アイスワインが思うワイン持ち込みのマナー

★ワイン持込のマナー<プロローグ>

ご予約のお電話で、「ワインを持ち込みたいのですが」というご要望を時折頂戴します。
イーネ・イーネは、「持ち込みOK」なお店なので、簡単な料金システムをお話して、ご要望の方の90%位は、ご了解頂いてご予約なされます。

この店のオーナーであるアイスワイン(私)も、お店を始める前は、ワインを持ち込んで異業種交流会の幹事を5年ほどやっていました。
持ち込みの了解を頂くのにけっこう困った経験があります。条件、料金、時間などなど。
そして、とあるビストロにお問い合わせをして以来、その店で必ずやるようになりました。

その店は、マダムがオーナーで料理人1~2名という小さなお店ですが、時には怒られ、時には励まされて5年にも及ぶ会を続けられました。そのうち、この異業種交流会の輪も広がり、ホスト役として楽しんでいただく喜びと小さな自信を頂く事が出来たことが、イーネ・イーネに続く自分のモチベーションの原点ともなっています。
本当に、この会を続けていけなかったら、今の店はないでしょう。

この市谷の店は、当時から、そして、今でも、持込ワイン会の有名なメッカだろう、と思います。当時も沢山のワイン会の予約が入っていました。他のワイン会のメンバーの方ともお会いして、マダムと様々なお話を交わすことで、持ち込みOKといえども、根底にあるマナーについて、理解を深めることが出来てまいりました。

今、お持ち込みになるお客様について、お店の側からすると、「いかがなものかな」、と思うような「出会い」が多くなってきています。
会話ではない、ネットなどでの「文字情報」では、言葉足らずの事もありましょうし、ひとつの言葉への反応も、様々でしょうから、書く事への恐い気持ちで一杯です。

お持ち込みのお客様がイヤなら断ればいいではないか、持込料金を払っているのだから、店だって、儲かっているし、料理だって金を払っているんだから、そんな事は言えないだろう、という事もあるでしょう。

ここまでの前置きで触れましたように、アイスワイン(私)は、持ち込みOKの店で育てていただきましたから、恩返しも含めて、この店を持ち込みNOにはしたくありません。
ですので、今までの経験から、ワインを持ち込みされるときには、その背景や、このような事を店は見ている、考えている、ということをそのままにお伝えしたいと思います。



★ワイン持ち込みのマナー<歴史的、日本的背景>

いきなり本論に入る前に、飲食店にお料理、お飲み物などを持ち込む、ということに関して思うことがあります。
皆さんは、ワイン持ち込み以外のお酒を飲食店に持ち込まれたことがありますか?
アイスワイン(私)は、数回しかありません。
出張などで遠出をしたときに、地元の地酒や焼酎を仕入れて、おなじみのお店に伺ったことが何回かあります。まあ、手土産ですね。

そういう店では、他の常連の方に、お土産のお酒やら食べ物を分けていただいたことがあります。料金システムも、一回入店したら、何をどれだけ飲んでも5000円というお店でしたから(バーのような)お店のママも一緒に楽しく飲んで、もち、みんな5000円払っていきました。

このような常連さんで固まっているようなお店というのは、別に何を持ち込もうがOKであると、同時に、持ち込み料金ということもなく、店の酒を飲んだとしたらいくらだから、その分も払うとか、少しまけてあげる、とか、あうん、の料金システムがあるのだと思います。

つまり、お店への酒の差し入れで、店主や他のお客様と一緒に飲み話題をついばみ、共に楽しむ、というのが、日本の歴史的な背景としてある、と思います。

ですので、チェーン店とかに持ち込む、というのは、実際想像したこともなく、ほとんどありえないことでしょうし、持ち込むお酒にしても、まさか大五郎とか箱の酒など、ということもありえないわけです。
つまり「なまじっかな方法では手に入らない」から持ち込みが許される、ということでしょう。

西洋料理の場合はどうでしょうか。
本格レストランなどで、持ち込みNOの店であっても、まず絶対お持ち込みをお断りしないケースとしては、日本とほぼ同じであると思います。
レストランというのは、基本的にカップルでのご利用ということになりますが、お二人にとってはメモリアルなワイン(旅行で購入した)といったようにたとえ世間で売っていたとしても「お店側の仕入では、絶対に手に入らない世の中に二つとない」ワインは、確実に持ち込めます。しかし、どなたでも、ということにはならないと思います。
お店にとっての大事なお客様の場合、お断りする理由もまた全くありません。
むしろ、大事なワインを今宵弊店であけてくださることを感謝するでしょう。



★ワイン持ち込みのマナー<BYO>

「Bring Your Own」こういうお店は日本ではまだまだ少ないですが、海外では見かけることが多くなりました。
2005年春、アイスワイン(私)が、オーストラリアへ三週間のワイナリー研修ツアーで行ったとき、その日一日中ワイナリーを回って、夜は、昼間開けていただいたワインを持ち込んでレストランに日々行ったものです。
予約も何もなく、入ったお店(高級ではなく、居酒屋のようなカジュアルな感じ)で、ワインを見せてグラスをもらう、お店の方もなんとも思わずグラスをくださる。
フシギなシステムだな、と思いました。

詳しくはわからないのですが、オーストラリアの場合、お店でお酒を仕入れて売る許可を得ることが難しいらしく、そういうシステムなのだそうです。
もちろん、ワインを専門に扱うバーもありまして、そういう所は、きちんとしたリストが用意されていますし、そこに行くときは持ち込みなどしませんでした。

料金体系については、日本と一概には論じられないかもしれません。日本では飲食店が立地されるような繁華街の地価はとても高く、人件費もこの業界はきつい労働にあたるのでかなり高いものですから、日本ではすぐにマネのできないことかもしれません。

あ、あと、オーストラリアに限らず、お水はバンバン出てきますが、ちゃんと値段は取られてしまいます。それもかなり高い。
よく海外経験の長い方からのオーダーで「水道水の水をください」と言われることがありますが、海外では、何も言わなければ有料ですものね。

また、最近では、お酒の小売店と飲食店が併設されているケースは多くなりましたね。小売店で買って、いくらかを上乗せして飲食店に持ち込んで飲む、というもの。
まだ、数は少ないかもしれませんが、酒問屋さんがお店を開いていて、そこで扱うワインの定価が表示されていて、そのプラス1000円で飲める、というお店も知っています。

お店の側は、実はしっかりと利益を頂いているのですが、お客様には良心的に思われる(思わせる?)いいシステムなのかもしれません。
さて、それでは、本論に入りましょうか。




★ワイン持ち込みのマナー<一見さんお断りの究極のサービス>

え?と思われましたか?
実は、本論は、この一行ですべてが終わってしまうようなことなのです。

でも、それじゃ、折角ここまで読んだのに、なんなのよ!とクレームがつきそうですから、もう少し詳しくお話しましょう。

先にも書きましたように、アイスワイン(私)の知っている限り、飲食店へのお持ち込みが歓迎されるのは、常連さんや、お店にとって大事なお客様に限られます。
だって、基本は店主と飲みあったり、また、レストランでも、もうひとつグラスをお持ち下さい、一緒に味わいましょう、とお客様がソムリエなりに言うのが礼儀です。
(この礼儀、も、マナーのひとつ、知らないと恥をかきます)
この「喜びを共に味わいましょう」、ということが、お持ち込みの大基本であるべきなのです。

持ち込みを認めてくださった市谷のビストロのマダムの出したOKの条件はただひとつ
「あたしも一緒に飲みます」でした。

では、初めてのお店、それも持ち込みOKとなっている店も、店のホンネは、本当は持ち込みなどお断りなの?という疑問がわきますよね。

実は違うのです。
お店にとって、常連さんや(これまで)大事なお客様は、過去、お店を愛してくださった方々ですが、今回、初めてワインのお持ち込みになられて、これから、大事なお客様になられる可能性がある方は歓迎なわけです。「お持ち込みの心得」のわかっている方は、ワイン、お仲間だけではなく、お店も大切にしてくださるからです。

え?わかりにくい?ですか?
一見さん、じゃ、なくなればいいのです。早い話。
これは、次にもお話しますが、ワインを当日ではなく、前日以前に、持って行かれて、そこでお店の方に預けて、ちょっとでも、お話をすれば、すでにそれは、一見さんではなくなるのです。

キリスト教の結婚式と一緒です。信者じゃなくても、前もって礼拝を受ければ、神父さんは誰にも平等に慈愛に満ちた式を取り計らってくださるわけです。
それと同じ。人の心、なのです。



★ワイン持ち込みのマナー<当日に持っていかない>

ワインは生き物です。他のお酒と大きく違う点はここです。
ワインは瓶の中で熟成を続けています。つまり成長し、場合によっては老化しています。
他のお酒は、瓶に詰められた後は基本的には変化しません。
ワインは有機酸とアルコールのエステル化反応で、香りの成分が合成されます。

よく、海外で美味しかったので、ワインをお土産に買って帰ったら、その時より美味しくなくなっていた、というお話をお聞きします。
もちろん、旅行中の高揚とした気分環境の中での味わいや料理との相性、気候条件といった、いつもの日本でのシチュエーションとの差もあるかもしれません。ただ、気分だけではないのも事実です。

ワインの保存には色々とうんちく、解説がありますが、この話題に限って言いますと、
★ ワインは振動に弱い
★ ワインは日光、紫外線に弱い
この2つは、実験で証明されている事実です。

つまり、長い旅行中などで揺すられていると味が落ちる。紫外線などないと思う室内でも蛍光灯から発する紫外線でも、ワインは傷つきます。
それほどのデリケートな生き物なのです。
若い女性のハートなどより一万倍は、デリケートです^^)
若くない女性のハートは?などと、突っ込まないように。。。

そのデリケートなワインを、持ち込んで、いきなり開栓して飲む、という行為は、ワインにとっては、できるなら勘弁してよ、という状態になっています。
ワインを愛する方は、そのような行動をとるはずがない、というのが、プロの見方です。

また、年代物、長期熟成保存が利くワインは、澱が発生しています。(赤ワインに多いですが)澱は、タンニン質(渋み)が熟成中に凝固したもので、結晶の大きなものもあれば、ゆらゆらと漂う微細なものもあります。現在は、数千円くらいのワインでは、澱はワイナリーサイドで強制的に落としてから瓶詰めされますので(クレームになるそうです)これは限られたワインのお話ですが。

ワインを飲食店に持ち込む以上、そのワインが最高に良い状態で飲もう、ということでしょうから、疲れたワインを休ませ、澱を沈ませ、適温にして開栓する、ということを考えると、一週間くらいは必要と思います。最悪前日でしょう。



★ワイン持ち込みのマナー
   <料理はワインに合わせる~現実の持ち込みを考える>

こうして、ご利用なされていなくても、お店の担当の者と幹事さんがお会いして、さらに前もってワインをお預かりすれば、当日のご予算、会の目的に応じて、料理のメニューを考えるのは、プロの料理人の十八番、オハコです。

弊店でも、前もってお預かりしておけば、お任せメニュー(にしていただいておりますが)の内容をどうするか、と考えます。
赤ワインが多ければ、肉料理をどうアレンジしようか、とか。

しかし、ここで、ハタ、と困ることが最近多々あります。
実際、このようなお持ち込みの経緯をたどるケースが少ない、ということです。

一言で言いますと「持ち寄りパーティー」というのが増えているのが現状でしょう。

一人1本なんでもいいから持ち寄って、それを仲間に紹介しながら飲み合う会。
これは、本来は、ホームパーティーの趣向です。
または、どなたかの主催するパーティーや個展にお招き頂いて、そちらへの手土産兼飲み代負担のような形が、いつのまにか、飲食店で開催される、ワイン愛好家の方々の仲間内パーティーになっているケースが多いようです。

この場合、まず当然、幹事さんは、どんなワインが集まるかわからないし、ましてや前もってお店に預ける、というようなことは不可能でしょう。

お持ちよりのワインも、メモリアル、というものではなく、どんな個性的なワインを選ぶか、あるいは、テーマ(今回はピノノワールの会とか)に沿ったワインをピックアップするか、に、関心が行ってしまうのでしょう。
実際そういうアドバイスを求められる事もありますし。

では、次回からは、現実に即した形で進行していきましょうか。



★ワイン持ち込みのマナー
     <酒屋で買ったまま持って入るのは避けましょう>

アイスワイン(私)だけかもしれませんが、お店に、ワインを購入した包装紙、紙袋のまま、ワインを持ってこられるとがっかりします。
ああ、このワイン会は、みんなで趣向を凝らしてワインを前もって用意しておいて今日のために自宅から持ってきたものではなく、予算の範囲内で、近場で、限られた時間で、ささっと用意してきたものの寄せ集めの会なのだ、と思います。

はっきり言うと、安く上げよう、という会なのだ、と思います。

ご自分の持ってきたワインが、どれだけ良いワインか、ということを仲間内に知っていただきたい、と思うなら、購入店がわかるようなままでは持って来れないでしょう。

アイスワイン(私)もかつては、色々な会合にワインを持参しましたが、(当然私はプロですから)自分のセラーに眠っているワインの中から、今日の主催者の嗜好やメンバーの顔ぶれを見て選んでいましたし、できるだけすぐ飲める適温にして持っていきました。
よしんば、外で買って持って行かなくてはならない状況でも、箱や袋はそのために用意したものを持ってでかけたものです。

最近立て続けに多いのは、恵比寿ガーデンプレイスにあるワインマーケットパーティーの紙袋からワインを取り出して、私に預けるケース。そして、そのワインが、ごく普通の大手ワイナリーのありふれた製品。

正直な気持ち、そのワインを手渡されても、全くうれしくありません。平手打ちされたような気分になってしまいます。なぜなら、そのワインは、弊店でも簡単に仕入れられるものだからです。いえ、大手ワイナリーの製品など間違っても仕入れませんけれど。

弊店で仕入れて、弊店なりの売価でご提供するよりも、持ち込みの代金を払っても、その方が安く上がる、ということをお考え(そう思いたくないですが)でしたら、悲しいことですね。
「ワインに関しては、あなたとこの店とは、コミニュケーションを取りません、開けてグラスをよこせば、それでいいのよ、だから持ち込み料金を払っているのでしょ」、と絶縁されたような気分になります。




★ワイン持ち込みのマナー<お店のワインリストは調べましょう>

かつて、お持ち込みになられた方がこうおっしゃいました。
「この赤のスパークリングワイン、珍しいと思ったので持ちこまさせていただきました」
確かに、オーストラリアの赤のスパークリングワインは、ここ数年のハヤリの兆しがあります。ヨーロッパの赤は、シャンメリ?のように、甘くてジュースのようなものが多いのですが、オーストラリアの赤は果実味に富んでいますが、ドライなタイプ、という変り種でもあります。

おや?と思いますか?
ま、ソムリエなんだから、その位の情報は持っているのが当然、と思われるでしょう。
でも、違うのです。
オーストラリアの赤のスパークリングワインは、弊店ではオープン以来常備しています。
このお客様は初めての方でしたが、結局お店のリストは全くご覧になりませんでした。
弊店にとっては、赤のスパークリングワインは珍しくもなんともないのです。

前の方で書きましたけれど、たとえ、持ち込みがOKだったとしても、大五郎(大五郎ファンには申し訳ありません)やハコの酒を持ち込んだりはしませんよね。
でも、ワインに関しては、常日頃皆様は接していらっしゃらないからお分かりにならないと思いますが、ワインを扱うプロの目から見ると、見た瞬間に、このワインが幾ら位か、どのレベルで、弊店で言うとどのクラスに該当するか、ということはわかります。

最近はネットでも飲食店はHPを公開していますし、代表的なワインとその価格は表記しています。弊店は、さらに、そのリストのすべてをご覧になることができます。
ワインをお持ち込みになるときは、かなり古いヴィンテージのレベルは別として、その店の銘柄とガチンコするワインは避けた方がよろしいと思います。

また、そのお店のボトルリストの最低のランクのワインよりも価格の安いワイン(大体お店のリストの二分の一から三分の一以下で入手できるもの)は、これも避けた方がよろしいかと思います。冗談ではなく、「カラオケ屋さんで、焼きうどんと食べたらよろしいのでは」と思うケースが決してないわけではありません。

お一人1本という持ち込みでは、飲みきるのも大変かもしれません。
ただ、折角、何かのご縁で今宵一緒にさせていただいたのですから、お店のワインリストを見て、一番のお勧めワインを1本でも購入して飲むことも礼儀かと思います。
幹事さんは、そのあたりをご予算に含めていただくと、正直うれしく、そして、ありがたく思います。



★ワイン持ち込みのマナー<一杯目はお店に>

先に書きましたようなことは、お持ち込みマナーとしては大抵がオーソライズされていることだろう、と思います。
弊店に限らず、どこでも、そうしていただきたい、と思っていることでしょう。

ただ、ここからは、ちょっと書きづらくなります。
アイスワイン(私)が、お店を始める前に、何かで成文化しておけばよかった、と思うのも、ここからの部分だからです。

今日、今宵のパーティーは、もちろん、お客様のためにあります。
お客様が主役なわけです。
でも、お店は、皆様のために気を配っております。
単なるグラスやさんでもお料理を載せてお出ししている仕出屋さんだけでもありません。

それならば、本当に、カラオケやさんで、出前をとればよい、と思います。
もっと安くあがります。

私たちは、裏方ですけれど、このパーティーに参加をしています。
「私たち」というのは、アイスワイン(私)とイーネ・イーネ(店)の両方。さらには
お手伝いをお願いする場合、その従業員も、です。

ご自身、皆様が味を分け合って楽しむ、その余韻は、ワインやお料理だけでなく、五感に感じられる雰囲気が役割を担っています。イス、調度品、BGM、いらんかもしれませんが店主のキャラクター。

どうか、その雰囲気に感謝する、という気持ちを持っていただければ、と思います。
店主に一杯あげればいいのか、と、即物的なことではなく、(一杯もいただかなくてもけっこうです)今宵、よきお仲間が集まって、会を催すことのできる幸せを、感謝を込めて乾杯をしていただきたい、と思います。
その気持ちの一部を店のためにお示しいただければ、私たちは、今日はいいお客様に恵まれて幸せを共有させていただいた、と、とてもうれしくなります。
さらに、メンバーの方が、アイスワイン(私)を捕まえて、このワイン、どうですう?私がこれが一番!と思っているニュージーランドのピノノワールです、と感想を聞きだそうとされたりしますと、一緒に味見をさせていただいて、ちょっとプロっぽいご返事をさせていただくこともございました。お店を利用してご自身の知識の向上にもなると思います。



★ワイン持ち込みのマナー<エピローグ>

マナー、礼儀、というのは、どの世界でも難しいものです。
ただ、作法、とは違って、わかりやすいのは、形ではなく気持ち、ということでしょう。
デジタル化が進んだ今の時代だからこそ、人は、人どうし、アナログの世界で癒されます。
人が人と関わるから、(色々面倒もございますが)生きていて楽しいのかな。

これまで書いてきたことは、1989年に初めてソムリエという職業とフランスのとあるビストロでの出会いからスタートしています。

仕事の最終日に立ち寄ったビストロで、私たち4人は、着席してすぐさまワインと料理をオーダーして会話に夢中になっておりました。
ふと、お隣のテーブルを見ると、私たちよりも前に席についている老夫婦が、熱心にウェイターと思しき方と話しこんでいるのではないですか。
不思議に思った私はメンバーのパリ駐在の方にお聞きしました。
「あのご夫婦は何を話しているのですか?」
「ああ、今選んだお料理に、どんなワインが合うのか、ソムリエと話しているのですよ。それが楽しみでいらしているのですね」

衝撃を受けました。
アイスワイン(私)は、飲食店というのは、日本のように、ウェイターはお料理を運ぶだけで、何もしないもの、と思っていたからです。

さらに、辻静雄さんの本を読み進めていくうちに、
「レストラン」とは「健康な方の行く病院」である。
本当に具合の悪い方は病院に行くしかないが、健康な方はレストランでレスト(休息)をして、お食事、お店との会話を通じて癒されてリフレッシュして、明日を元気に生きる源にしている、ということがわかりました。ソムリエは黒子であるけれど、場のエンターテイナーである、ということも。
日本に帰って、本業?はそっちのけにして、ソムリエになりたい!なるんだ!!と思って勉強を始めました。ワインなどこれっぽっちも好きではありませんでしたけど(苦笑)

ここで書きましたことは、アイスワイン(私)の主観ですので、他のお店では違う考え方、かもしれません。あくまでも、ご参考になさっていただけたら、私は幸せ者でございます。長々読んでいただきありがとうございました。
では「今宵もワインを楽しんで明日を輝きましょう」これがイーネ・イーネとアイスワイン(私)の原点です。


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