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2006年10月20日
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■ユニバース(組み入れ候補銘柄群)について

 年金資産や投資信託などを運用する機関投資家の場合、ポートフォリオの組み入れ対象を、たとえば「東証一部上場銘柄」とか、その中から一定の条件に該当する倒産リスクの高い銘柄を除外する、といった具合に、あらかじめ制限する場合がある。このポートフォリオの組み入れ候補となる銘柄群のことを、運用業界ではしばしば「ユニバース」あるいは「銘柄ユニバース」と称する。この範囲の中で、リサーチを行い、良ければポートフォリオに組み入れる、という考え方だ。また、いわゆるクオンツ運用(数量分析的な運用)の場合、ユニバースはコンピューターへの入力条件の一つとなり、この中から自動的に銘柄が選ばれて、ウェイト付けされることが多い。この際に、最適なポートフォリオを計算するプログラムのことを「オプティマイザー」と称する。

 年金運用コンサルタントなどが、運用会社の運用プロセスに関してヒアリングを行う場合、先ず、ユニバースをどのように決めて、ここからどのように投資銘柄を絞り込み、更にどのようにウェイト付けするのか、という手順で質問することが一般的だ。ユニバースをどのように決めているか、ということは、運用プロセスを理解する第一歩になる。個人投資家の場合は、自分の運用を他人に説明する義務があるわけではないので、「ユニバース」を意識しないことが多いかも知れないが、投資信託の選択などでプロの運用を評価する際には、ポイントの一つになる。

 それでは、実際に運用を行う場合に、ユニバースをどのように決めたらよいか。原則として考えておくべきことは、次の三点にまとめることが出来る。

ユニバース構築の三原則

 理屈の上では、ユニバースは大きいほどいい、といえる。仮に、割高な銘柄や、流動性の低い銘柄をポートフォリオに入れたくないとしても、それは、マイナスの期待リターンや、大きな取引コストがあるから、ポートフォリオから除外されるという形で処理されるべきであり、ユニバースから除外する必要はない。ポートフォリオの効用関数を考えると分かるが、たとえば、流動性が低くて「取引コストが大きい」と入力されるような銘柄であっても、たとえば株価が下がったなどの事情で、期待リターンが大きく高まれば、ごく少額ポートフォリオに組み入れることが合理的になる場合がある。また、リスクのコントロールを考えると、除外しようとする銘柄それ自体が魅力的だという訳ではなくとも、他の魅力的な銘柄と組み合わせたときに、リスクを上手く抑えることが出来て、総合的に、ポートフォリオ全体の期待リターンを上げ、リスクを下げる方向に作用することがある。

 一方、現実問題としては、特にクオンツ運用のような場合に、データやプログラムなどの信頼性も考えると、どんな銘柄でも組み入れて良いという割り切りが危険ないし不都合なことがあり得るので、ポートフォリオに組み入れたくない種類の銘柄を、あらかじめユニバースから除外しておいて、最適化計算を行うという考え方はある。ただし、この場合にも、ユニバースを小さく制限する際には、チャンスの可能性を狭めていることを意識すべきだ。

 なお、細かい話だが、オプティマイザーのプログラムによっては、数段階に分けて銘柄数を絞り組むような計算をするものがあり、こうした場合に、ユニバースの大きさと、最終的に目標とするポートフォリオの銘柄数があまりにかけ離れていると、計算結果が思わしくない場合がある。このような場合は、ユニバースの段階で、銘柄数を絞り込むことを考える方がいい場合がある。

 もちろん、いかなる運用スタイルを取るとしても、現在ポートフォリオに含まれている銘柄と、組み入れ候補銘柄の双方に及ぶ全ての銘柄についてできる限りの注意を払うことはファンドマネジャーの義務だ。原則論としては、ユニバースを決める際には、個々の銘柄すべてについてファンドマネジャーが判断して、組み入れの適否を個別に判断すべきである。どのような銘柄が不適当であるかは、最終的には、主観的な判断が必要な問題だが、たとえば、現実的には、制度やファンドの運用制約上買えない銘柄を除外した上で、さらに個々にチェックを行うことになる。

 ここで挙げた三原則の3番目は、案外守られていないことが多い。よくあるケースは、例えば「無配は除外」とか「増益銘柄」とか、或いはある種のスクリーニングによって割高銘柄を除外する、といった条件をユニバースに付けるケースだ。例えば「連続増益」の銘柄のみ、とか「PERが割安ものだけ」といった条件をユニバースに付けると、一見好ましいように見えても、リターンの追求とリスクのコントロールの双方で非常に大きな制約となることが多い。

 一般に、株式のリターンは「予想されていなかった変化」に非常によく反応するのであり、例えば、赤字会社の業績が急速に好転するような場合には、赤字会社を除外したり、無配会社を除外したりしていると、大きなチャンスを逃すことになる。未熟な運用機関が性急に自己の運用の特色を打ち出そうとする場合に、ユニバース・レベルで特色を出そうとすることがあるが、ポートフォリオの自由度に制約を加えることは、運用というゲームを戦う上でかなりの不利になるのでよく考えるべきだ。

 他方、独自にリサーチしていない銘柄はユニバースに加えない、とする考え方も見受けられる。これは、ある意味では筋は通っているが、分散投資の機会が制約されるなど、現実的にはゲームを戦う上で大きな制約となることが多い。リサーチしていない銘柄を組み入れることは無責任だ、との立論はあり得るが、しかし、「手が回らない」という運用する側の都合にファンドの方が合わせられているのだとすると、運用者側が怠慢だ、ともいえる。突き詰めて考えると、全てのチャンスをリサーチしていない運用者の側の分が悪そうではある。

 また、例えば、TOPIXがスポンサーから与えられたベンチマークである場合には、TOPIXの性質を十分に知るためには、東証一部の全銘柄を調査の対象としておくべきだという議論もある。

 現実的には、重点的な調査の対象にする「調査ユニバース」やオプティマイザーにインプットする「ユニバース・ファイル」は、個々のファンドの運用目標を踏まえながら、ファンドマネージャーが絶えずメンテナンスして「ウナギ屋のタレ」のように育てていくべきものだといえる。

 最終的には、ユニバースについては、個々の銘柄を判断せよ、ということと、むやみに制限しない方が良い、ということが原則となる。





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最終更新日  2006年10月20日 14時33分59秒


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