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碁法の谷の庵にて

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2007年08月30日
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 >法律オタクのお坊ちゃん弁護士が、この弁護団に対して懲戒請求をすることが、逆に違法になるなんてヌカシているけど、心配御無用。
懲戒請求が違法とされた裁判例があることはありますが、その件と今回の件は全く異なる。
懲戒請求が違法となるのは、明らかに懲戒事由が存在しないのに、それを分かっていながら懲戒請求をかけた場合。
特に弁護士が不用意に相手弁護士に対して懲戒請求をかけた場合なんだ。
今回の件は、「所属弁護士会の信用を害し、品位を失うべき非行」にあたるかどうか、評価が必要な場合なので、全く問題ありません。
オタク法律家がどのように考えようとも、今回の弁護団の弁護活動によって、
世間的に弁護士の信用が失墜したことは明らかなんだから(この集会に出ているカルト集団弁護士たちは、世間の空気に触れていないので、世間的に弁護士の信用が失墜しているなんて全く感じていないけど。)。
一般市民の方々が、この弁護団の弁護活動によって弁護士っていうものが信頼できなくなったと感じれば、弁護士会が懲戒処分を下すかどうかは別として、懲戒請求をかけることは全く問題ありません。



 これ、懲戒請求を煽ったとして問題になっている橋下徹氏が自分のブログに書いた文章。
 正直言って、分析がものすごく甘いと思います。本当に不法行為になるのでは・・・という指摘もたくさんありますし、その中には最高裁判例はおろか下級審の判例まで引用して詳細に検討しているもの(こちら)もあります(橋下氏含め不法行為否定説はそこまでやってない)から、それに応戦しうる理屈を用意しなければならないところですが、これだけでどうにかなるんでしょうか?

 私が弁護団に対して好意的な解釈をしているように、橋下氏に好意的に言えば、橋下氏の脳内では、十分に彼らに反駁して懲戒委員会や法廷でも対抗しうる理屈が出来ていると考えることはできるでしょう。
 ただし、それを受け売りしても懲戒理由は作れません。裁判で不法行為の訴状が出されたときに、答弁書としてあのブログの内容をそのまま出して、その通りだと納得する裁判官はいないでしょう。成功している弁護士であるなら、大事なのは「自分の意見」ではなく、懲戒判断権者の心証や、弁護士が懲戒取消や不法行為で訴えてきた場合に担当裁判官の抱く心証や判断であることは分かっているはずです。いくら裁判官を批判して、それが筋が通っていても、裁判で負けては意味がありません。
 懲戒を支持する人たちにとって、橋下氏のように簡単な説明をしてくれるのは心強いでしょうが、簡単なことを言っているということは、例え彼の提示しない論理に大きな飛躍があったりしても検証できないということです。簡単な説明に飛びつき小難しい説明は無視するのは、こと結論が分かれている場合には危険です。


 その観点からすれば、今回の橋下氏の文章は不満としか言いようがありません。



懲戒請求が違法となるのは、明らかに懲戒事由が存在しないのに、それを分かっていながら懲戒請求をかけた場合。

 何度も出している平成19年4月24日最高裁判所判例の判示は、

「同項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において,請求者が,そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに,あえて懲戒を請求するなど,懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには,違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解するのが相当である。」

 橋下氏のいう明らかに懲戒事由が存在しない場合というのは「事実上または法律上の根拠を欠く場合」に対応すると善解するとして、それを分かっていながら…なんてことはありません。むしろ「普通の注意によりその事を知りえたのに」というのは、重大な過失でなくとも不法行為になる証拠に思えます。
 これまでの下級審の裁判例でも、基準の言い方は多種多様ですが、懲戒事由が存在しないのにそれを「分かっていながら」懲戒請求しないと…なんて、損害賠償否定例の裁判例だって言っていません(平成9年9月17日東京高裁など)し、また、最高裁判例が出た以上最高裁と矛盾抵触する部分は当然変更と考えるしかありません。学者的な視点から批判するのは自由ですが、実務でそれで勝負しようとするのは実務家失格でしょう。
 ついでに言えば、懲戒請求を取り下げたとしても損害が無かったことにはならんという判例(東京地判平成7年12月25日)もあります。取り下げたのに不法行為が成立したのです。(最高裁判例は取下げについては言及なし)

>特に弁護士が不用意に相手弁護士に対して懲戒請求をかけた場合なんだ。

 「特に」と書いていますが、弁護士でない私人の請求でも懲戒請求が不法行為となった裁判例はあります。先日の最高裁判例だって、弁護士に限らず、弁護士の依頼人たる一般人にも不法行為の成立が認められています。「お前自身は悪くないが雇われの行動に責任を取れ」というのではなく、「お前も悪い」と言われているのです。
 東京地裁平成5年11月18日裁判例は弁護士により高度の注意義務を課すようなことを言っていますが、一般人免責を意味するとは読めませんし、最高裁判例は弁護士であることを考慮していますが、一般人と弁護士で一般論を区別して論じていません。
 もちろん橋下氏は弁護士がやらなければ不法行為とは書いていないし、それくらい分かって書いたと考えるにしても、私人だから安心というような誤解を植えつけるような文章はどうでしょうか。


>今回の件は、「所属弁護士会の信用を害し、品位を失うべき非行」にあたるかどうか、評価が必要な場合なので、全く問題ありません。

 確かに評価が必要なのは事実でしょうし、懲戒請求が不法行為となる可能性を減らす事情であると考えるのは賛成です。
 しかし、評価が必要だから懲戒請求が不法行為になりえないわけではありません。
 先日の最高裁判例は、「法律上当然の管轄でも濫訴と呼ぶに値するから品位を失う非行だ」と言って懲戒請求をしたら、「法律上の根拠を欠く」と断罪され、不法行為の成立が認められたわけです。「濫訴」というような評価的要素があるにしても、およそ通用しないことを言って品位を失う非行だというのは不法行為になるわけです。

 今回の件は、テンプレートに関して言えば「刑事弁護で理解できない主張をし、被害者を侮辱することが品位を失う非行である」というもの。
 弁護実務において、大切なのは裁判所に認定される主張をすることであり、反射的に被害者を侮辱することもやむをえないと理解されている中で、通らない主張であると理解できないことに過失が無いと判断されるのかどうか。
 


 弁護士だけの集会としたことに橋下氏は噛み付いていますが、元々弁護士だけで集会やら勉強会やらを開くのはよくあることだそうですし、弁護士だけで会場は埋まってしまったそうです。
 弁護団は必死になって自分たちの立場を明らかにしようと記者会見や出版をやっているのに、(掲載媒体が「年報死刑廃止」であるのはどうかという気がしますが)それだけをとらえてどうしようと言うのでしょうか?
 

 また、信頼を害したと言えばいいわけではありません。
 「証拠を偽造して無罪にしてくれると信頼してたのにしてくれなかったから懲戒請求」なんてやっていい訳がありません。弁護士としての任務から逸脱したことをする「信頼」、あるいは任務をさせないような「信頼」を害したといったって、それは外野の駄々以外の何者でもありません。
 弁護士の本来的任務を観察しないと、信頼を害したという言葉も薄ら寒いのです。
 どのような信頼を害したのか、その辺ははっきりさせるべきです。懲戒委員会に呼ばれる人は聞かれるかもしれませんし、下手すると一発で墓穴を掘りかねませんから、解答を用意したほうが良いかもしれませんよ。



 意外にも、ネット上では橋下氏は懲戒請求という制度を教えただけだ、という主張が有力に見られます。橋下弁護士に責任を押し付けるのに比べれば、まともな反応だと思います。
 もっとも、この理論構成は橋下氏としてもあいつらが勝手にやっただけだというに等しい理屈で、弁護団としてはそれならとばかりに懲戒請求者個人を訴えることもありえますからおそらく「彼らは懲戒相当なのだから、何の問題もない」というと思われます。弁護団としても守秘義務に反せずここに反発するのにどうするか、裁判所の訴訟指揮にも注目しています。
 おそらく弁護団も橋下氏が「たかじんのそこまで言って委員会」でしゃべった映像を手に入れて裁判官に見せるなどするのだと思います。懲戒請求という制度を教えただけなのか、懲戒請求しろと煽ったのかは、懲戒請求に関連する部分全体を見て、実質的に判断されると思われます。文章を一つ一つぶつ切りにして判断するようなことは、裁判所がやるとは考えられません。また、懲戒処分はただの苦情申立ではなく、弁護士としての資格・活動・名誉に多大な影響を及ぼす行為ですから、そのあたりも考慮して判決は下されることでしょう。


 弁護士ブログでは先日この記事で紹介したブログも含め、去年の「たかじんのそこまで言って委員会」で橋下氏の押さえをやっていたという紀藤正樹弁護士壇弁護士三森弁護士津久井弁護士山口弁護士JD弁護士とっち弁護士などが既に橋下氏の行動に疑念(不法行為が成立するとまでいっているわけではありませんが)を投げかけました。弁護団に疑問を投げかけることが多いモトケン先生も、橋下氏の呼びかけるという行動は趣旨逸脱を指摘しています。

 ブログ法曹界においては、橋下氏は包囲されています。

 私は、市民や被害者に対する説明責任という問題提起自体を否定する気はありません(むしろ支持はしないが貴重な問題提起だという気もする)、「懲戒請求をしてもらいたい」というのは、煽ったと評価できるできないに関係なくまずかったと思います。





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最終更新日  2007年08月30日 18時42分03秒
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