源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ20〕
源氏物語〔2帖帚木 ははきぎ20〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語2帖帚木の研鑽」を公開してます。反対に歯がゆいような女でも、気にいるならばそれでいいし、前生の縁というものもあるから、男から言えばあるがままの女でいいと思う。これで式部丞が口をつぐもうとしたのを見て、頭中将は今の話の続きをさせようと、とてもおもしろい女じゃないかと言うと、その気持ちが分かっていながら式部丞は、自身をばかにしたように話す。その女の所へ長い間行かないでいたころに、その近辺に用のついでに立ち寄ると、平生の居間の中へは入れない。物越しに席を作って座らせ、嫌味を言おうと思っているのかと思ったが、賢女なので軽々しく嫉妬などしない。人情にもよく通じ恨んだりもせず高い声で、この数カ月以来、重い風邪に堪えかね高熱のためニンニクの草薬を煎じ服し、それで薬草臭いのでお目にかかれません。何か急な用があれば承りますと尤もらしく言ので、ばかばかしくて、私はただ承知しましたと言い帰ろうとしたが、この臭いが無くなる頃に、立ち寄って下さいと大きな声で言うので、返辞をせず帰るのは気の毒だが、のんびりもしておれない。なぜならばニンニク薬草の臭いが漂い、逃げて出る方角を見渡しながら、クモが巣を張れば愛しい人が訪れると言い、クモの動きで私が来るのが分かると言い伝わる。夕暮れ時にニンニク臭が消えるので明日の昼間過ぎるまで待てとは、おかしな話と思いながら言い終わらないうちに走って来ると、人を追いかけさせて返歌をくれた。毎晩逢っている夫婦であれば、ニンニクの臭さ漂う昼間に会う事でも何も恥ずかしがる事はないが、あなたは中々訪れてくれないものだからと式部丞の話は終わった。貴公子たちはあきれて、うそだろうと言い、一体どこの女だ爪弾きをして見せ式部丞をいじめた。もう少しよい話をしろよと言うと、これ以上珍しい話があるものですかと式部丞は退って行った。