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碁法の谷の庵にて

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2010年05月10日
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カテゴリ:法律いろいろ
 26年間、全うとは言わないまでもまあ普通に生きて来た私が、ついに職務質問を受けました。
 自転車でついっと白バイの横を通ったら、二人一組の警官に止められたのです。

 別に疾しい所などはなかったのですが、どうやら、乗っていたボロ臭い自転車が盗品ではないかと疑ったようで、自転車の番号を確認して警視庁までわざわざ照会をかけていました。
 ちょっと厄介だったのが、現場は埼玉県なのになんと自転車の登録が「警視庁」。しかも、この自転車は自分で買ったものではなく、妹のもらいものに乗っていたし、かなり前にもらったものなので、あまり詳しい来歴を知りませんでした。
 結局妹に電話して誰からもらったか、相手の名前を通知してもらってやっとさよならとなりました。
 横柄な警官ではなかったので終始和やかに話は進めておきましたが。


 まあ一応司法試験で刑事訴訟法など勉強すれば職務質問については触れることが多いので、まあどんなことをしていれば大体大丈夫か、個人的に考える所くらいはあります。
 個人的に考える対処法を少し開陳してみましょう。


 職務質問の根拠は、警察官職務執行法2条1項にあります。

第二条  警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。


 後の質問の内容からすれば、私も何らかの犯罪を犯したと見られたから質問されたのでしょうね。(今思えば、白バイとすっとすれ違った段階でどの辺がそう見えたの?と聞いておくべきだったのかもしれませんが)鍵が壊れていたのが一つの原因かも。(代わりのチェーンロックは前かごに入っていたのですがね)


 職務質問は、法律上は任意に行われることが前提となっています。職務質問されたけど、「答えたくない、帰りたい」と言えば帰ることができるのが建前です。警職法2条3項に

3  前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない

 帰りたいと言われたのに帰さないのは身柄拘束ですから、現行犯逮捕するような場合でなければ裁判所の令状が必要であると言うのが建前です。

 以上、ここまでが法律の条文レベルの建前論ですが、問題はその先です。基本書にも普通に書いてあることですね。(自分で基本書を読まないのに他人の基本書にはホコリが被っている呼ばわりをするつわものというかバカ者のことを少し思い出しました)
 この後に書いたことに従ったら損した、と言うのであれば少しは責任を感じますがが、この建前だけに従って行動して損したと言われても、私は一切の責任を持ちません。「黙秘は不利益にならない」レベルのwikipedia脳からは脱却するのがよいでしょう。



 現実には、こうした建前にそのまま従って活動するには大きな障害があることも否定できません。
 警察に協力すべきだ、なんて説教くさいことを言うつもりはありません(市民に一般的犯罪捜査協力義務はないとされています)が、自由になるにも障害になってしまうことは重々認識する必要があります。

 まず、帰りたいからと言って、警察官に暴行を加えれば公務執行妨害で現行犯逮捕された所で文句は言えないのはいうまでもないことです。

 また、任意とは言っても、職務質問に応じるよう説得する行為は許されていますし、ケースによっては警察官が腕をつかんだり、車の運転の場合に車のカギを勝手に抜き取る等の行為も適法とされた例があります。
 もちろん、質問相手を地面にぶんなぐって倒し、組み伏せたりすれば、正当防衛が成立するような場合でもなければまず違法ですが。
 どこまでが許されどこまでが許されないか、と言うのは本人が疑わしいと判断された理由とか、疑わしい罪の内容などにもよりますし、判例でも明確な基準がある訳ではなく、学説なども百花繚乱で一概に線を引くのは難しいのですが、当然これらに対してもボカッと殴ったり、押しのけたりすれば公務執行妨害で逮捕されてもと言うことになりかねません。公務執行妨害は妨害した公務が不適法なら成立しないと解釈されていますが、それでもその捜査が厳しくなってくるのは避けられないことです。
 
 「俺は逮捕されようが裁判にかけられようが、最後に無罪判決さえ取れればそれでいいんだ、逮捕中にクビが飛んでも構わない」という信念の持ち主で、かつ「俺はその場の法的に見て必要な状況を全部把握しているし当てはめも絶対裁判官と同じく正確だし、裁判官にその状況を絶対間違わず認識してもらえる」と言う、勇気と無謀をはき違えているか凄い自信家でなければ、職務質問から「強引に逃げ出す」のは絶対に勧められない行為です。



 では、職務質問に対して「黙秘」を続けたらどうなるでしょうか。もちろん職務質問だからと言って答える義務は法的にはありません。
 しかし、黙秘しても不利益になることはないと言う記述がwikipediaにあるから黙秘すればOK、解放してもらえるなんて考えて、自分で実行するのは各人の自由ですが、それを他人に勧めるのはいただけません…というか不利益に陥ることを進めるも同然で、ある意味犯罪的行為ですね。
 黙秘をすることは、職務質問する側に対してこいつ怪しいな、という疑いを増やし、質問が勢いづいてくることになります。
 それだけでなく、弁解すれば「そうだったのか」ということでさっさと放してもらえるのに、弁解がないからどうしようもない、と言うことだって起こりますし、後で弁解を話してみても、「こんなに後になるまで弁解しないと言うのはどういうことだ、嘘なんじゃないのか」などと、痛くもない腹を探られるはめになるのです。
 強引に逃げ出す行為で話したような信念を持っている人か、よほど隠さなければならない事実を持っている人でなければ、黙秘も得策とは言えません。
 黙秘を得策にするハウツーも出回っているようですが、よほどうまくやらないと自爆ですから、やめておいた方がよいでしょう。下手に職務質問になれていると思われると、それだけでも怪しいと思われ、追及がきつくなる理由になりかねません。


 結局、職務質問された場合に、私が用意する、さっさと解放されるために一番適切な回答は「おとなしく質問を受ける」ことです。知る限りのことを素直に喋るのが、さっさと職務質問から解放されるもっとも手っ取り早くて安全な手法です。
 逆に言えば、それでも色々追及してくるのは、警察に何らかの誤認もやむを得ない事情があるか、はたまた警官がおバカであるかどちらかだと思いますので、腹をくくるしかないでしょう。おとなしく質問を受けた段階で、既にできることはやりつくしている、素直に大人しく喋って引き下がらない警察官が、黙秘したり逃走を図ったりで引き下がることは考えられないと私は思います。

 また、既に仮に何か犯罪をしてしまっても、職務質問されたときに自分の犯罪を暴露すれば、自首(刑を減らしてもらえる可能性がある)が成立する場合もありますし、(職務質問の際に自分の罪を申告するのが自首になるケースもありえます。覚せい剤で職務質問されたときに窃盗を自分から話した場合など)例え自首が成立しないでも粘って見つかってしまうよりは量刑上有利に考慮してもらえる(ケースによっては起訴猶予、軽い罪なら微罪処分になる)ことは間違いありません。


 他に私が取った行動として、家族にわざわざ携帯で連絡を取って自転車の来歴について話してもらって、弁解を完璧にしておきました。向こうが連絡を取りたいとこだわっていたのも事実ですが、弁解を根拠づけるのが職務質問からさっさと解放されるには最も適切です。
 また、最初に名前を教えてと聞かれたときには、単に名乗るだけでなく持っていた運転免許証を出しました。顔写真がついていますから偽名を名乗っているなどと言う疑いはこれで消えますし、住所なども書いてあります。住所不定であるというのは万一の場合に逮捕されやすくなってしまう重大な要因なので、住所を明かしておくのが得策です。

 なお、警察手帳の開示を要求しろ、と言うハウツーもあるようですが、私は余計なケンカは売らない方がよいだろうと判断して辞めておきました。







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最終更新日  2010年05月10日 17時17分37秒
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