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碁法の谷の庵にて
風の精ルーラの囲碁と法律雑記

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2011年11月14日 楽天プロフィール Add to Google XML

「本当に分かっている人は分かりやすく書く」
[ その他雑考 ]    

 分かりやすい、と言うのはいいことです。
 文章全体の長さとか、疑問点に応えているかなどが全て同じで、分かりやすさだけが違う文章が並んでいるとすれば、当然わかりやすい文章の方に高評価をだします。
 分かりやすく教えられるというの立派なスキルであることは私も疑いません。



 それはいいのですが、分かりやすさ至上主義と言うのも考えものです。
 分かりやすく説明する池上彰氏がもてはやされているうちはまだいいでしょう。
 しかし、分かりやすさ至上主義が行き過ぎて、「分かりにくいものは間違い、あるいは質が低いものである」という考え方も散見されます。
 この分かりやすさ至上主義の最たる主張が

「本当に分かっている人は分かりやすく書く」
 
 です。「本当に頭のいい人は…」などと言うバリエーションもありますが、本質的には同じでしょう。


 このことは、次の問いについて考えてみればものすごく簡単な話なのです。

 小学1年生に微分積分の問題は解けるでしょうか?

 高校生が微分積分を解けるようになるのは、小学生で習う小数分数四則演算etc、中学生で習う正負の数や一次二次方程式・一次二次関数etcを積み重ねているからです。
 こうした積み重ねを経てマスターすることで、微分積分が解ける脳みそが出来上がっていくわけです。そして、その水準に達するために、まだ頭の柔らかい子供時代の9年以上を費やすのです。

 そんな積み重ねを経ていない小学生たちに、微分や積分を使って求める解を根拠に至るまで説明してくれと言われたらどうするでしょうか。
 もちろん、回答者が四則演算を手始めに微分や積分の計算を自分で計算しておいた上で、解答だけを示すことは可能です。それで小学生が納得してくれたなら、めでたしめでたしで済みます。
 しかし、当の小学生はなんでこうなるの?と疑問を抱いてきたらどうなるでしょうか?

 当然、高校までの9年分の数学をその場で積み重ねて教えるしかなくなります。他の科目を全く学ばず、かつ微積分にあまり必要のない考え方はパスとしても、どれくらいの期間かかりきりになるか分かったものではありませんし、そもそも他の科目をまるで学ばせないで詰め込むことはできません。
 単に知識だけ教えるのではなく、身につけさせるためには、時間をかけた問題演習だって必要になりえます。

 これらを小学1年生のうちにマスターさせることはまず不可能と言えるでしょう。


 ・・・小学1年生に微分積分の問題は解けるか?と言う質問に「解答だけで」答えるなら「解けない」とか「不可能」で終わります。
 解けない理由を文章使って書くと、こんなに長ったらしい文章になります。


 それなのにまだるっこしく積み重ね云々と書いた理由は、実は「長時間に渡って積み重ねを踏まえないと解けないという現象はどこにでもある」ということを忘れないでほしいからです。

 語学だって、英語の基本文法も分からないままにやれドイツ語やらフランス語やらに手を出して成功する例は少数でしょう。
 法学だって、刑法や刑事訴訟法の基本概念を理解せずに刑事実務は分かりません。やろうとすればボロが出ます。
 囲碁将棋だって、3手詰めや中手も分からないのでは、プロ棋士の着手の意味をきちんと理解できる人はいないでしょう。

 ある世界の最先端には、常にそれまでの学問なり、知識なりの積み重ねが存在しますし、その最先端は実は至極身近にその成果を出しているものです。
 一般の人たちも、社会人となるまではこうした積み重ねが本当にできているか、高度なことを学ぶのにふさわしい基礎的学力が身についているかと言うことを、テストと言う形で何度か試されます。基礎的学力がついていなければ、そんな基礎的な所から遡って教える手間なんか取れませんから門前払い、と言う対応がされることすらあります。中学・高校・大学などの入試がいい例です。
 社会人になれば、そんな風に前提知識で選別されるような試験は少なくなります。
 それでも、こうした問題が存在しなくなる訳ではないのです。

 そんなところで、前提知識のない人にとっても分かりやすくと言うのは、小学生が積分の問題を問うのと同様に、無理な相談です。
 それでも、現実には例えば解だけを教え、その過程については権威などの人的信頼などで代替するということで、最先端の判断を一般の人たちも享受することが可能になっているというのが実情です。
 
 ・・・ところが、そういった人的信頼が通じない人たちもいます。

 そういう人たちの一部が、「本当に分かっている」「本当に頭がよい」と言う謎な概念を持ち出して、難しい説明をする人を腐し、分かりやすい説明をしてくれる人に飛びつく・・・それが、「本当に分かっている人は分かりやすく書く」という言葉に隠れている場合が多いのです。
 
 専門用語を羅列して説明すれば「本当に分かっている人は分かりやすく書く」。
 専門用語を使わず一般用語で長々説明すれば「冗長な文章を書いている」。
 省略して結論とその周辺についてのみ説明すると「根拠を示せ」。

 「本当に分かっている人は分かりやすく書く」を筆頭にしたこの3つの使い分けは最強です
 これらを使い分ければ、永遠に「分からない」と言う現象を説明者の責任にし、説明を受ける側の不勉強や無知は全て不問に付されてしまいます。
 もちろんそんなバカな話があってはたまりません。
 少なくとも、根拠をこまごま示すことを要求する人は、正確かつ簡潔で分かりやすい解答など期待すべきではないと言えるでしょうし、逆に本当に分かっている人は・・・と主張する人は少々の説明に納得がいかない点があっても分かりやすさのためだと思って我慢することが必要です。
 

最終更新日  2011年11月14日 22時30分45秒
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