射手座・山羊座・水瓶座

射手座◇Sagittarius
●夏の代表的星座
●21時に正中する時期 8月中旬
●銀河系の中心方向に位置し、星雲・星団が非常に豊富

 昔、腰から下が馬の怪人達が居ました。
彼らはケンタウルス族と呼ばれひどく乱暴で野蛮な種族でした。
 しかし彼らの中でケイローンだけは少し違っていました。
彼は大神ゼウスの父である、時の神クロノスとニンフ(妖精)フィリラとの間に生まれた子供でした。
クロノスがフィリラに会いに行く時、妃レアの目を誤魔化す為に馬に姿を変えて行った事から、
ケイローンは上半分が人間、下半分が馬の姿で生まれたのです。
 ケイローンは大変賢く、アポロン、アルテミスの兄妹神に愛されました。
アポロンは音楽、医術、予言の力をケイローンに与え、アルテミスは狩の技を教えました。
 やがてケイローンは、ペーリオン山の洞穴に住んで若い英雄達を次々に教育しました。
怪力ヘラクレスに戦いの技を教え、アポロンの息子アスクレーピオスを名医に育て上げたのもこのケイローンでした。
 その後ケイローンは、マレア半島に移り住みましたが、
このケイローンの家へある日突然三人のケンタウルス族が逃げ込んで来ました。
三人はなんと英雄ヘラクレスに追われていたのです。
実はヘラクレスが友人のケンタウルス族のポロスのもとを訪れた時の事、そこで美味しそうなお酒の瓶を見つけたのです。
お酒が大好きなヘラクレスは早速ポロスに酒をねだりました。
「駄目だよ、ヘラクレス。今酒の瓶を開けたら沢山のケンタウルスがやって来てみんな飲んでしまうよ」
 ポロスは断りましたが、
「大丈夫だ、俺がみんな追い払ってやるさ」と後にひきません。
仕方なくお酒を出してやるとポロスの心配どおり沢山のケンタウルス族が集まってきて、
「俺達にも酒を飲ませろ」と大騒ぎになりました。
お酒も入っていて勢いのついたヘラクレスは弓矢をたづさえると、
「やかましい!」と、騒いでいるケンタウルス族の中に踏み込んだのです。
そして次々に矢を射てケンタウルス達を殺し始めましたから、彼らは蜘蛛のこを散らす様に逃げ出しました。
その中の三人のケンタウルス達を追いかけてヘラクレスはマレア半島までやって来たのです。
 ケンタウルス達が一軒の家の中へ逃げ込んだのを見ると、後先を考えずに弓を引き絞り矢を放ちました。
矢は扉を打ち破り、一人のケンタウルスの腕を貫いて、なんとこの家の主人であるケイローンの膝にぐさりと突き刺さったのです。
 家の中へ飛び込んできたヘラクレスはこの光景を見て真っ青になりました。
「先生ー!!」
 ヘラクレスの矢にはヒドラの猛毒が塗ってありました。
どんな怪物も矢がかすっただけで死んでしまうという猛毒です。
たちまちケイローンは毒に犯され、苦しみもがき始めました。
 しかし、ケイローンは神様の子供。
不死身だったのです。
苦しんで、苦しんで・・・でも死ねませんでした。
 ケイローンの苦しみを見かねたヘラクレスは、神々の王であるゼウスに祈りケイローンの不死身を解いてもらいました。
ケイローンはようやく苦しみから解放され、安らかに死の国へ降りて行きましたが、
ケイローンの死を惜しんだ神ゼウスは、ケイローンの姿を星座にしてやりました。
これが射手座なのです。



山羊座◇Capricornus
●秋の星座
●21時に正中する時期 9月下旬
●射手座の東、巨大な下向きの三角形が目印

 山野の神で羊飼いの守り神パーンは伝令神ヘルメスの息子です。
上半分が人間、下半分が山羊の姿で、頭には山羊の角を持ち顔は髭だらけでしたから、見た目は不気味でした。
しかしとても陽気で、踊りが大好きな森の妖精達といつも戯れていました。
 このパーンがある時、ラドーン川の神の娘シュリンクスに恋をしてしまいました。
恋焦がれて偶然、野原で彼女の姿を見かけたパーンは彼女に走り寄ろうとしました。
しかし、無気味な姿の怪人が自分に向かって走ってくるのを見たシュリンクスは恐れをなして一目散に逃げ出しました。
野を越え山を越え、逃げても逃げてもパーンは追いかけて来ます。
そしてとうとうラドーン川の川岸に追い詰められてしまいました。
「お父様、助けて下さい!」
 すると、シュリンクスの姿は幻の様に消えて行き、彼女がさっきまで立っていた場所には見慣れない葦が風に揺れていました。
 せめてシュリンクスの思い出にとパーンはその葦を折って笛を作りました。
そして、片時も放さず持ち歩きしばしば彼女を思って笛を吹いていたといいます。
 みのパーンがある日ナイル川の辺で開かれた神々の宴会に参加しました。
勿論パーンもシュリンクスの笛を吹いて神々を楽しませていました。
その時突然、怪物テュフォンが乱入してきたのです。
神々は先を争って逃げ出し、パーンはナイル川に飛び込み魚に変身して逃げようとしたのですが、
あまりに慌てたので、下半分は魚になったものの上半分が山羊という妙な姿になってしまいました。
この姿が面白いと神々は大喜びし、記念にその姿を星座に加えました。
これが山羊座だといいます。



水瓶座◇Aquarius
●秋の星座
●21時に正中する時期 10月下旬
●ぺガスス座の南、三ツ矢の形に並んだ星々が目印

 神々の住むオリンポスの神殿では、食事の時、神食アンブロシアを皿に盛り分け、
神々の杯に神酒ネクタルを注いでまわるのはゼウスと妃ヘーラの娘で青春の女神ヘーベの役目でした。
しかしヘーベはゼウスの息子ヘラクレスの妻となった為、それも出来なくなりました。
ヘーベの代役に誰を任命するかゼウスは頭を痛めていました。
何しろヘーベはその体全体が光り輝く程に美しく、その為神々は一段と美味しく食事を楽しむ事が出来たからです。
 そんなある日、天上から下界を眺めていたゼウスは、トロイの王子ガニメーデスが羊を追っている姿を見つけました。
その姿はヘーベに勝るとも劣らず、
一目で気に入ったゼウスは鷹に姿を変えるとガニメーデスをつかんでオリンポスまで連れてきてしまいました。
 宮殿に着くとゼウスはその正体を現しました。
「恐がる事は無い。私は神々の王ゼウスだ。お前はこれから神々の杯に神酒ネクタルを注ぐ役目を務めるのだ。
 その代わりお前には永遠の若さと美しさを与えよう」と告げたのです。
 ガニメーデスは身に余る光栄でしたが、
ただ一つ心配だったのは自分が居なくなった事を両親がどんなに嘆き悲しんでいるか、という事でした。
 これを知ったゼウスはトロイの国王夫妻の元に伝令神ヘルメスを送りました。
事の次第を告げさせ、沢山の宝物を与えました。
そして、息子を失った悲しみを和らげようと、ガニメーデスの姿を星座にして空に上げてやりました。
こうして出来たのが水瓶座です。


黄道十二星座  魚座・牡羊座・牡牛座  双子座・蟹座・獅子座  乙女座・天秤座・蠍座


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