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本当の労働者にはちょっと。地味で真面目。そしてその限界。
アンチハリウッドが隠れテーマなのかも知れません。享楽性を“粛清”したような映画です。“芸術”作品の流れでもなし。強いて言えば記録映画に近いでしょうか。 一言で言えば“地味”。戦闘シーン満載の革命映画なのに“地味”な印象です。本映画中、政府軍の列車転覆シーンがあるのですが、世界で最も地味な列車転覆シーンではないでしょうか。 題材が題材ですからね。ある意味、この映画監督は誠実な人柄の方なのでしょう。煽ったり、誇張したりする事なく撮られています。エライ。 でもこれ、商業映画なんだよね。「打倒資本主義!!」って言いたいのは判るけど、そもそも、この映画そのものが“商品”。「商業行為」として見るに、払った料金に見合った映画かどうかと言うと・・・(´ヘ`;)(御免。日本は特に映画の値段が高いのよ)。 ゲバラが共感した「額に汗して働く」労働者が仕事帰りや休日に見たがるとは、とても思えない映画。皮肉な話です。左翼の人が真面目に真面目な革命家の生涯を追うと、反商業的映画になります。これは必然でしょうか。 (以下ネタバレは無いつもりですが、気になる方は読まないで下さい) 本映画は二部作中の第一作で、キューバ革命が成就するまでを描いたのが本作。ゲバラの死までを描く第二作『39歳別れの手紙』の方が少しはマシだと思います(カンヌでは二本4時間ぶっ続き上映だったらしいが、ちょっとねぇ。「真面目さの大暴走」って感じ)。 ゲバラ役のベニチオ・デル・トロ氏は25キロも減量して役作りに挑んだそうですが、う~ん、あんまり似てない(T.T)。 本映画は「ゲバラマニア」とスペイン語学習者には、お勧めです(戦場シーンで簡単な構文のスペイン語会話が頻出するよ。理解出来て、一寸感動)。 どうしても見たい方は、予め基礎知識を仕入れてから観に行った方が良いです。映画中に特に説明はないので、「ゲバラ入門」映画としては不向き。 その他、以下の点にご注意を。 この映画はカラーのパートとモノクロのパートが交互に出て来ます。カラーのパートは1956年グランマ号上陸から1958年サンタ・クララ制圧までの革命戦争の部。間に挿入されるモノクロ(記録映画のような効果を与える為)のパートは革命成功後の、1964年国連総会演説の為のニューヨーク訪問時が舞台です。 それから劇中「フィデル」という人名が度々登場しますが、これは「Fidel Castro」つまりキューバの独裁者カストロの事(字幕を工夫すれば良いのに。他、白地に白の字幕もあり。強制収容所送りですよ、字幕係り)。 さらに言えば、登場人物のほぼ全員は「むさいオッサン」で、しかも同じモスグリーンの戦闘服。精神集中しないと誰が誰やら判らなくなります(ヒゲの生え方が識別の手掛かりになるよ)。 ちょっと面白かった点。 「地味な映画」と初めに書きましたが、「革命家の地味なお仕事」描写がちょっと良かった。延々山中でゲリラ戦を展開していく訳なんですが、どうでもいい事で部下が面倒事言ってくるの。「誰それの付けたあだ名が気に食わん」とかね(天下国家と無縁の、このレベルの低さ(^o^)。そういうトラブルを地道にお話聞いてやって解決していくゲバラさん。「闘う中間管理職」って感じ。パートさんの管理をやらせると上手いのではないか。 看過してはいけない点。 ゲバラの国連総会演説シーン。彼ははっきりと「私は処刑してきたし、今後も必要とあれば処刑する」と演説しています。事実彼は政治犯収容所を建設し、600人近くの人々を処刑しています(というより、それ以前に大量の政府軍兵士を直接殺害している訳ですが)。 彼は反戦論者ではありませんでした。むしろ必要とあれば銃を取って積極的に自分から戦争を起こします(彼はわざわざ他国に渡りゲリラ戦を指揮しています)。 また、彼は死刑反対論者でもありませんでした。むしろ必要とあれば積極的に死刑を行います(本映画でも出てきますよ)。 そしてこの事をはっきりと公言しています。誤魔化しはしません。 チベットにおける中国政府の大量虐殺を「自治権拡大」などと珍用語にすり替え誤魔化す、故筑紫哲也のような卑劣漢では無いのです。 また、彼はソ連に対してもはっきりと批判しています(その結果どうなったかは、第二部で)。 独裁国家の権力者、習近平の御尊顔を拝して、「中国は自由の国」などと明白な嘘を平然と垂れ流す、田原総一朗のような破廉恥漢でも無いのです。 日本に生息している「ニポンサヨク」という珍人格集団(“思想”とも実は関係ない)とは、全く別次元の人物なのです。 (しかし残念ながら、本映画を「ニポンサヨク」がメディアで紹介する際には、「左翼」「共産主義」と一括りで、あたかも自分達の仲間扱いではしゃぐ事でしょう。) ゲバラは筋を通す、誠実な人物だったのです(思想とは別にしてね)。 この「筋を通す」人柄を示すエピソードは本映画でも随所に見られます(ラスト、赤いオープンカーのシークエンス等)。 そして、ここにゲバラ個人の悲劇の種があります(また一方、ゲバラのような人物がおらず、珍集団「ニポンサヨク」が跋扈する日本の悲劇もあります。こっちは「劇場外で」ですが)。 ではこの「筋を通す」人物が建国に尽力した国、共産主義国家キューバがどのような国になったのか(明白な一党独裁国家で、言論の自由はありません。「世界報道自由ランキング」で、167ヶ国中161位。ネットも検閲ありとの事)。 人柄だけじゃ駄目なんですよねぇ/(>.<)ヽ。 もしくは「共産主義思想の本質的な抑圧性」(「共産主義者が悪人だったから」若しくは「たまたま」地獄が生まれたのではなくて)。 本映画を見終わって、少し歴史の知識があれば暗澹たる気分になるかと思います。劇中、ゲバラが地味に頑張っているだけに辛い。 ですが「蟹工船だぁ~、ワーキングプアだぁ~」と浮かれ騒ぐ「ニポンサヨク」やら「マスコミ」やらよりは、陰鬱な気分になる人の方が、ずっとマトモではないでしょうか。 歴史の“出口”なんか見えてないんですからね(どっかに“正解”があると思って“思考”しちゃ駄目です)。 という訳で本映画は、「ニポンサヨク」の呪縛が解ける切っ掛けとして(本来は)見られるべき映画でしょう。 おまけ。 本映画中にゲバラが「マリコン」と言うシーンがあり、訳が「タマ無し」となっていましたが、これは正確には同性愛者蔑視の言葉なのです。ゲバラも時代的意識の制約は受けていたのでしょう(良い子は使っちゃいけません)。神格化してはイカンです。 『20世紀救世主伝説、ゲバラの拳』サンタ・クララ解放編(^O^)。 誰か原哲夫氏にマンガ化頼んでくれないかな。「ゲバラ暴力革命はいいぞ」 ああ、逞しき資本主義。Tシャツお一つ如何ですか(^o^)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年12月03日 00時53分52秒
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