ミャンマー・中国に囲まれた海のない国 

 首都:ヴィエンチャン 人口:約610万人(2004年)





●読んだ本● 2011・02・16読了


「インモラル」ブライアン・フリードマン著

長野きよみ=訳 ハヤカワ書房


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価格:1,050円(税込、送料別)






■あらすじ■(抜粋)

妖しい緑色の瞳、艶のある唇、豊かな胸。

その少女の肢体は淫らすぎた――

町じゅうの男を虜にしていた
17歳の女子高生レイチェルが忽然と姿を消した。

失踪直前、同級生の男を誘惑し、
嬉々としていた彼女がなぜそんな不可解な行動を?

ダルース警察のストライドは、
レイチェルの義父が娘に色目を使っていた事実を知り、
義父を逮捕する。

やがて法廷で審理が始まるが、
そこには悪夢が・・・・・。


・マカヴィティ賞最優秀新人賞受賞
・アメリカ探偵作家クラブ賞受賞
・英国推理作家協会賞受賞
・アンソニー賞受賞
・バリー賞の最優秀新人賞最終選考ノミネート




■感想■

他人は自分の欲望を
満たすために存在しているかのように、
冷徹に奔放に生きていたレイチェル。

苦しみながら生きて来た
レイチェルの母。

妻を亡くして哀しみから
抜け出せないでいる刑事ストライド。

小柄で優秀な相棒のマギーは
ストライドに恋していたが仕事はやり手だ。

登場人物それぞれに光を当て
じっくり描いてある。

ミネソタ州ダルースは
アメリカ北東部にあり、
湖と運河のある港湾都市である。

とても寒い都市のようだ。

1月の平均気温が-13,3度と言う事は
最低気温がぞっとするほど寒そうだ。


私には高校時代の友人で
自分の欲求を満たすためなら
何をしてもうしろめたさを感じない女性がいて
レイチェルに似ていると思った。

でも家庭の事情を知るにつけ、
彼女には彼女なりの事情があって
自己中心的に育つしか
なかったのかもしれないと思うようになった。

だからレイチェルが
欲望のまにまに生きている強い理由を
もう少し掘り下げて欲しかった。


頭が働かず、
読書には気力が必要なこの頃の私としては
この分厚い本をとても頑張って読んだのだ。

それなのにプロローグに書いてある事が
大きなヒントになって
何があったのか先読みしてしまい、
少々楽しみが薄れた。

でも読み応えは十分だった。

途中までは先読みしてしまったけれど、
ラストは見事に騙された。

確かに沢山の賞を取るだけの
読み応えだった。












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