大魔王と悪魔

大魔王と悪魔

大魔王アンラ・マンユ

 ゾロアスター教は、世界に悪が厳然として存在する事実を認める勇気ある宗教です。
 アンラ・マンユは、「悪魔の中の悪魔」と称されます。
全ての悪しき存在、死、虚偽、凶暴などを司るのです。
ズルワン派の神学では、アフラ・マズダーとは対照的で、知恵がなく、醜悪で、無慈悲です。
しかも嫉妬深く、常に自分がアフラ・マズダーにとって代わることを狙っているのです。
人間の住むところには、数々の害毒を流し、多くの危険な動物や植物を創りました。
中でも死を持ち来たことは、彼の最も凶悪な犯罪です。
聖典アヴェスタによれば、アンラ・マンユは「悪しき光輪の所有者」、「悪しき性の者」、「奸悪なる者」、「悪行者」、「邪悪者」、「多殺者」、「悪漢」、「全殺者」等と称されます。
 支配下の多くの悪鬼と共に北方に住む彼は、人々を害さんとしています。
数多くの病を創り、心の中に悪意や無知、嫉妬や虚偽を持ち込み、正しき教法から人々を背かせようとするのです。
自然界の爬虫類や両生類などの醜悪な動物が飛びまわり、棘ある植物や毒草が繁殖するのも彼の仕業とされています。
古代イラン人の祖先が住んだ気候穏やかなアルヤナ・ワエージャフに、厳しい冬をもたらしたのも彼です。
この厳しい冬は、そこに住む人や動物の三分の二を殺し、残った人々は南方への移住を余儀なくされたのでした。
(古代に気候の変化が生じた歴史を語っていると思われます)

アンラの語源であるans-よりくるという説が強く、これは「敵対者なる霊」の意味です。
アンラ・マンユと直接対決するのは、アフラ・マズダーではなくスプンタ・マンユです。

 アフラ・マズダーは全知者であるのに対して、アンラ・マンユは無知なる者とされています。
それは、既に生じた事や、現在の事は知るのですが、未来について予知できないということなのです。
即ち、将来の悪に対する審判を予想できず、最終的には自己の滅亡のみある事を知らずして、悪を犯し続けるからです。


悪魔ダエーワ

大魔

 善なる王国のアムシャ・スプンタに相当する悪の王国の大魔がいます。
大天使と相反する大魔が個々にいるのです。

アカ・マナフ(悪思)・・・・・・ウォフ・マナフ(善思)
ドゥルジ(虚偽)・・・・・・・・・アシャ(正義)
サルワ(無秩序)・・・・・・・・クシャスラ(王国)
タローマティ(背教)・・・・・・アールマティ(敬虔)
タルウィ(熱)・・・・・・・・・・・・ハルワタート(完全)
ザリチュ(渇)・・・・・・・・・・・・アムルタート(不滅)


ゾロアスター教  最高神アフラ・マズダー  大天使と天使  アムシャ・スプンタ  ヤザタ  悪魔の軍団  聖火と真言


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