カテゴリ:ウォール街から
前号で、今回のサブプライム住宅ローン問題の本質は「審査の甘さ」にある事、そしてその理由をご説明しました。「審査の甘さ」が問題である事は、現状を見ても明らかです。今一度、第191回 サブプライム住宅ローンの真実(1) (2007年3月23日) でお示ししたチャートをご覧いただきたいと思います。
2006年以降、30社を超える住宅ローン専門会社が破綻・廃業に追いやられるか、買収されるという状態になっています。甘い審査を行った主体が退場を命じられるという、極めて分かりやすい顛末です。 住宅ローン専門会社が危機に陥った経路は大きく2つあります。第一に、住宅ローンを証券化して売却しても、貸し出してから90日以内に債務不履行に陥った場合はその証券を買い戻さなければならないという条件が付いています。第二に住宅ローン専門会社が金融機関から融資を受ける際、保有している住宅ローンが担保となっていますが、今回担保の価値が大幅に下落し、追加証拠金が必要になりました。多くの住宅ローン会社はこの2つを満たす資金が足りず、退場となってしまった訳です。 次に投資家です。住宅ローンを証券化した、いわゆるモーゲージ証券の価値が下落した事によって投資家に損失が出ています。しかしそもそも、サブプライムのモーゲージ証券を好んで保有しているような投資家は、そのリスクを把握しているはずです。確かに最近の債務不履行率はここ数年で最も高くなっています。しかしそれでも、実は2000年や2001年よりも債務不履行率は低いのです。また上記のように、早期に支払い不履行となるようなひどいケースについては売り戻しができるのです。 金融にはクレジットサイクルというものがあり、数年に一度はこのように悪いサイクルが来るものなのです。そのリスクを補うために、サブプライムのモーゲージ証券には高い利回りが付いています。そのようなリスク・リターンを理解していない投資家がわざわざこのような証券に投資していたとは思えません。 残る主体、金融機関、住宅ローン借入人はどうでしょうか?私の知る限り、住宅ローン専門会社ではない金融機関が破綻したという話は聞いた事がありません。金融機関は担保価値がなければ住宅ローン会社への融資を打ち切ればよいだけです。またサブプライムはともかく、普通に信用力のある人が住宅ローンの申請を断られる、という事態も全く起こっていません。 結局の所、世の中でこれだけ騒がれたサブプライム住宅ローン問題は、一部サブプライム住宅ローン専門会社の退場、そしてハイリスクを覚悟の上でハイリターンを目指していた投資家が損失を被った、実はそれだけでもう殆ど決着が付いてしまっている問題だと考えています。 最後に、カントリーワイドという、住宅ローンを得意とする金融機関でニューヨークトップを務める友人が、最近話した際に言っていた言葉をご紹介しておきたいと思います。 「ひどい審査をする業者がいなくなったお陰で随分ビジネスがやりやすくなったよ」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.04.27 09:29:29
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