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不法領得の意思の話 (趣味・ゲーム)楽天ブログ 【ケータイで見る】 【ログイン】
碁法の谷の庵にて
風の精ルーラの囲碁と法律雑記

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2006年07月26日 楽天プロフィール Add to Google XML

不法領得の意思の話
[ 法律いろいろ ]    

 なぜこんな話を今するかって??昨日ひよこ先生を撲殺して上機嫌のosama先生が私に

「不法領得の意思について論ぜよ」


 って問題を出してきたからさ。
 けっこう専門的な話になるのでいくら読んでもぴんと来ないだろうけど、まあたまにはこんな話もいいだろう。私個人の復習ついでもあるし。

 さて、刑法235条以下は、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、横領と言った罪を定めている。これらの罪の共通点は、「他人の財産を自分のものにしてしまう犯罪であるということだ。

 そして、これらについて共通の解釈論の一つに、「不法領得の意思と言うものがある。


 もともと、刑法に規定がない限り、故意犯でなければ処罰はされない。(刑法38条1項)ただ他人の占有物を自分の占有に移すだけでは処罰できず、「他人の占有しているものを自分の占有に移そうという意識のもとで行って」初めて罪になるのだ。これらが窃盗や詐欺と言った罪の「故意」である。


 ところが、窃盗・強盗etcについては、さらに「故意とは別に」そこに「不法領得の意思」が必要で,それがなければ窃盗や強盗にならないというのが裁判例である。
 そして、その不法領得の意思の中身は、「利用処分する意思」と「振舞う意思」であるというのが裁判例である。
 ちなみに、窃盗罪を始め、これらの犯罪について定めた条文には、「窃盗罪の成立には不法領得の意思がいります」などとは一言も書いていない。それなのに、なぜそんな解釈が生まれたのだろうか。



 先に結論だけ憶えておいてもらって、これらについて噛み砕いて説明してみよう。結論を知った上で途中の思考を読むと言うのは、分かりやすい説明や入試の読解などでも有効な手法だ。


 ここでちょっと考えてもらいたいのが、器物損壊罪(刑法261条)との関係。
 器物損壊罪は、他人にとってはものがなくなってしまうが、とったほうとしては自分のものにするわけではない犯罪だ。

 器物損壊罪は、最高で懲役3年、罰金刑もあるし、被害者が告訴しなければ起訴できない。
 これに対し、窃盗・詐欺・恐喝は最高で懲役10年。窃盗罪には最近罰金刑ができたが詐欺や恐喝は最低でも懲役。横領罪でも最高懲役5年。(「業務上横領」は最高懲役10年)また、わずかな例外を除けば被害者の告訴なくして起訴できる。


 しかし、この量刑について、なんか変だぞ、と思わないだろうか。特に、「被害者のために厳罰化!!」とか言ってる皆さんはすかさず突っ込んでほしい所だ。

 例えば、ルーブル美術館がモナリザを盗まれた、騙し取られた場合と、モナリザを破られてしまった場合を考えてみよう。
 もし盗まれた、騙し取られただけなら、モナリザは万に一つでも戻ってくる可能性がある。
 これに対し、破られてはもうモナリザは何をやっても永遠に戻ってこない。レオナルド・ダ・ビンチはとっくに死んでしまっている。


 そう、被害者の立場から見れば侵害される利益が大きいのは、実は窃盗ではなく器物損壊だ、と言う点を考えて欲しいのだ。
 じゃあなぜ器物損壊より窃盗の方が重く処罰されるのか?

 これについては、こんな説明がされている。
 窃盗や詐欺と言うのは他人の利益を吸い取って自分が得をしようと言うことで、利欲目的である。そういう犯罪はただ他人のものを壊すより厳しい非難に値する、また抑えるために処罰をそれなりに厳しくする必要がある、というようなことなのだ。

 だとすればそういうような利欲目的がある場合に、はじめて窃盗や詐欺の成立を認めるべきだろうそういう考え方から、不法領得の意思と言う考え方が生まれたのだ。

 その上で、不法領得の意思の内容を検討すると、さらに下のような考え方が出てくる。

 まず、不法領得の意思の内容の一つは、「物の本来的用法に従って利用処分する意思である。
 これは、まさしく器物損壊との関係で問題となる。
 モナリザを破壊してやりたいと思う人間は、ルーブル美術館の展示場で破壊するより、一旦外に持ち出し、自分の手元においてから破壊する方が普通だろう。しかし、一旦外に持ち出すのは、それだけでルーブル美術館の占有を自分のところに移したわけで、窃盗だ。
 つまり、ちょっとやり方が違うだけで法定刑が3倍も違うわけで、なんか変だということになる。そもそも、そこで、モナリザを利用・処分する意思、処分と言うのはこの場合捨てるということではなく例えば売ったり、他人にあげる、自分で見て楽しむなどその利益に預かることだが、そういう意思を必要とするのである。

 また、振舞う意思と言うのも必要であるとされる。振舞う意思とは、「本来権利のある人間を追い払って、自分が権利のある人間のように振舞う意思であるとされる。
 例えば、街中にある自転車をちょっと拝借して元に戻す行動。されたほうとしてはとても迷惑だが、この場合とった方が得ているのは自転車によってもたらされる利便に過ぎず、自転車そのものではない。
 この区別はとても重要である。特に窃盗罪の場合は「利便」を他人から取ってしまっても罪にならないのだ。
 彼が実際問題とろうとしたのは「物からもたらされる利便」ではなく、「物」そのものである。「物」そのものを取ろうとした、と言うためには、自分が権利者であるように振舞う意思が必要とされるのだ。

 第一、これが不要だと言ったら落し物を届けようと警察に届け出るのまで占有離脱物横領罪になってしまう。(刑法35条で攻める手もなくはないけど)


 じゃこんな場合は?

「他人の盆栽を壊そうと思って持ち出したら気が変わって自分のものにしてしまった」

 壊そうとして持ち出した以上不法領得の意思がなく窃盗罪にはならない壊してないから器物損壊にもならない。

 成立するのは占有離脱物横領罪刑法254条)。
 早い話が、落し物をネコババするのと同じ罪である。ちょっとそれはあんまりな気がしないでもないが、そのような解釈をするならば他にはどうしようもない。



 まあこういう問題もあるので、不法領得の意思については、学説上はそもそも不法領得の意思なんて一切いらないという見解もあるし、また不法領得の意思は必要だがそのうち振舞う意思はいらない、あるいは利用処分する意思はいらないという説もある。
 もちろん判例を支持する見解もあるし、見解は分かれているのだ。



 さて、こんなもんで十分でしょうか、osamaせんせ。
 


最終更新日  2006年07月26日 15時04分38秒
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