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2009.11.30
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最近の円高進行を受けて円売り・ドル買い介入の可能性が報じられるようになりました。20年以上市場に携わっている者として、私は「勉強もしないで成績表の値が気に入らないから書き換える」ような為替介入には大反対です。今回は、日本が失敗を繰り返さないよう、為替介入がいかに愚策かを出来るだけ多くの方にご理解いただきたいと思います。

日本の外貨準備高は現在、1兆ドルを超えています。恐らく約9割が米ドルで占められているでしょう。また、恐らく取得原価は平均1ドル=110円前後でしょう(そもそもこのような重要な情報が納税者である国民に公表されていないのも問題です)。現在1ドル86円とすれば、約22兆円の損失が発生しています。「勉強もしないで成績表の値が気に入らないから書き換え」てきたのですから、当然の結果でしょう。アメリカで外貨準備にこの10分の1でも損失が出れば議会は引っくり返ってしまうでしょう。しかし日本ではこの責任を問う声は出てきません。

それでは一体この損失は誰の責任なのでしょうか。過去為替介入の必要性を訴え、それを受けて決断、実行した人、特に2003-4年にかけて30兆円とも40兆円とも言われる異常な為替介入を実行した人達でしょう。しかし今、その人達は現政府にはいません。今の日本のシステムでは、担当が数年で代わってしまう、後で責任を問えない人達がこのような重大の国家の損失につながる決断をしてしまっているのです。

日本経済が円高になって困るのが分かっているのですから、むしろ日本政府はドル売りヘッジをして、円高になっても国民が困らないようにしても良いくらいではないでしょうか。しかし現状は輸出企業は困るわ、外貨準備で巨額の損失が出るわ、ダブルパンチの状況になってしまっているのです。

為替介入がいかに愚策かをより多くの方に分かってもらうために、簡単な例でお示ししたいと思います。ミカンの農家とオレンジの農家があったとします。ミカンは1個50円、オレンジは1個100円。交換比率(オレンジ:ミカン)は2.0です。ある理由でミカンの市場価格を下げたいミカン農家がこの交換比率が気に入らず、交換比率2.5でミカン売り・オレンジ買いを実施したとします。市場にはどのような影響が出るでしょうか? オレンジを高く売りたかった農家が喜んでオレンジを売ってくるでしょう。また市場に在庫を抱えてきた小売業者も喜んでオレンジを売りに出してくるでしょう。人々の柑橘類に対する嗜好は変わらないでしょうから、こうしてオレンジ売りが殺到し、一定期間経過後、交換比率は2.0に戻ってくるはずです。そしてオレンジを抱えたミカン農家には損失が発生します。

為替でも同じ事です。為替介入によって市場の価格を歪めようとしても、高くドルを売りたかった輸出業者がドル売りを出し、または海外のファンドがドル売りで向かってきて、一定期間経過後はもとの為替レートに戻るはずです(海外のファンドを喜ばせるくらいだったら、輸出業者に補助金を与えるほうがまだマシで、しかも安くつくでしょう)。この「一定期間」は時に一日であったり数年であったりする事があります。しかし現在、日本政府がこれまで円売り・ドル買い介入を実施してきた為替レートよりも円高にあるという事が、何よりも為替介入が愚策であった事を証明しているのではないでしょうか。

今大切なのは、昨年来起こっている事を国際的観点から捉える事です。アメリカは今年春以来、73兆円規模のオバマ景気対策を実行する一方で国債を増発、その国債は連銀が購入してきましたから、結果として市場にはドルが大量に供給されたままとなっています。ヨーロッパも同じような事をやっています。中国はそのドルに対して管理相場制をとっています。即ちこのような状況で、日本が何もしなければ円高が進行するのは火を見るより明らかです。そして通貨高が進行するという事は、世界各国から失業が輸出されてきている事に他なりません。

では円高対策というのはどのようにすれば良いのでしょうか? 先ほどのミカン、オレンジの例で示せば、方法は大きく2つあります。一つはミカンの味を落とす事。通貨で言えば金利を下げる事でしょう。しかし金利については円もドルもほぼゼロに張り付いていて、これ以上の事はできません。ミカンもオレンジも味は限界まで落ちていて、これ以上は落とせないという状態なのです。残るは一つの方法しかありません。ミカンの供給を極端に増やす事です。ミカン農家が頑張って、一生懸命努力して、ミカンの生産を増やしていく事こそ正攻法の円高対策なのです。

私は毎日100人近くの方が自ら命を絶ち、そしてその多くの理由が経済問題であるという日本の現状に耐えられません。既存の制度にとらわれて既存の枠組みの中でしか円の供給策を考えられない通貨当局には大きな不満を感じています。アメリカでは財務省と連銀が結託して、既存の枠組みという制約がありながらも、その合間を巧みに突く形で通貨供給策を実行しています。私は日本でも現行の枠組みで出来る事はまだまだあると考えていますし、既存の枠組みにとらわれなければ思い付く策は沢山あります。そもそも人の命に比べれば既存の枠組みの重要性など二の次でなければならない筈です。現在日本の通貨当局に求められているのは既存の枠組みにとらわれない創造力であって、少なくとも「勉強もしないで成績表の値が気に入らないから書き換える」ような為替介入ではない事を強調したいと思います。





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最終更新日  2009.12.08 21:02:55


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