スクリーニングの集合論(前編:問題点の整理)
最近は私自身が殆どやっていないのでなんなのですが、久しぶりにスクリーニングの話でも。銘柄選択のスタートとしてスクリーニングを利用する方は結構いらっしゃるかと思います。投資関連本でも銘柄スクリーニングのやり方が書かれている本をたまに見かけます。そして、それらの殆どは単一の条件でなく複数の条件を使ったスクリーニングを実施しています。これら複数の条件を結合する基礎となる論理記号には、「and条件(両方満たさなければならない)」と「or条件(どちらか一方を満たせばよい)」の2種類があります。「and条件」と「or条件」を別の言葉で言い換えると以下のようになります。*and条件――「より完璧なものだけを取り入れたい」*or条件――「何か傑出した良さがあれば取り入れたい」しかし、投資関連本にせよ投資家のウエブサイトにせよ、スクリーニングというとその殆どを「and条件」で構築していることが多いです。なぜ、スクリーニング条件を「and条件」ばかりで構成するのか?なぜ、「or条件」を活用しないのか?スクリーニング機能を作成する側と利用する側の双方に問題があると思います。1.作成する側私はカブドットコム証券とイートレード証券の2つを主に利用していますが、そのような証券会社が提供するスクリーニング機能には「and条件」しか用意されていません。(恐らく、他の証券会社でも事情は同じだと思います。)例えば、「PER<10」と「PBR<1」という2つの条件があったとします。証券会社が提供するスクリーニング機能だと、このような条件を結合する基礎となる論理記号として「and」しか用意されておらず、「PER10倍以下、かつ、PBR1倍以下の銘柄を探せ!」というスクリーニングしか出来ません。必然的に、「PER10倍以下、もしくは、PBR1倍以下の銘柄を探せ!」というスクリーニングが出来ないことになります。しかしながら、こうしたニーズは当然あります。特に、さまざまな指標をバランス良く見たいという人にとって、「or条件」が使えないということは不都合なことこの上ありません。上記のように、条件が2つであればせいぜいスクリーニングを2回行えば済む話ですが、条件が3つ以上だとさらに複雑になります。これについては、次回に詳細を話します。ちなみに、「CD-ROM版四季報」であれば、「or条件」を利用できるので、この問題を解消することが可能です。2.利用する側「and条件」しか利用しようとしないスクリーニングを利用する側にも問題があると思います。「and条件」は「より完璧を求めて」というスタンスであり、最も極端な話をすれば「銘柄選択をスクリーニングだけで完結させたい」という思惑があります。しかし、機関投資家が扱う「クオンツファンド(定量的指標を基に機械的投資を行うファンド)」でもない限り、スクリーニングだけで銘柄選択を完結させることにはどうしても無理があります。特に個人投資家の場合、資金力の制約を考えると、「スクリーニングはあくまでも銘柄調査を効率よく行うための一環として行うべきである」というスタンスにしたほうが良いと思います。スクリーニングにおいて「and条件」を多用すべきでないもう一つの理由は、投資において「完璧」はまず有り得ないという現実からです。「and条件」を多用するということは、その完璧さを追求することにも繋がりかねません。そもそも、個々のスクリーニング条件自体が完璧であるという保障がどこにもないのですから、愚かな経済学者みたく「記号論理学」の中だけで完璧を取り繕っても仕方がありません。どうしても譲れない部分だけは「and」で結合し、それ以外の部分は「or」で結合してみて、あとは個々の銘柄調査に乗り出して数字の裏を取るというのが現実的な判断だと思います。明日は「ポートフォリオ状況」報告をし、その次の回で今回の続きをしたいと思います。今日の言葉:「私にとっての完璧な投資先ですか?そもそも完璧は有り得ないと思っていますが、妄想でよろしければ。独占的事業を行っていて競争が全くなく、常に消費者からのニーズがある財やサービスを提供しており、その財やサービスの事実上の価格決定権が顧客側ではなく企業側にあることは事業素質上の最低条件です。それに加えて、経営者が誠実であることはもちろんのこと、経営者が自社株を大量に持っていて株主と利害を共にすることで株主利益追求のために働いてくれて、資本効率に対する意識が高く、その結果としてのROEが30%以上ある企業を、PBR1倍以下で買うことでしょうか。そして、マーケットの間違いでPBRが1倍割れになれば即座に自社株買いを行ってくれることや、万が一、成長鈍化となれば配当としてきっちりと株主に還元してくれることが条件であるのは言うまでもありません。そんな企業があれば、私はあらゆるところから借金をしてでもこの企業を買います。」(某バリュー投資家I氏の妄想)