3413372 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

碁法の谷の庵にて

碁法の谷の庵にて

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2009年01月20日
XML
カテゴリ:その他雑考
ある夫婦、その妻に思いを寄せる男性、この3人とは何の関係もない男性、おじいさん。この5人が乗っていた船が難破し、無人島に流された。

その過程で、夫婦の夫は行方不明となり、島に流れ着いたのは4人だった。この時点で夫の安否はわからない。

夫の安否を確かめるには、船を出して捜索するしかないが、妻には船をつくる能力や、直す力はない。船をつくり、直すことができるのは、夫婦とは縁もゆかりもない男性ただひとりだった。

妻はその男性に頼んだ。「船を直してください。夫を探したいのです」と。

男性は直すと言った。だが、条件をつけた。その条件とは妻と一夜限りの関係を持つこと。

妻は悩み、おじいさんに相談した。おじいさんは「気持ちのままに行動しなさい」と。

妻は結局、その男性と関係を持った。男性は約束を守り、船を直した。

そして船が直り、これからまさに夫を探すというときに、夫が無人島に自力でたどり着いた。

妻は夫に、捜索するため、船を直すために男性と関係を持ってしまったことを告白した。

夫はそんな妻を許さなかった。不貞であると。

夫婦は破局した。

ひとりになった妻の様子を見て、思いを寄せていた男が言った。「あなたが好きです」。






この中で一番悪いのはだれか?と言う問いが出回っているようだ。

確かに、個人の倫理観なり価値観の反映と言う意味ではそれなりに面白い題材だ、とは思う。しかし、心理テストをするのならばともかくとして、こんなものをわざわざディスカッションするほど彼らは暇だったのだろうか?と言う感じを抱いた。


第一、一番悪いのは誰かと言われたら、どれが一番悪いという結論を出さなければならないこととなる。誰のせいでもないとか、そういった結論自体が忌避されているような印象も受ける。
誰のせいでもない、無理やり言えば人間と言う生物種の持つ限界故の悲劇などと言うのは今後人類の文明が何億年存続しようとも消滅するものではなかろう。
今回の問題設定とて、不貞行為を憎むという人間の心情や、船なくして夫を探せず、船を作れないという妻の能力など、いくつもの「人間の限界」が現れている。不貞行為など、別にそれ自体は何の害悪でもない。誰かが死ぬわけでも不健康になるわけでもない。地域・文化・時代などによって不貞行為をどうとらえるかはさまざまである。その中で、夫が不貞行為に対して厳しい目線を持つように成長したことは、別に非難されるべきこととは思えない。

私自身、これは人間の限界が究極的原因であり、誰のせいと言えるものではない、と言うのが所感である。


妻について・・・夫の生命がかかっているところである。そんな時に貞操観念よりも生命優先と言う考え方を非難されるべきいわれはないというべきであろう。

夫について・・・自分を助けるための行為を不貞行為として非難すること自体はともかく、不貞行為ととらえて妻との間を終わらせることは別におかしなことではない。不貞行為を許せないという心情が悪い、と言うのなら別だが、少なくとも今の日本ではおそらく支持を得られない見解である。

思いを寄せていた男について・・・もんのすごくとってつけた感が否めない設定に登場するこの男も、別におかしくはない。これに文句を言うのは、未亡人に惚れて告白するのは夫の死を利用した不届きな行為だ、とでもいう気なのだろうか。そこまで他人の不運を一切自己の幸福にしない仙人のような人物がいたら、ぜひ一度お会いしてみたいものだ。後光が差して見えることであろう。

おじいさんについて・・・アドバイスを求められ、(おそらくは誠実に)アドバイスをした。ただそれだけのことである。しかも、その結論は、基本的に妻に自分で判断しなさいと言っただけである。これでおじいさんが悪いという理屈は暴論以外の何物でもなかろう。誠実なアドバイスをしてそれに裏切られた場合、アドバイスを求めた側とて、無責任ではないとさえいえる。

無関係の男性について・・・一番引っ掛かるのが彼であることは間違いない。
とはいえ、その男性が船を作る義務は本来はない(少なくともそのような義務は見いだせない)。たまたま船が難破して他の人と流されたと言うだけで、なぜ人助けしないんだと詰め寄られなければならない理由はないと言える。
一夜の関係を求めることとて、悪いとは言えない。たまたま対価関係になったからと言って、本来彼に作る義務はないのである。そこに何らかの見返りを求めることは当然ではなかろうか。見返りが一夜の関係であるというのは不謹慎であり、日本の法律であれば公序良俗違反とされるであろうが、では作らないと言えばよかったのかと言うと、そうではないのも確かである。
実に微妙なところであるが、結局のところ、この無関係の男性についても、どうにも決め手がないというのが所感である。ただ、この男性の問題点を指摘する見解については、他より説得力が高いと感じていること、どうしても誰かが悪いと言えというのであれば彼を指名することも附言はしておく。


「誰のせいでもない」と言う現象は、今の世の中ではなかなか認めがたいことかもしれないが、一方で物事を誰かのせいにしたがる思考が、一方でシステムの硬直化、検討の不存在、新たな被害を生んできたこともまた事実。

 医療過誤訴訟で、医師が悪いのなんだのと言い続けてきたことが、どれほど医療改善の役に立ったのかと考えたとき、こうして誰が悪いのかと言うのをディスカッションする時の思考そのままで社会を運営しようとしているとすれば、それはうまくいかないであろうなあというのは所感である。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009年01月20日 20時18分47秒
コメント(0) | コメントを書く
[その他雑考] カテゴリの最新記事


PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

カテゴリ


© Rakuten Group, Inc.