(旧「ハリハリ資料室」001「ハリネズミとは?」後半部より改稿)
■ ハリネズミとは? ■
・科と種
哺乳類の真無盲腸目 Eulipotyphla (食虫目 Insectivora ) ハリネズミ科 Family Erinaceidae は,ハリネズミ亜科 Subfamily Erinaceinae とジムヌラ亜科 Subfamily Hylomyinae に分かれる。ハリネズミとは,ハリネズミ亜科に分類される動物のことである。ジムヌラ亜科に属するジムヌラ(ムーンラット)は,東南アジアに分布する,ハリネズミと近縁の動物だが,針が未発達で,ハリネズミのように全身針だらけではない。
現生のハリネズミ亜科14種は,かつては4属に分類されていた。現在は5属に分けられるが,この14種のうち,一般によく親しまれているものは,数種に限られる。
ヨーロッパでよく知られているのは,どこかタヌキっぽい顔立ちをしたナミハリネズミ(ヨーロッパハリネズミ)West European hedgehog (学名
Erinaceus europaeus )である。西ヨーロッパでは人家近くにも棲息するので,人々によく親しまれている動物である。絵本に登場したり,ぬいぐるみになっているのも,多くはこのナミハリネズミである。
東アジアに棲むマンシュウハリネズミ Manchurian hedgehog (学名
Erinaceus amurensis )は,ナミハリネズミと同じハリネズミ属
Erinaceus に属し,ユーラシアの西端と東端に分布域が分かれているにもかかわらず,外見上もほとんど区別がつかない。人間の手によって持ち込まれたものが日本各地で野生化し,「侵略的外来種」として問題になっているものは,この種であると思われる。
一方,ペットショップで「ピグミーヘッジホッグ」等の名で売られている小型のブリーディング種は,アフリカハリネズミ属
Atelerix のヨツユビハリネズミ
A. albiventris という種だ。本来はアフリカの砂漠地帯に暮らす種である。日本で個人が飼育しているハリネズミは,ほとんどがこの種であると考えて間違いない。
ほかには,大きな耳が愛嬌を感じさせる,オオミミハリネズミ属
Hemiechinus のオオミミハリネズミ
H. auritus もペットとして出回っており,画像なども,ヨツユビハリネズミについでよく見られる。
・ 形状と習性
ハリネズミの特徴と言えば,何と言っても背中一面を覆う針である。
危機に際しては体を丸めて頭と四肢を隠してしまい,全身の針を立てて身を守る。針の長さは2~3センチ弱である。
体長は種によって異なるが,西ヨーロッパに分布するナミハリネズミで20~30センチ,ペットショップでよく見られるヨツユビハリネズミで14~21センチになる。
丸まった状態で,体を揺する程度のことはできるが,自分の力で長い距離を転がることはできない。また,その針で敵を攻撃するなどということもまずない。
昆虫やミミズ,ナメクジなどを主に食べるが,他の多くの食虫類とは異なり,植物質のものも口にする。
寒い地方では冬眠するが,乾燥地帯に棲むものには,夏に夏眠をする習性がある。
・分布
14種のハリネズミは,ユーラシアとアフリカ--具体的に言えば,朝鮮半島・中国を含む東アジアから中央・東南アジアを経て中東地域までのアジア,さらに西はブリテン諸島,南は南アフリカに至るヨーロッパ・アフリカ大陸,要するに,シベリアを除く旧大陸ほぼ全域にわたって分布する。一方,南北アメリカ大陸やオーストラリアには自然分布しない。
森林や草原,乾燥地帯のほか,分布地域の多くでは,人家の近くにも棲息し,身近な小動物として親しまれている。
上記のように,中国・朝鮮半島に分布する一方で,日本には,先史時代の化石は発見されているものの,現在は自然分布しない。だが,一部地域では,静岡県の伊豆地方や神奈川県の小田原市などいくつかの地域で,ペットとして輸入されたマンシュウハリネズミの帰化が報告されており,それらの地域では,人家の近くでも野生化したハリネズミの姿が見られることがあるが,国や地方自治体によって,駆除が進められている。また,ニュージーランドにも,人為的に放されたナミハリネズミが定着している。
・人とのかかわり
ヨーロッパでは,ハリネズミはウサギなどと同様のありふれた小動物で,絵本や物語にもしばしば登場する。
そのわりに,たいていの場合は人畜無害な小動物として,あまり関心を払われてこなかったようだ。ほぼ唯一の例外は,ロマ(いわゆるジプシー)の人々で,彼らはある種のシンパシーと思い入れをもって,ハリネズミを愛するとともに,彼らを特別のご馳走として,食膳にも供してきた。ヨーロッパのハリネズミは,街中では道路の横断中に車に轢かれるようなことも多く,最近では,自然保護に関心の高い英国やドイツで,要保護動物として注目されている。
日本では,1990年代後半あたりからか,ハムスターを中心とする“ネズミ系”人気の高まりの中で,ペットショップなどでも普通に見られるようになり,飼っている人もそれほど珍しくはなくなっている。同時に,テレビCM等やさまざまなグッズの意匠にも,しばしばハリネズミの姿が見られるようになってきている。
(2001.09.18. 最終推敲:2011.06.29.)