完璧なる子作り計画!? ハイスペック宰相閣下が「お前をお母さんにしてやろうか」と求婚してきました
2024年2月刊蜜猫文庫著者:あさぎ千代春さん美貌の有能宰相リュシアンの侍女である男爵令嬢のビアンカは病気の父に死ぬまでに孫が見たい、と言われ悩んでいた。話を聞いたリュシアンが「僕がお母さんにしてあげましょうか」とまさかの求婚。すれ違いもあったが二人は結婚をし、甘く蕩けるような蜜月を堪能する。幸せの最中リュシアンが王命を受け他国へと旅立つ事に。しかし帰国の日になっても彼が帰ってこない。事件の可能性を考え、ビアンカは彼を捜しに行く事に!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ビアンカ=貧乏男爵の娘。困窮する家の為に王宮で働いている。 リュシアン=宰相。利害関係の一致でビアンカに求婚する ランベーズ=ネルキア国国王。事業の失敗により没落してしまったシエルラ男爵家。父は体を壊して、ほぼ寝たきりになってしまい、家計を支えるために一人娘のビアンカは3年ほど前から王宮で侍女として働いていた。働きが認められ、有能宰相として有名なリュシアン付きの侍女になってからは給金も上がって益々張り切る娘に、父はデビュタントもしてやれなかったと詫びた。そんな父から、「生きている間に孫の顔を見たい」と言われ、ビアンカは思い悩むように。なにせシエルラ家は生活するだけで精一杯。父の希望は叶えてあげたいけれど、結婚するには花嫁側も持参金という名の大金を用意しなければならない。社交界デビューもしていないので縁談の打診も無いし、運良く身一つでも良いと言う話が来ても親より年上の貴族の後添えだったりするので逆に父が心配しそうだ。仕事は完璧にこなしてはいても、いつもと様子の違う彼女に気付き、リュシアンが理由を尋ねると、病気ですっかり気落ちした父から孫の顔が見たいと頼まれまして、と正直に話すと彼は少し考えこんで、では僕と結婚しますか?と告げられビアンカはビックリ。20年前、前王の圧政で傾いていたこの国を、現国王・ランベーズと共に見事に立て直したリュシアンはその働きで伯爵位とガルシアの領地を賜った。侯爵家の次男でもある彼は引く手あまたで縁談の話も数えきれないほどあったそうだが、そんな暇があるなら、未だに残る前王の負の遺産を一つでも失くすべきと取り合わず、38歳になる今でも独り身だった。そんな彼がどうして貧乏貴族の娘と結婚を?聞けば、流石に40手前にもなって女の影も無いリュシアンのことをランベーズが心配し、結婚をせっついたのだと言う。いつもの調子で跳ね除けたら、言うことを聞かないならお前の花嫁候補を集めた舞踏会を毎週開催すると脅され、結婚に本腰を入れると約束せざるを得なかったと言う。その話が出たのが昨夜のこと。そして先程ビアンカの悩みを聞いてここに相手がいたっと思ったらしい。彼女は真面目で性格も良いし細やかな気遣いも出来る。少々歳の差はあるが貴族社会の結婚では別段珍しくも無い。「僕が君をお母さんにしてあげます」リュシアンはそう言って微笑んだ。何の冗談かと思ったが、よくよく思えば真面目一辺倒の彼がそんな冗談を言うはずもない。10日後、シエルラ領までやって来たリュシアンはビアンカと結婚したいと父に挨拶。父は宰相閣下がうちの娘を妻に望んでくださったと泣いて喜んでいて、ビアンカもリュシアンに感謝していた。多分、利害関係が一致しての契約婚みたいな関係になるんだろうけれど、それでも彼に精一杯尽くそうと決意。侍女の仕事は辞職し、王宮近くの邸で暮らすことになったビアンカ。急な事だったので、ガーデンパーティーを開き、それを披露宴代わりにした。気になっていたリュシアンの父・ファルケ侯爵からも歓迎されホッとしたのも束の間。いよいよ初夜を迎え心臓はバクバク。元々、父に孫の顔を見せたくて決めた結婚だ、夫婦の営みは避けて通れない。しかし、その容姿から百戦錬磨だと思われたリュシアンは妙に焦っていて、見かねて手を貸そうとしたビアンカに触られた瞬間に爆発。初夜は失敗に終わってしまった。以降、リュシアンは仕事を理由に帰ってくるのはいつも午前様。まさか、あの夜のことを気にして顔を合わせたくないのかと、彼と関係を深めようと疲労感を無くすためと称しオイルマッサージを少々強引に施したが、リュシアンは赤面するばかりでビアンカの顔をまともに見ない。これはまさか嫌われた?落ち込む彼女に僕は悪くないと意地を張っていたリュシアンは自らの過去を思い起こしていた。ファルケ侯爵の亡き妹・アニエスの子という体で侯爵家の養子になった彼は、実は教会で育った孤児だった。高級娼婦だった実母が彼を産んで姿を消し、3歳まで教会にいたが、実子を突然死で亡くしたアニエスが精神を病み衰弱して行くのを心配した侯爵が甥に似たリュシアンを引き取った。アニエスは彼を息子と思い込むことで一時持ち直し、その後眠るように息を引き取った。お役御免かと思われたリュシアンはその後ファルケ侯爵家の養子になり、その類まれな頭脳で今の地位まで登り詰めたのであった。アニエスの子であるリュシアンであれ。それは3歳の頃から自らの心に課していたこと。だから自らの行動はいつも正しいし失敗はあり得ない。初夜が上手くいかなかったのはビアンカが余計な事をしたからだ。だが、段々その考えが揺らぎ始めている。新婚旅行先で喧嘩し、離婚の危機と流石に慌てた彼は意を決して自分が童貞だとビアンカに打ち明けた。いかにもモテそうな彼が童貞?彼女も驚いていたけれど、ならお互い初めて同志、一緒に勉強しましょうというビアンカの言葉に納得。その夜、二人は漸く初夜に成功したのだった。蜜月を過ごす二人。だがいつも自分が先に終わってしまうこと、なのに毎日彼女を求めてしまうと言う相談にランベーズも困り顔。なら一旦距離を置いてみろ、とリンデ公国から依頼された講師の話を受けることに。期間は一ヶ月。それくらいあれば頭も冷えるのでは。たった一ヶ月、耐えられないはずがない。そう高をくくっていたのも束の間、2週間もすると屋敷に帰りたくて仕方ない。だがあともう少しの我慢。いよいよ明後日には帰国となった日、恩師でもあるエーリクからある話を聞いた。40年近く前、大公のお気に入りの愛人であった高級娼婦が身重のまま姿を消したこと、君が小指にしている指輪は彼女が大公から贈られた希少な鉱物で作られたものだと聞いた彼はここにきて自分の出自を知らされたのだ。やけにしつこく講師に来てくれと依頼があったはずだ。彼はその容姿と指輪から素性を調査されていたのだろう。大公も大病を患って退位が決まり、アルフォンスという公子が戴冠する予定だ。大公は優秀なリュシアンにその補佐をして貰いたいと希望しているそうで、彼をネルキアに返すつもりはないとのこと。思いもよらぬ事態に帰国できなくなった彼を心配したビアンカはランベーズの手を借りてリンデ公国に潜り込み・・・。頭は良くても色々不器用なヒーロー・リュシアンの方が主人公ポジかな?って印象の今作。38歳にて自らの出自を知っても、彼はどうあってもファルケ侯爵家の次男で、ネルキア国の宰相。本当の家族が見つかったのは嬉しい、異母弟のアルフォンスが自分を頼ってくれるのも。でも、自分の居場所はビアンカの隣。早く妻の元に帰りたい。悶々とする彼を救うためにビアンカは大公の城に潜入し、図らずも夫の出生の秘密を耳にしてしまいます。何が彼の幸せなのか。思い悩む彼女はそれでもその本心を聞きたいと、大公家主催の舞踏会に出席。そこで漸く会えたリュシアンは、持ち前の頭脳で大公の顔を潰すことなく国交間の関係にもひびが入らぬような策を実行するのでした。企みは上手く行き、ビアンカ共々帰国したリュシアンが、妻との新婚生活を満喫している様子が描かれて物語は幕。色々めんどくさい人でしたが、頭が良いからこそかなと思ったり。評価:★★★★☆