社宅暮らし(2)
最初にその部屋を見たときは、卒倒しそうになりました。あまりの古さ、キタナさに・・・俺ぁ、ついに妻子をこんなとこに住ませてしまう男になったのかと。でも仕方ない。現状はキビシイ金欠状態。なんといっても、家賃が9千円!以前のアパートが7万6千円だったから、水準として1/8になったと思えば全然オッケー(?)。しかも、職場が近い!徒歩2分!・・・そんな言い訳のような自問自答を繰り返してました。けれど、案ずるより産むが易し。とはよく言ったものです。この宿舎にはとても素晴らしいもの、そう、コミュニティがあったんです。ある日のこと。ちょいと珍しく、明るいうちに家に帰りました。団地にさしかかったとき、0歳から4歳までの子供たちが5、6人走り回ってるのが見えました。私を見つけて「父さ~んっ!」と駆け寄る息子。可愛い。それを見ていた他の子たちまで、「誰?ななくん(うちの子は、ななきといいます)のお父さん!?わーいっ!」とか叫びつつ、全身にまとわりつくまとわりつく。膝、腕、肩、背、そして頭の上にまで子供たちでいっぱい。なんとも幸せな体験をしてしまったのです。その様子を観ながら何やら囁く奥さまたち。初体験だとおっかねぇ(笑)子供の基地になった私ぁ、まるで見世物のようでしたが、子供がたくさんいるからそれでもオッケー(?)しばし子供たちと遊び呆けてました。さすがに体力の限界を超え、逃げるように我が新居の鍵を開けようとすると・・・なんと!鍵が開けっ放し!女房いわく「こんな安全なとこに住んでるのに、鍵かける必要ない」らしいんです。へー。こいつぁ驚いた。おまえがそんなこと言うなんて。だけど、そりゃそうだ。こんなにたくさんの奥さま方と子供の眼がある団地なんて、ドロボーはおろか、住民だって入り難いよ(笑)これって結構、俺がコムース氏と共に実現したいと願う、コーポラティブハウスに近いもんがあるじゃないか。ここには、何か理屈ではない連帯感がある。別に同じ職場だからって知り合いなわけじゃない。だけど、それ(同業)ってのも何か良い方に働いてるんだろうか。この、異様な空気、環境はかなり居心地がいい。部屋がボロいのを笑い飛ばせるくらいに。面白い。よその子だって、かまわず遊んだりかまわず叱ったり。気を使うとこだってあるけど、そりゃあもうお互いさま。そう。失ったものを取り戻すような感じ。連帯感ってのは謎の存在だけど、連帯感ってのは絶対に居心地がいい。人間なんて、どうせ独りでは生きられないんだから、皆で生きた方が気持ちいいじゃないか。そう思える、ステキな団地暮らしでした。今のアパートは新しく、何の不足もないはずなのに、やっぱり何かが足りないような気がしてます。