カテゴリ:新録かきおろし
「活弁」のソノシートでしか知らないので、(【参照】)
↓この本が欲しいんだけど、なかなか見つからないんですよ。 レオン・サジイ:著/久生十蘭:訳『ジゴマ』中公文庫(1993.12) 1993年の本なのに、 どこかで出くわさない限りは、一向に出くわさない。 現物を見ていないから、値段が高くなっているのか、 安いままなのかも分からない。 ところが、文庫版を見つけられないでいるうちに、 なぜか「幻影城」のバックナンバーが手に入ってしまいました。 創刊号と第2号で、30円ずつ。(それは確実に、安い!) そこに前・後篇で久生十蘭:訳の『ジゴマ』が掲載されていて、 つまりテキストとしてだけなら、文庫版がなくても、もう中身は読めてしまうんですよ。 「探偵小説専門誌 幻影城」1975年2月号(創刊号) 巻末長篇「ジゴマ:前篇(170枚)」レオン・サヂイ:原作/久生十蘭:訳/松野一夫:画 資料「怪人たちの系譜 "ジゴマ" から "ジャッカル" まで」石上三登志 「探偵小説専門誌 幻影城」1975年3月号(創刊第2号) 巻末長篇「ジゴマ:後篇(200枚)」レオン・サヂイ:原作/久生十蘭:訳/松野一夫:画 資料「探偵劇のことなど」阿部主計 「幻影城」って、オレは現物は初めて見たんだけど、 こんな本だったのか。 (「絶体絶命」は全6号を揃いで買っていましたけどね。) ずいぶん生硬な感じの雑誌だけど、 実は今までは、もっともっと生硬なイメージを抱いていたんですよ。 (【参照】)(【参照】)(【参照】) * その「幻影城」創刊号に載っていた作品解説 『久生訳 "ジゴマ" について』(浅井健)によれば、 久生十蘭:訳『ジゴマ』は、 「新青年」1937年4月号の別冊附録として訳出されたもの。 (その文庫判の別冊附録は、そのままの形で【博文館文庫】としても出版。) レオン・サヂイ:原作/久生十蘭:訳『ジゴマ』博文館文庫(1937.07) (1937年、昭和12年といえば「新青年」編集長は、 ビーフシチューが大好きな水谷準。 長谷川兄弟と同様に、久生十蘭こと阿部正雄も、 函館時代からの友人である水谷準の紹介で、作家の道に入った人である。) (【参照】)(【参照】)(【参照】) それを「幻影城」が1975年になって、前・後篇で再録したわけですな。 さらに「幻影城」の再録テキストを元にして、 1993年の中公文庫版が出版されているわけである。 『ジゴマ』の後、久生十蘭が翻訳した長篇探偵小説は、 「新青年」別冊附録として4冊が刊行されている。 (それらも、そのまま【博文館文庫】になっています。) スーヴェストル&アラン:原作/久生十蘭:訳『ファントマ』(1937.06) #スーヴェストル&アラン:原作/久生十蘭:訳『第一ファントマ』博文館文庫(1937.10) ガストン・ルルウ:原作/久生十蘭:訳『ルレタビーユ』(1937.07) #ガストン・ルルウ:原作/久生十蘭:訳『第一ルレタビーユ』博文館文庫(1937.10) スーヴェストル&アラン:原作/久生十蘭:訳『第二ファントマ』(1937.08) #スーヴェストル&アラン:原作/久生十蘭:訳『第二ファントマ』博文館文庫(1937.11) ガストン・ルルウ:原作/久生十蘭:訳『第二ルレタビーユ』(1937.09) #ガストン・ルルウ:原作/久生十蘭:訳『第二ルレタビーユ』博文館文庫(1937.11) 1975年の夏には、「幻影城」の『ジゴマ』復刻に影響を受けたのでしょう。 『ファントマ』『第二ファントマ』を1冊の合本にして、 単行本として出版していたところもありました。 ピエール・スーヴェストル&マルセル・アラン:原作/久生十蘭:訳『ファントマ マチルド・ド・ヴィブレエ男爵夫人殺害事件』コーベブックス:南阿叢書(1975) もう1本、久生十蘭が翻訳した長篇探偵小説に ボアゴベイ:原作『鉄仮面』があります。 これは「新青年」の別冊附録ではなく、 第1部だけを訳して「名作」1939年10月号に発表。 手元にある「幻影城」掲載の解説では 「第1部で終わったため、単行本化されていない」とありますが、 …あれ? ↓こういう本が出ていたんじゃないの? ボアゴベイ:原作/久生十蘭:訳『鉄仮面』博文館:世界伝奇叢書(1940) どっちにしろ、後に久生十蘭は『鉄仮面』を翻訳作品としてではなく、 自ら再構成したオリジナル小説『真説・鉄仮面』として、 「オール讀物」(1954.01~1954.10)で連載。 死後に単行本化された桃源社版(1969)、 三一書房の『久生十蘭全集』第5巻(1970)を経て、 ↓1997年に文庫化されています。 久生十蘭:著『真説・鉄仮面』講談社:大衆文学館(1997.05) * 【追記】 ほぼ「翻案」に近い久生十蘭の『ファントマ』とは別に、 わりと原著のストーリーに忠実な『ファントマ』翻訳書は、 ハヤカワ文庫から出ています。 スーヴェストル=アラン:著/佐々木善郎:訳『ファントマ』ハヤカワ文庫NV(1976.01) P・スーヴェストル&M・アラン:著/佐々木善郎:訳『ファントマ対ジューヴ警部』ハヤカワ文庫NV(1978.04) P・スーヴェストル&M・アラン:著/伊東守男:訳『ファントマの逆襲』ハヤカワ文庫NV(1978.05) * 久生十蘭の『ルレタビーユ』は一度も復刻されていないんだなあ。 べつに、自由に翻案した久生十蘭のバージョンに頼らなくても、 真っ当な訳書が他に、いくらでも出ているから…だろうなあ。 ガストン・ルルー:著/日影丈吉:訳『黄色い部屋の秘密』ハヤカワ文庫HM ガストン・ルルー:著/日影丈吉:訳『黒衣夫人の香り』ハヤカワ文庫HM お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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