聖火と真言

聖火と真言

聖火

 ゾロアスター教にとって火は神聖です。
拝火教とも呼ばれます。
火は古代イラン人の祖先が遊牧民族であったことに大きく関わっています。
遊牧民族にとって火は、寒冷な気候のもとで暖を与え、獰猛な動物から生命を護ってくれるものでした。
この大切な火を護るのは、家長の務めでした。
また、炎は常に天上に向かい、あたかも生きているかのように常に形を変え、不気味な闇みを遠ざけてくれるものです。
 ゾロアスター教では、火を教養の中心であるアシャ(正義)の象徴と見なします。
これは、善・悪の分かつ神聖裁判に古代イラン人が火を用いたことと関係します。
火は、被造物の生命であるとも言われています。
 創造から終末までの全ての歴史、すなわち人間と世界の運命は、燃える火の中に啓示されると考えます。
なぜなら、世界の創造は白火の中で始まり、その終末は大火により流出した熔鉱で浄化とされるからです。

 三種の聖火というのがあったとされます。
一つはファールス地方のカーイヤーンにあったとされるファッローバーグ火
二つ目はアゼルバイジャンのシーズに祭られたグシュナプス火
三つ目はホラサンのラーヴァント山に燃えるブルゼーンミフル火です。
それぞれ聖職者、武士、庶民階級に割り当てられていました。

 ゾロアスター教徒の末裔である現在のパールシーも、火を三つのランクに分けます。
これはササン朝時代の「州の火」、「村の火」、「家の火」に起源し、
バフラームの火アーダラーンの火ダードガーハの火と称されます。
順にダストゥール(大司祭)、モーベト(司祭)、俗人が祭ることができるのです。

 最も神聖なバフラームの火は、気の遠くなるような儀式を行って火を合成します。
 1、死体を焼く火
 2、染物業者の火
 3、王者の火
 4、陶工の火
 5、煉瓦造りの火
 6、苦行者の火
 7、金細工師の火
 8、貨幣鋳造の火
 9、鍛冶屋の火
10、武具師の火
11、パン焼きの火
12、醸造家の火(または偶像崇拝者の火)
13、戦士の火(または旅人の火)
14、牧人の火
15、電光の火
16、ゾロアスター教徒の家の火
以上の十六種の火をもって合成します。


真言=マンスラ

 密教は真言宗と言われるように、真言(呪)を重視します。
真言はサンスクリット語でマンスラと呼ばれ、その起源は古代インドの「ヴェーダ」にあります。
「ヴェーダ」の本集サンヒターを構成する讃歌、呪文を指定してマントラと言うのです。
マントラは、神から聖仙に直接啓示されたものであり、それを唱える者に神秘的な力を賦与すると信じられたのです。
 マントラの性格は、そっくりそのままゾロアスター教のマンスラに当てはまります。
有名なものは、アフナ・ワルヤアシュム・ウォフーイェンヘー・ハータームの、いわゆる三大呪です。
中でも、アフナ・ワルヤは最も重要視され、教徒達は自らの身に危険を感じた際に、
この真言マンスラを唱えて、神の加護を祈ります。
アフナ・ワルヤを三分の一唱えると、悪魔は恐怖に駆られ、
その三分の二が唱えられると地に倒れ、全部唱えられるや悪魔は無力になると言われています。


アフナ・ワルヤ

ヤサー アフー ワルヨー、 アサー ラトゥシュ アシャート
チート ハチャー、 ワンヘーウシュ ダズダー マナンホー、
シャオスナナーム アンヘーウシュ マズダーイ、
クシャスレムチャー アフラーイ アー、
イム ドリグブョー ダダト バースターレム。


 選取されるべき主として、そのように裁き人は正義と共にある、
善思の教えの人として、世の行為をマズダーの為に(なるべく指導し)、
アフラの為に王国を(建設する)、
そのような者を貧者の為の保護者とせん事を。


イェンヘー・ハーターム

 在する者たちの中で、どの男性が祭祀において優れたものであるか、
天則(アシャ)により、アフラ・マズダーは知り給う、
同様にどの女性がそうであるかも(マズダーは知り給う)、
かかる男性や女性を、我々は祭る。


ゾロアスター教  最高神アフラ・マズダー  アフラ・マズダー  アムシャ・スプンタ  ヤザタ  大魔王と悪魔  悪魔の軍団


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