ドイツ・デンマーク環境行政の旅

不評だったハノーフ ァー万博
 10月30日は、「環境」「新しい世界の創造 『人間・自然・技術』をテーマとしているハノーファー万博の最終日でした。環境をテーマとしながら環境破壊をしていると、ドイツの殆どの環境団体が反対しているということで、大変不評だったようですが、終わりころになって少しづつ見学者が増えたようです。最終日で2時間待ちというような人気の館もありましたが、殆どの館は待つこともなく見学できました。
 説明書きも読めないので、ただただ歩き回り、人混みと映像で疲れただけという印象です。わざわざ外国からお金をかけていくところではないと思いました。
 現地の新聞に水谷八重子さんの着物姿の写真と一緒に「愛知で会いましょう」と書かれていて、今問題になっている国内の愛知の海上の森での環境問題に思い至りました。 
 「ハノーファー万博」は千葉の幕張メッセのような、もともとあった国際展示場を拡張し、開催後の有効利用も約束されているようです。(しかし、ドイツの自然保護団体は、それでもたかだか五ヶ月の万博のために、費やされる資源やエネルギーのムダが大きいと言うことでノーを示した)
 しかし、愛知の場合は「海上の森」というオオタカの住むような、すばらしい自然の残る場所を開発して開催されると言うことで、それこそ環境をテーマに環境を破壊するものだと思いました。 帰ってきてからハノーファー万博は赤字であったと報道されていましたが、環境を破壊し、大きな建物を建て、人寄せし、終われば壊し、大量のゴミを作るようなことは、もう時代遅れだと思いました。
ハノーファーの街は第二次世界大戦で破壊された後復興した大変美しい街でした。道路は広く、歩道や自転車専用道路も確保され、ダウンジャケットに身を包んだ人々が、自転車に乗って颯爽と通勤していました。 また、ハノーファーの市役所は、お城のような大理石の建物で本当にびっくりしてしまいました。

ドイツの廃棄物プラント見学
今回のツアーでは、ドイツとデンマークの二カ国のゴミ焼却場を見学することができました。
 ドイツではハンブルグ郊外の「MVB」という廃棄物プラントを見せて貰いました。焼却の方法は茅野の焼却場と同じような構造になっていましたが、燃えがらの処理、排ガスの処理のしかたが大きく違っていました。
こちらでは、焼却炉でせっかく燃えがらと飛灰に分けても最終的には一緒にして最終処分場に持ち込んでいるのが現状です。
 しかし、「MVB」では とにかく再利用できるものは全て取り出し、他の工場に売るのだそうです。燃えがらは、鉄分を取り出した後、三ヶ月置いておいて化学反応が無くなり、害が無くなってから舗装の材料として他の会社に売る。(全部使うのは、ちょっと心配でした)
 排ガスは洗浄し、フイルターでダイオキシンや有害なものの処理をして、最終的にそこで出た飛灰は州が管理している昔の鉱山に保管しています。
 その後、塩酸、硫黄、石灰などは分離して工業用に売られ、冷却水から出た湯垢も煉瓦の強化剤として使われているとのことです。残念ながらその部分は見せて貰えませんでした。 また、焼却によるエネルギーはハンブルグの市内の回路網に入り、地域暖房として使われています。

ハンブルグ郊外の「自然保護区」
  自然保護団体BUNDが管理する自然保護区を訪ねました。1500ヘクタールのその保護区には森、牧草地、沼地、池などが自然のまま残されています。そこには100種類以上の鳥、狐やリスなどの動物がたくさん住んでいます。昨年は鶴が五羽孵ったということです。 週末や休日などには、赤ちゃんからお年寄りまで、自然を観察したり、自然にふれたりするために訪れるとのことです。私達が行ったときは親子連れの集団がバスで来ていて、元気なかわいい声が森の中に消えていきました。

「環境保護農園」を訪ねて
 翌日には環境庁が管理する「環境保護農園」を訪ねました。昔、農場だったところをそのまま使っていました。
 大人、先生、保母、学生、子どもたちの環境教育のためにさまざまなプログラムを用意しています。そこでは都会では経験できないことをたくさん学ぶことができます。 季節を感じさせる庭園、小鳥を観察する小屋、蜂の巣を見ることができる箱、放し飼いのニワトリ、馬、乳搾りのできる牛、毛を刈ることのできる羊、自然のままの林や池、原木に近いリンゴの木や梨の木。 丁度、小学生低学年の子どもたちが学びに来ていて、林の中の大きな木にさわったり音を聞いたりしていました。また、腐った木のそばで腐葉土を観察し植物と動物の関係、生物の循環などを学んでいました。広い草原の所々にリンゴの木があり、木に登ったり拾ったりしてリンゴの収穫をしていました。収穫した後はジュースやパイにしたり持ち帰ったりします。
 ハンブルグ郊外にこのような場所がたくさんあり、、環境庁が教会や企業の援助を受けながら、子どもたちに自然保護、環境の大切さを学ばせるために運営しています。そのために学校の先生、青少年の研修を将来の環境をどう守っていくかという観点で重視しているとのことでした。
 どちらの施設も、民間の募金やボランテイアの助けを得ながら運営されていましたが、行政の将来を見通した方針と財政的な裏付けがきちんとしている事に感心しました。

海を渡ってデンマークへ
 デンマークは人口5000万人の小さな国ですが、国民がいかに健康な生活ができるかを基本にした環境政策・対策がとられています。
 県と市の担当者の説明、ゴミ焼却炉、住宅のゴミ処理、リサイクルステーションの見学など実際にどのようにゴミ処理が行われているのか見ることができました。
デンマークのゴミ対策の基本は○ゴミを出さない ○ゴミの減量 ○再使用する ○再利用する。できるだけ分別して再利用するものを取り出す。どうしても駄目なものを焼却するか埋め立てるということでした。

地下水を汚染から守る政策
 これから冬に向かうというのに、バスの外には青々と牧草地が広がっていました。デンマークは高い山がないので地下水を飲み水として使っています。その水環境を守るために汚染への厳しい規制があり、その一つが、収穫を終えた畑(砂糖の原料となるビーツが多い)の80%に何らかの種をまくことだそうです。収穫が終わっても土中に窒素やリンなどが残留して地下水を汚染する心配があるので、新たな種をまき、その作物に消費させるのです。これは法律で決まっているのです。
 また、埋め立て処分場は、地下水汚染を考慮して、海岸に建設されています。埋め立て地は海底の高さよりも2メートル深く掘り下げられ、そこに粘土を80センチメートル敷いて固めた上に排水パイプを設置。その上に小石、砂利層をかぶせ、ゴミを4メートル埋めて、覆土し小石を敷いて80センチメートルの粘土をかぶせて、更にその上に植物に適した土で覆土して緑化する。
 埋め立てたものも、いつか化学が発達して安全に処理できるようになったら掘り出すことにするという考えで、「捨てる」のではなく「保管する」という考えなのです。
 
空き缶はどうしているのですか?
 日常的な家庭ゴミは、紙類、ビン、グリーン廃棄物(植物性の生ゴミ)その他のゴミに分けて分別しています。生ゴミは各家庭でコンポストに入れ肥料にします。紙類は再生紙に、ビン類は洗って再利用されます。その他のゴミはどうしようもないゴミで動物性の生ゴミ、ビニールなどです。それぞれ容器に入れ回収してもらいます。
 それ以外のゴミは、各自治体の 分別回収センターに各自持ち込んだり、収集を頼んだりします。自転車、冷蔵庫、パソコン、段ボール、プラスチック、衣類、建築廃材等こまかく分けられています。
 空き缶の事について言わないので「缶はどうするのですか?」と聞きましたら、何とデンマークには缶はないのだそうです。ビールその他の飲料は、リターナル瓶(再使用)の使用を義務づけ、缶飲料は禁止しているのです。
また、瓶についてもデポジット制度があり、瓶を回収機に入れると現金が貰えるシステムになっているのです。

デンマークの焼却場
 デンマークでは、ロランファルスター地方十三自治体のリサイクル環境総合システムの中心施設「REFA」を見学しました。 利用できるものは全て再利用するということでは基本的にはドイツと同じ考えでした。
 熱はこのニュークープの町の地域暖房に使われ、一万人分の電力消費を賄うことのできる発電が行われています。
  スラグ(燃えがら)は分別工場で1鉄分を取り出す。2粒の小さな、環境に悪い成分を残していない物は、路面工事の材料として使います。しかし、必ず上にアスファルトをのせることを条件にしています。3有害物が許容量を超える物は、埋め立て地に埋める。
 それぞれの区分を確認するために、定期的な検査と抜き打ちの検査が行われています。
 最終的に排ガスから出た煤塵(一トンのゴミから十二キログラム)はノルウエーの花崗岩でできている山に保管してもらっていて、いつか無害にする技術が開発されたときに処理するとのことです。
 「REFA」では、二つの炉があり、新しい炉ではダイオキシンの発生を防ぐために、温度が850度に上がるまでは燃料油を使って燃やし、その後ゴミを燃やしゴミを落とすまで燃料を使って燃やし続け、850度を保つようにしているとのことでした。
 EUではダイオキシンの基準が一平方メートル0.1ナノグラムなのが、ここでは 0.000000001ナノグラムだと得意そうに話してくれました。そして、数値が低いのはダイオキシンの発生の原因になる塩化ビニールは分別して燃やさないようにしていることもあると思いました。 
 デンマークでは日本と同じように焼却を中心にゴミ処理を行っていますが、ゴミ焼却をいかにクリーンに行うか、そのためにどのようなゴミは燃やせて燃やしていけない物は何かを徹底して分別して危険物を排除しています。ダイオキシンの発生に対して特に問題になる塩化ビニールの袋は市民の不買運動によって製造中止になったとのこと。以前に作られた塩化ビニール製品は燃やさないで埋め立てているそうです。
 全ての工程を案内して見せてくれましたし、環境対策に、国を挙げて取り組んでいるデンマークでは説明する人も自信にあふれていました。  
 
あちこちに見られた風車
 デンマークの国内のあちらこちらに見られたのが、風力発電のための風車でした。
私達はストアストロム県庁を訪ね、話を聞きました。
 1970年、世界をおそったオイルショック。デンマークは日本と同じに、エネルギーのほとんどを外国に頼っていました。又、エネルギーを火力発電に頼ってきたデンマークでは、CO2排出量も先進国の中でも高い方でした。
 石油ショックという苦い経験を教訓として、エネルギーの自給自足という政策に転換。又、効率の悪い個別暖房から地域暖房に切りかえられています。
 そして、環境汚染に考慮して原発を作らず、又、地球の温暖化を防ぐため石炭、石油の利用を削減しようとしています。
 それではデンマークでは、代わりのエネルギーをどうしようとしているのでしょうか。
 一つに偏らず多面的なエネルギー政策を展開しています。
 その主なものはゴミ焼却熱による地域暖房、風力発電、家畜の糞尿や有機物を発酵させて、発生するメタンガスを燃料とするバイオガス、天然ガス等です。
将来的にはエネルギーの50%を再生エネルギーにする目標を立ててやっていると言うことでしたし、太陽光の利用も促進していきたいと言っていました。
環境とエネルギーは切り離せないと、環境エネルギー省という政府の省庁がその部門を担当し、先の見通しを持った法律を作っているということでした。
先の国会で「原発推進法」を成立させた日本とはなんという違いでしょう。将来の子孫のためにどんな環境を残してやれるか、政府も国民もみんなで考えているということに感心し、日本の現状を思うと何とかならないのかと思いました。
 


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