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2007年07月06日
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■その2.「配当割引モデル」

 「株価は、将来の利益(から決まる配当)の、割引現在価値として決まる」、というのが、「配当割引モデル」(「DDM」と略されることが多い。 Dividend Discount Modelだ)の主要なメッセージだ。利益の割引現在価値を考えるなら、利益割引モデルとでもいうべきかも知れないが、両者は、利益も、配当も、どちらも株主のものだと考えると、本質的に同じことだ。

 しかし、たとえば利益の配当性向が50%だとすると、割引率が同じなら、両者は、ざっと2倍は違うのではないか、というご意見があるかも知れないが、利益が将来は全て配当されなければならないとすると、配当の方が、利益よりも、僅かに成長率が大きいはずであり、利益が最終的に株主のものだとする限り、両者は最終的に一致するはずだと考えられる。

 問題は、投資家の要求リターンでもある「割引率」だ。個々の銘柄の、割引率は、どのように決まるのか。また、市場が均衡するときには、これと、各銘柄の期待リターンとが一致するはずだ。これは知りたい!

 だが、この理論的な結論は、先送りされることになる。モダン・ポートフォリオ理論によると、投資家は、合理的であるからして、ポートフォリオの形で投資するはずであり、個々の銘柄のリスクが、「ポートフォリオの中の一銘柄として投資された場合に、どうか?」という観点から評価されて、これに見合うリスク・プレミアムがあり、投資家の要求リターンが決まるはずだ、ということになる。後の話題の先取りになるが、いわゆる、ポートフォリオ理論が、「(ナントカ)プライシング・モデル」という名前を付けられている理由は、個々の銘柄の割引率(要求リターン)がそのモデルによって求められ、将来の利益の予想があれば、適正株価が計算できること、あるいは、市場が均衡していると考えると、個々の銘柄の期待リターンが求められることが、その理由だ。

 さて、リスク・プレミアムだが、株式投資を考える場合のリスク・プレミアムは、どのように決まって、実際、どれくらいの大きさのものなのか。

 株式投資でリスク・プレミアムという場合、短期金利に対する上乗せで考えるのか、長期金利(長期国債利回り)で考えるのか、二通りの測り方がある。現実には、投資の期間や、投資家の考え方によるが、現在、自然に決まっているのは長期金利の方だし、運用を長期で考えるなら、長期金利に対するリスク・プレミアムで考えていいだろう。

 リスク・プレミアムは、最終的には、個々の投資家の判断の中にあると言わざるを得ない。一定のリスクにどれだけのプレミアム(となるリターン)を求めるかは、個々に違いがあっていい。

 たとえば、株式市場のベンチマークに関して、どのくらいのリスク・プレミアムがあるかについては、大雑把に言うと米国には、「6%派」と「2%派」の二つの意見があるといっていいだろう(もう一つ、このシリーズの後の方でご説明するが、リスク・プレミアムは「変化する」と主張する理論が近年登場している)。

 前者は、過去に実現した株式のリターンから見て、これぐらいではないか、また、機関投資家の運用計画を集計的に見ると、やはりこれくらいではないか、という意見だ。後者は、将来の長期的なインフレや生活費のリスクを考えたとき、株式は、これらに対してリスクヘッジ的に働く投資対象であり、そういったことが、投資家に理解されるようになったから、リスク・プレミアムは2、3%でもおかしくないのだ、と主張する。

 これらは、需要サイドから見た議論だが、株式が投資家に与えるリターンの源泉を考えると、利益(ないし配当)の利回りと、その成長率で、株式が、投資家に供給可能なリターンを考えるよりない、という、いわば、リターンの供給サイドの議論がある。

 たとえば、現在の日本株は、東証一部の平均PERで見て約20倍であり、利益水準がこのままなら、現在株式を買った投資家に対して、株式は、年率5%のリターンを供給可能である。

 実際には、これに加えて、利益の成長を考慮しなければならない。ここで利益が均一のペースで成長すると仮定すると、この長期利益成長率と、株式の益利回りを合計した数字が、株式が一年間に投資家に供給可能なリターンの水準ということになる(注;高校の数学Iにある「数列」の等比級数の和の公式から導くことが出来ます)。

 ここで仮に、株式市場(東証一部上場企業)全体の利益成長率が名目GDPの成長率に等しいと仮定して(等しくないと、超長期的には、GDPに占める上場企業の利益が、どんどん膨らんだり、縮んだりする)、これを仮に2.5%とすると、日本株に可能なリターンは、5%+2.5%=7.5%、ということになる。

 たとえば、企業年金基金連合会の運用計画の期待値ターンは、国内株式7%、国内債券2%となっているが、機関投資家の運用計画を見ると、株式の期待リターンは、6%~10%くらいが多く、7%~8%くらいのところに、概ね中心値があることが多い。株式に7.5%の期待リターンが可能、という概算は、現在の日本の株価が、高くも、安くもないことを示しているといえるだろう。

 上記の仮定を数式で言うと、益利回り+名目GDP成長率=長期金利+リスク・プレミアム=株式の期待リターン、ということになる。

 その時々の名目GDPは、必ずしも「長期的にこのくらいと想定される均一な成長率」ではないが、これを予測する上で、投資家に影響している。益利回りと名目GDP成長率を足し合わせて、ここから長期金利を引いて、リスク・プレミアムを求めると、その時々の経済状況に対して、株価(益利回りに影響する)が高いのか、安いのか、の大まかな見当を付けることができる。

 思い切って、具体的な数字を挙げると、5%~7%くらいの範囲だと、株式のリスク・プレミアムは概ね普通であり、「5%なら、株価はやや高い」、「6%なら、株価は全く普通」、「7%なら、株価はやや安い」というくらいが、筆者が近年考えている株価の目処だ。

 いくらか保守的に、「6%派」に近い数字をイメージしており、2%や3%で、運用計画上、株式のリスクは大きく取りたくないという投資家が多いだろうと想像している。ただし、現実は、「リスク・プレミアムは変化する」が正解だろうと思っている。

 DDM、即ち、割引配当モデルは、要は、現在の価値の考え方の基本そのものであり、株式投資に関連する各種の理論の中で、一番使いでがある理論ではないかと思う。ここで説明した、利益割引モデルの考え方もその一つだが、個々の銘柄を評価する際にも、いろいろなモデルを工夫することが出来るし、PERとかPCFR、あるいはPEGといった、一般によく使われている指標を評価する上での、基になる考え方でもある。

 実務の世界でも、DDMそのものないし、その変種が、数多く使われている。割合有名なものとしては、「3ステージDDM」と呼ばれるような、成長率を三段階(初期の成長段階、移行期、長期安定期、に分けることが多い)に分けて評価して、個々の株式の理論株価を求めるようなモデルがある。もっとも、成長株理論のところで述べたように、将来の利益予想は曖昧なので、成長率を細かく区分して推定するアプローチが、実務的にどの程度ワークするのかは疑問がある。

 DDMの考え方は、その他の資産のプライシングにも登場する。債券価格の算出は、キャッシュ・フローの現在価値の計算そのものだし、近年、やっと日本でも市民権を得た、不動産評価の収益還元法も、DDMと同じ考え方に基づいている。

<< その1.「成長株理論」へ
その3.「ポートフォリオ理論」へ >>





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最終更新日  2007年07月23日 10時47分06秒
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