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不定期特集「バリューとプライスとノイズ」の第二回です。今回は「株式投資における投資パフォーマンスの測定」について、いくつか考察を行いたいと思います。
株式投資とは、ある1時点においてある他人から企業の持分を購入し、別の1時点において別の他人へ企業の持分を売却することによって利益を得るという特性があります。 これは、株式市場において日常茶飯に行われる「売買」という行為そのものなのですが、実はこの行為が投資パフォーマンスの源泉を非常に曖昧なものにしていると言えます。 ノイズの存在によってバリューとプライスにギャップが生じるため、ごく短期間においては、「バリューの変化」と「時価評価ベースでの投資パフォーマンス」にはミスマッチが生じます。これは、短期間だけでなくある程度の長期間を想定したとしてもそう言える場合があるかもしれません。 バリュー投資家の金言である「株式投資は事業への投資である」という話を、投資パフォーマンスという観点に絞って考えてみたいと思います。 ここでは分かりやすく収益バリューで説明します。収益バリューに基づく企業の価値は、企業の全存続期間に亘って得られる利益分配を現在価値に修正したものです。簡易版バリュエーションモデルである「定率成長モデル」を考えると、以下のことが言えます。 価値=1期先利益÷(割引率-利益成長率) これより、1期先利益・利益成長率・購入価格の3つが所与であるときに期待できる投資リターンは以下のようになります。ただし、投資期間が永久であることを仮定しています。 投資リターン=益利回り(PERの逆数)+利益成長率 例えば、長期に亘って年間5%の利益成長が期待できる企業をPER10倍で購入した場合、長期保有で期待できる投資リターンは年率15%であると言えます。これが「バリューの変化」に相当します。 これに対して、例えば、この企業のプライスが1年間で50%上昇したと考え、「時価評価ベースでの投資パフォーマンス」は50%であったとします。 両者の違い、すなわち、35%の違いをどう解釈すべきでしょうか?定率成長モデルが正しいならば、この35%はノイズであると考えるべきです。 もちろん、「この企業は実は急成長段階であるから、定率成長モデルでの評価は妥当ではなく、2段階成長モデルなどを利用すべきだ」とか「企業のビジネスモデルが変わって新たな成長ステージに入った」という解釈もあります。 そうすることで、投資パフォーマンスに占めるバリューの割合をより正当化できる可能性はありますが、それでもノイズが全くないと言い切れる保証はありません。 上記の事例では、1年間という短期間ですから、なおのこと、投資パフォーマンスはノイズによってもたらされたと考えたほうが妥当かもしれません。 バフェットが考え出した「ルックスルー利益」という概念も基本的には同様です。「オーナー利益」とも呼ばれるこの概念は「その株式を保有することで株主に還元されると期待される経済的実質の伴う年間利益」ということに他なりません。 バフェットの場合、ノイズと十分な距離を置いて株式市場を見ており市場でついているプライスを無視していますので、ルックスルー利益は合理的な投資の意思決定をする際に非常に有効な概念です。 このように、ルックスルー利益とはある程度長期に保有するときに限り有効な概念であり、短期間の投資しか行わないような投資家がこれを考えたところで、所詮ノイズトレーディングの範疇に過ぎないのです。 話は変わります。先日、ある投資家と雑談をしていたのですが「パフォーマンスがプラスの時にはノイズも含めて評価してそれを自分の手柄にするクセに、パフォーマンスがマイナスの時にはノイズを除去して評価するのは潔くないのではないか?」という話が出てきました。 鋭い人は何を言っているのかすぐに分かると思いますが、バリュー投資家が短期的なパフォーマンスが不出来の際に使いがちな言い訳である「保有している企業の本源的価値は変わっていないのだから、一時的なマイナスは気にしない」という部分についての話です。 これについては、「事業を見る目がある程度あって、バリューを自分なりに算定できて、適正以下の価格で買っていて、長期保有になる覚悟が出来ていて、短期の株価変動に踊らされないくらい芯の強い投資家であれば、正当化できると思う」と返答しておきました。 いや。別に、バリュー投資家の投資パフォーマンスの源泉が実はノイズだったということ自体悪いことだとは思っていませんし、結果的にそうなる可能性があることは誰も否定できないのです。そして、ノイズも自分にとって有利であり利用可能だと判断できるのであれば効果的に利用すべきだと思います。 そもそもバフェット張りの長期保有を志している投資家などそうはいないでしょうし、企業の資本政策を支配できるくらいの資金力も我々にはないのですから、最終的には「ある他人から安く買って別の他人に高く売ることが自己資金の増加に繋がる」という側面を、それが例えノイズであったとしても、完全に否定することはできないのです。 ここ1~2年は株式相場が堅調で、私などよりも遥かに高い投資パフォーマンスを叩き出している方も多いはずですが、理論上、「益利回り+利益成長率」以上の投資パフォーマンスを叩き出すというのは、基本的にはノイズの恩恵による部分が大きいということさえ認識していれば良いのだと思います。 バリューに比べて割安なプライスが生じるのはノイズの賜物ですし、それがノイズによってごく短期間でバリューに比べて割高(もしくはフェア)なプライスになることも良くある話です。 しかし、バリューに関する自分なりの根拠が持てない状態で頻繁に売買しているのは単にノイズに振り回されているだけだという点は主張しておきたいと思います。 今日の言葉: 「バリュー投資の意思決定では如何に不要なノイズに振り回されないかが重要であるが、それと同時に、長期の投資パフォーマンスはノイズも含めて自分の実力であることを受け入れる覚悟が出来ていなければならない。」 P.S. バリューとプライスのギャップが生じるのはノイズによる賜物ですが、それと同時に、そのノイズがあるためにバリューとプライスのギャップが必ず埋まるという保障はないというのも事実です。 しかし、グレアムはバフェットに対する「バリューとプライスのギャップは本当に埋まるのか?」という問いに対して「株式市場とはそういうところだ」と答えています。 我々バリュー投資家はその「蓋然性」に賭けているのですから、短期間のノイズは基本的には無視するのが合理的です。 しかし、結果的な投資パフォーマンスはノイズ(いい方向に働くにせよ、悪い方向に働くにせよ)によってもたらされるかも知れませんが、それも含めて自分の実力として受け止めなければならないのではないかとも思います。特に、投資期間が長くなればなるほどそう言えます。
誰も書き込みが無いようですが。。。
バリューとノイズについて、激しく同意します。 儲けのほとんどがノイズによって生まれたものだとしても、それはそれで構わないと思っています。 バリュー投資って、ノイズを利用するという側面が大きいようにも思います。 後日、自分のブログでも少し触れたいと思います。 (2005年05月31日 08時06分39秒)
最近の悪材料に対する過剰反応には驚いています。大量のノイズが混入しているのでしょうね。私もノイズの一人かもしれませんが(笑)。
ファースト住建の連れ安なんて、典型的なノイズだと思います。(2005年05月31日 22時47分55秒)
Gabbianoさん
>誰も書き込みが無いようですが。。。 書き込みありがとうございます。皆さんはこういう話はあまり興味がないのでしょうか?私は銘柄ネタなんぞよりも遥かに興味があるんですが。 >バリューとノイズについて、激しく同意します。 儲けのほとんどがノイズによって生まれたものだとしても、それはそれで構わないと思っています。 バリュー投資って、ノイズを利用するという側面が大きいようにも思います。 基本的にはバリューの変化よりも、ノイズのほうが大きいですから、バリューとプライスのギャップを求めて銘柄選択をしても、投資パフォーマンスがノイズである可能性は否定できませんね。(良くも悪くもです。) このことから、ある単年度のパフォーマンスがバリューの変化以上に良かった場合、そのパフォーマンスが完全に自分の実力だと思うのは傲慢だと考えます。 また、ある程度の期間(個人的には3年~5年)で投資パフォーマンスを測ってそれが芳しくなければ、その要因がたとえノイズであったとしても、それは自分の実力とみなさなければならないのだと思います。 ごく短期間のノイズに振り回されるのは良くないのは明らかですが、ある程度の期間をとればノイズも含めて自分の実力だということを謙虚に受け止めなければならないと思います。 >後日、自分のブログでも少し触れたいと思います。 ブログ見ました。本質的に似た見解だと思います。 (2005年06月01日 07時07分08秒)
konatsu6483さん
>最近の悪材料に対する過剰反応には驚いています。大量のノイズが混入しているのでしょうね。 プライスの変動のほとんどがノイズなんだと思います。悪材料に対する過剰反応は典型的ですね。 >私もノイズの一人かもしれませんが(笑)。 いやいや。そんなことを言ったら、私だってノイズの塊です。そもそも、厳密に「私はノイズトレーダーではない」と言い切れる人など存在しないのだと思います。 >ファースト住建の連れ安なんて、典型的なノイズだと思います。 先月は、業績がよくても下がる銘柄もありますね。このノイズにどう対処するかで、同じ銘柄を保有していてもパフォーマンスが大きく異なると思います。 今は、バリュー投資家としての素養が問われている局面なのかもしれません。 (2005年06月01日 07時12分03秒) │<< 前へ │次へ >> │一覧 │コメントを書く │ 一番上に戻る │ |