大量保有報告書
7月18日にBNPパリバが、アーバンコーポレイションの株式の39.1%を保有したという、大量保有報告書を提出しました。 提出者EDINETコード:E11480 提出者名称:ビーエヌピーパリバセキュリティーズジャパンリミテッドこの大量保有報告書には疑問点だらけなのですが、とりあえず大量保有報告書のルールに関して、確認したことをまとめます。1.大量保有報告書のルールに関して・保有株式等にCBを含むか?6月26日にアーバンはBNPパリバに対して、300億円のCBを発行することを発表しました。(新株予約権の一部行使は不可)新株予約権を持っていて、まだ株式に転換していない場合に、大量保有報告書での扱いはどうなるのでしょうか?結論は、転換した場合の潜在株式数を、保有株式等に含めます。大量保有報告書の様式には、「新株予約権付社債権(株)」という欄があり、ここに記載されます。金融商品取引法第27条の23によると、新株予約権による株式に換算した株数も含めることになっています。・保有割合の計算方法上記金融商品取引法第27条の23の4項を見ると、保有割合の計算にあたっては、分子分母両方に、当該保有者による潜在株式数を含めるようです。それにしても法律の文章って、わかりにくいですね。東海財務局の説明の方がわかりやすいです。 株式等保有割合 =(自己保有分の株式数・潜在株式数+共同保有者分の株式数・潜在株式数) ÷ (発行済株式等総数+自己保有分及び共同保有者分の潜在株式数)となっています。・デリバティブ契約によるCBコールオプションの扱い大和証券のページにある2005年11月21日付け開示情報、「株式会社スクウェア・エニックス2010年満期円貨建転換社債型新株予約権付社債を対象としたデリバティブ契約に関するお知らせ~ SPSプログラムの活用によるファイナンスソリューション ~ 」が参考になります。この資料を見ると、以下のことがわかりました。-デリバティブ契約によりCBコールオプションを持つと、潜在株式として 大量保有報告を提出する義務が生じる。-CBコールオプションを買いと売りの両建てにすると、実質的には相殺されるが 大量保有報告では売りの分を差し引かず、買いの分だけが報告される。-CBコールオプションの所有者が(売り買い両建てなどの結果)複数存在する 場合には、売りが相殺されないため、買いによる潜在株式数がダブルカウント されることになる。2.疑問点まずは今回の大量保有報告書を、重要なところだけ簡単に整理しておきます。 提出者1:ビー・エヌ・ピー・パリバ・エス・ア 保有内容:新株予約権付社債権(株) 87,209,302 備考:共同保有者間で引渡請求権等の権利が存在するものとして控除。 提出者2:ビー・エヌ・ピー・パリバ・アービトラージ 保有内容:株券又は投資証券等(株・口) 87,209,302 備考:新株予約権付社債権には記載がない。<疑問1>ビー・エヌ・ピー・パリバ・アービトラージの保有株はCBの転換?提出者2のビー・エヌ・ピー・パリバ・アービトラージには、新株予約権付社債は記載されておらず、株券として報告されています。時価よりも高い、344円の行使価額で、CBを転換したのでしょうか?それともCBの転換ではなく、発行済みの株式を買い付けたものでしょうか?CBを転換したのであれば、発行済み株式数が増えているはずですが、増えていません。<疑問2>CBはどこに行った?アーバンからはビー・エヌ・ピー・パリバ・エス・アにCBが割り当てられたのですが、これは共同保有者間で引渡請求権等の権利が存在するものとして控除されています。共同保有者とはビー・エヌ・ピー・パリバ・アービトラージだと思いますが、こちらには記載がありません。CBはどこに行ったのですかね?なお、先ほど参考事例として書いた大和証券によるスクウェア・エニックスの件の大量保有報告書では、新株予約権付社債券として複数の保有者で、二重に記載されていました。<疑問3>保有割合の計算が変保有割合を計算する時には、分子と分母の両方に、潜在株式数を加算することになっています。しかし分母分子ともに、潜在株式数は加算されていません。もう転換されていて、潜在株式はないのですかね? 転換したのであれば発行済み株式数が増えていないとおかしいのですが。<疑問4>TOBしなくていいの?現在ビー・エヌ・ピー・パリバ・アービトラージは、株券を38.4%(共同保有で39.1%)持っていることになっています。3分の1以上の株式を買い付けるためには、TOBをしないといけないはずです。(さらに、所有割合が3分の2以上になる場合には、応募株式全株の買い付け義務があります。)TOBしなくても良かったのでしょうか?保有割合の計算が間違っているのかな?保有株式数87,209,302 ÷(発行済み株式数227,071,645 + 潜在または転換済み株式数87,209,302)= 28.1%これだと、3分の1以下なのでTOBは不要ですね。そのうち、追加の大量保有報告書や、もしも今回の報告書に誤りがあれば変更報告書が出てくると思います。その時になれば、疑問の一部は解けるかもしれませんね。