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2010年11月05日
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本連載の第108回「投資信託の入門(下)」に、日本株、先進国株、新興国株のアセット・アロケーションに関する試算を載せた。あれから、1年半程度が経過して、その間にデータが増えた。

そこで、新しいデータを加えてリスク値の前提を計算し直して、改めて、個人投資家向けの主にリスク資産部分のアセット・アロケーションについて考えてみたい。

過去データは、リターンにはそのまま使えない

今回も、日本株はTOPIX、先進国株はMSCI-KOKUSAI、新興国株はMSCI-EMをそれぞれのアセットクラスのベンチマークとして使用する。

今回は、データの始点は前回の計算同様1999年2月だが、データの終点として直近の2010年9月のリターンまでを含めてみた。11年8カ月分のデータである。

まず、初歩的な注意を申し上げておく。

過去のデータを使ってアセット・アロケーションを検討する場合に、リスク・データ(リターンの標準偏差と相関係数)は「まあまあ使える」が、過去の平均リターンを使うことはできない。データ期間が、10年、20年、30年、あるいは60年だろうが、過去のリターンは固有の歴史1個に対応するデータに過ぎないので、その延長線上は、現在から将来にかけての期待リターンの参考にはならない。

また、長期にわたる株価指数のグラフを見ると明らかだが、どの点から始めて、どの点までを観測するかによって、リターンの数字は大きく変わり、これに伴って期待リターンを操作すると最適なアセット・アロケーションは激変する。

これは、年金基金などの運用の世界では常識であり、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)やKKR(国家公務員共済組合連合会)、企業年金連合会などの公的年金も、多くの企業年金も、リスク・データは過去のデータを使うが、期待リターンに関しては、資産毎にリスク・プレミアムを推計し、何らかの主観的な判断も加えた上で、過去の平均とは異なる形で求めることが多い。筆者も、基本的に同じ方法を用いる。

この点、「これは初歩的にダメ」と言わざるを得ないのは、例えば、「国内株a%、外国株b%、国内債券c%、外国債券d%、現金e%」といった調子で決めた特定のアセット・アロケーションを過去の20年なり30年なりのデータに当てはめて、「分散投資の結果、それなりに安定的な運用ができて、まあまあのリターンが実現できました…」といったバック・テストでアロケーションを決めることだ。これは、過去のリターンをそのまま使っているので、参考にはならないし、まして、そのアロケーションで運用が上手く行くことの証明にはならないので注意して欲しい。

計算の前提条件について

1999年2月~2010年9月の期間のデータから求めた、3つのアセットクラスのリスク(標準偏差)と相関関係(相関係数)は以下の通りだ。

リスクは、国内株式(TOPIX)が18.04%、先進国株式(MSCI-KOKUSAI)が19.51%、新興国株式(MSCI-EM)は26.99%だ。前回と大きくは違わないが、先進国株式のリスクが少々増えて(19.11%→19.51%)、新興国株式のリスクが幾分縮んだ(27.05%→26.99%)。

一方、三資産間の相関係数は、国内株式と先進国株式が0.6289、国内株と新興国株式が0.6882、先進国株式と新興国株式が0.8769といずれも強いプラスの相関を示していて、これは前回とほとんど変わらない。世界の株価は強く連動しており、分散投資にとっては好都合でないが、それでも、分散投資によるリスク軽減効果はある程度働くので、内外の株式を組み合わせて投資する意味はある(後述の数字で明らかだ)。

なお、国内債と外国債券のデータは、リスクの大きさ、相関係数共に、KKR(国家公務員共済組合連合会)が2010年に基本ポートフォリオを改訂した際に用いたものを使った。

この種のアセット・アロケーションでは、GPIFのリスク・データが使われることが多いが、GPIFのリスク・データは、過去30数年に及ぶ長期のデータを平均して計算しているので、国内債のリスク値が5%を超えるなど、近年の状況とかけ離れていることに加えて、内外の株価の連動性を過小評価しているなどの問題点がある。この点、KKRで使用したデータは、近年の状況に近づけると共に、特に相関係数には保守的な前提を置いている。

個人投資家の一部には、「(個人は)長期運用なのだから、長期のデータで計算したリスク値がいいのではないか」と考える向きがあるようだが、これは正しくない。

長期間の運用であっても、ポートフォリオの調節は随時可能なのだから、ある程度サンプル数を意識しつつも現時点の状況に近いデータを使う方がいい。現在のアセット・アロケーションを作る際に問題になるのは、「長期にわたる運用期間」ではなくて、取引コストや環境の変化を前提としたポートフォリオの調整速度だ(注:これはGPIFにもいえることだ)。

なお、期待リターンは、国内株式と先進国株式を債券プラス5%のリスク・プレミアムで6%、新興国株式を前回同様8%として(何れも円ベース)、国内債券と外国債券は共に1%とした。

時に運用のプロでも知らないケースがあるが(株式しか経験のない人に多い)、高金利通貨の債券や預金の期待リターンをそのまま円ベースの期待リターンに読みかえることは誤りなので注意されたい。円の債券・預金と外貨建ての債券・預金といずれの期待リターンが勝るかは、基本的には「どちらともいえない」というしかない。誰から見てもどちらかが高いなら、為替レートが調整されるはずだ。

計算結果:リスク資産に積極的な場合

まず、内外の債券に対する投資を考えないくらい、リスク・テイクに対して積極的な設定で(リスク拒否度=0.0075)、最適なアセット・アロケーションを計算してみた。具体的には、エクセルのソルバー機能を使って、ポートフォリオの「効用」を最大化するような資産配分比率を求めてみた。計算に際しては、各資産のウェイトが0%~100%、資産のウェイト合計が100%になるような制約条件を与えている。

リスク値と相関係数の詳細については、表1を参照されたい。

(表1)リスクに積極的で新興国を含むケース

この配分によるリスクの推計値は18.06%と、新興国株を18%近く含むにもかかわらず、TOPIXに100%投資するのとほぼ同じだ。

ちなみに、数字を簡単にするために、「国内株式55%、先進国株25%、新興国株20%」で計算したポートフォリオのリスクは18.22%、期待リターンは6.40%と大差ない。

前回のレポートで、これでいいのではないかと提案した,「国内株50%、先進国株35%、新興国株15%」のアロケーションは、リスクが17.91%(TOPIX単独への投資よりも小さい)、期待リターンが6.3%と、これもまずまず満足が行く結果ではないだろうか。

ちなみに、新興国を含まないケースのリスク値をいくつか紹介すると、国内株60%+先進国株40%だとリスクは16.86%、国内株50%+先進国株50%では16.95%、国内株40%+先進国株60%だと17.19%と、最後のケースでもTOPIXに100%投資するよりはリスクが小さい。

最適化計算ベースでは、たとえば、新興国株式の期待リターンを先進国並みの6%に落とすと、新興国株式はポートフォリオに入ってこない。最適解は国内株式60.5%+先進国株式39.5%でリスク値は16.86%であった。

ちなみに、GPIFのデータでは、日本株のリスク推計期間にバブルとその崩壊の時期が含まれるため、日本株のリスクの方が先進国株式よりも大きく、最適解は「日本株4割+先進国株6割」に近い比率で計算される。

一概にどちらが正しいと言えるものではないが、どちらの前提でも、4対6と6対4の双方が「まあまあ満足できる」範囲に入るので、大雑把な解決方法としては間を取って「日本株50%+先進国株50%」としておくのが簡単だ(分かりようのないことを突き詰めて考えても意味がない!)。

為替ヘッジをしない場合、外国債券は入って来ない

個人投資家、特に、金融資産額に対して人的資本の額が大きい働き盛り前半の個人の場合、金融資産での損失は人的資本の収益で十分カバーできることが多い。金融資産に関してリスクに対して慎重になって、株式と債券の配分を考えなければならないケースは少ないだろう。

しかし、金融資産が潤沢で高齢な個人などの場合は、金融資産の中に、当座に必要な資金以外に、債券もポートフォリオに含めて運用した方がいいケースが生じて来よう。リスク拒否度の数字を大きくして(0.0075→0.015。先ほどの2倍)最適化計算を行って金融資産の配分を求めてみた。

(表2)

リスク資産内の比率を見ると、単体で見た場合にリスクが大きい新興国株式のウェイトが顕著に落ちているが、大まかには、内外の株式のミックス(内外が3:2くらい)と国内債券によって資産配分が行われている。

外国債券は、国内債券と比較するとリスクが大きく、その割には期待リターンが小さいので、今回の前提条件ではポートフォリオに入ってこない。

今回の計算では為替ヘッジを前提としていない。外国株に投資して、さらに外国債券にも投資すると為替リスクがあまりに大きくなる。為替リスクは期待リターンの高い外国株(先進国・新興国共に)への投資に割り当てると効率がいい。

なお、個人投資家の投資(具体的には数億円程度までの資金の運用)で考える場合、外国債券というアセットクラスは、投資信託は手数料が高すぎるし、個別の債券を買うのもリスクや手数料が大きすぎて手を出せないものである場合がほとんどだ。

個人投資家のリスク資産投資のまとめ

リスク資産部分だけの投資配分を考え、先進国株式よりも新興国株式の期待リターンが2%高いという前提で計算すると、最大公約数的には(A)「国内株式55%、先進国株25%、新興国株20%」がいい。ただし、もう少し覚えやすい(B)「国内株式50%、先進国株35%、新興国株15%」でも、そう大きく状況が変わるわけではない。

或いは、「新興国株式は判断が難しいので除外する」と割り切って、(C)「国内株式50%+先進国株式50%」と割り切って運用する考え方もある。

個人の好みで決めるとすれば、筆者は、新興国株式も持ちたいと思うが、新興国の期待リターンに強い自信があるわけではないので、(B)「国内株式50%、先進国株35%、新興国株15%」という比率を選びそうだ(注;実際には、仕事とのコンフリクトを避けるため、この種の運用を自分の資産では行っていない)。

もちろん、(A)や(C)とどちらが勝るかは、「何ともいえない」。






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最終更新日  2010年11月09日 15時19分17秒


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