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碁法の谷の庵にて

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2008年12月21日
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橋下氏が控訴した後に、賠償金を払ったようです。

まあ、先に払って置くのは異例ではありますが、ある程度当然でしょう。いつまでも払わないでおけば利息が年5%追加されていきますし、(明治以来の利率ながら、このご時世に利息5%はかなりの高率)しつこく払わないでおくと個別の懲戒請求者が狙われる可能性さえ上がってしまいますし。
なお、一審判決は主文に仮執行が可能と書かれているということですから、弁護団は一旦その気を起こせば橋下氏の財産に強制執行をかけることも可能です。


控訴審に入ってからの橋下氏の行動は、訴訟に絞れば割とまともに見えます。

もっとも、控訴趣意書に何が書いてあるのか、興味津々ですが。まともな弁護士なら、新しい主張をくっつけるか、一審判決の事実誤認や法解釈の誤りを指摘する形で控訴趣意書を書くと思うのですが、あちこちでしていた、私が間違っていましたという態度とは合わないでしょうね。
また、橋下氏は自分に噛みついた朝日新聞に対しては逆切れをかましていたのに対し(朝日の批判は判決文を素直に読んだ感想としてはかなりまともだと思いましたが)、刑事弁護を理解させる活動は私の知る限り全く行っていません。裁判員を見据えて説明責任だどうだというような、彼が訴訟その他で言ってきた立論は、部分的にみて正論と感じた部分さえ(部分でも正論が言えないとするなら法律家以前に大人として終わっていると思いますが)語らなくなりました。いくら府知事で忙しいからと言って、だから見逃してやろうと思えるほど彼の罪は軽いとは私には思えません。
判決がいつ頃出るのか分かりませんが、すっかり世論も静かになってしまいました。私のしてきたことはなんだったんだろうと思うこともあります。まあそれでも、今度事件があっても静かに裁判を見守る人が増えたならば、それで私の目的は十分達せたと言えるのですが。

これに対し、弁護団は付帯控訴&請求の趣旨の拡張を申し立てたとのこと。
民事裁判では、不利益変更禁止と言って事件当事者の一方のみが控訴した場合、判決をキープする(つまり控訴を退ける)ことは全く問題ないですが、控訴した方に不利益に判決を変更することは禁止されています民事訴訟法304条。両方が控訴した場合はどっちにでもできます)。当事者の求めていない裁判を判決することは民事訴訟の基本理念である処分権主義(民事訴訟法246条。当事者の求めた事項についてのみ裁判するという原則、たとえ権利があっても当事者が主張しなければ裁判所は審理しない)に反すると解されているためです。
ただし、控訴は手続きが面倒で金を納めなければならないし裁判を続けるのも大変なので自分からは控訴しないけど、訴訟が進むにつれてもっと勝てるということが分かってくることがありえます。また、どうせ延びるんならもっと認めてもらおうかということもあり得ます。
そんなとき、自分も控訴すれば問題はないのですが、控訴期間は2週間と短い(民事訴訟法285条)ため、大体控訴期間は終わっているので、普通の控訴を使うことはちょっと考えにくいでしょう。
そこで使うのが付帯控訴(民事訴訟法293条)です。付帯控訴なら、控訴期間を過ぎてしまっても、不利益変更禁止の原則の拘束を外すことができるのです。

また、請求の趣旨の拡張というのは、当事者が請求した事項しか判決を下せないのですが、今までの請求に上乗せしてもっと請求する、という話です。控訴審で行ってもよいと考えられています。


弁護団はこれをセットで行いました。一審判決では損害賠償額が少なすぎるのでもっと払うべきであると言い、さらに控訴審以降での橋下氏の活動で損害が増えたから、一審の時に請求していた300万円では足りないから、330万円を請求すると言っているわけです。
詳細は弁護団の付帯控訴状(pdf注意)参照。もっとも、橋下氏から支払われた部分については差し引いて、計130万円+利息の請求ということになりますが。

弁護団は橋下氏が大人しく請求を飲み、控訴しないということであればこれ以上のことは望まなかった(200万円に最初から不服なら最初から控訴すると思われる)ようですが、訴えてくるならさらにということを考えたのではないでしょうか。
判決予想はタブーとするのはいつも通りですが、新たに証拠を出すということがなければ控訴審判決までの期間はそんなには長くはならないのではないかと思います。



最後に。

そもそも刑事裁判という制度自体は絶望的な制度です。犯罪を巡る社会制度は、多かれ少なかれ犯罪によってできた傷を回復させる営みのはずが、かえって塩を塗るようなことを予定してさえいる制度です。訴訟における権利その他をドラスティックに行使するのは、実は救いのない薔薇乙女の宿命への第二段階(第一段階は犯罪自体)なのです。
それが大半の事件においてある程度被害者救済や犯罪者更生の形になっているのは、日本の警察がある程度優秀であること(従って法廷に出てくるのは観念せざるを得ない真犯人ばかり)と、日本人が簡単に罪を認める民族であること、さらに法曹三者や被告人、ケースによっては被害者自身までがそれぞれの立場の中でいろいろな工夫をして頑張っているから(工夫が行き過ぎると映画「それでもボクはやってない」みたいな事態になりますが)だという思いを、最近強くしました。
そして、そんな制度でも、今の人類が考え、運営していける中では最高に近い制度であるのが現実であろうと思います。






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最終更新日  2008年12月21日 13時26分46秒
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