2009年社会環境委員会行政視察

社会環境委員会行政視察報告
社会環境委員会 伊藤眞智子

1、期日 平成21年 7月1日(水)~7月3日(金)

2、視察先
  ○滋賀県 東近江市
   「菜の花エコプロジェクトによる循環型社会の構築について」
○滋賀県 野洲市
 「自然エネルギーの活用」
 「地域通貨すまいるの実践について」 
○京都府 京都市
 「地域ネットワークによるまちづくり」

3、研修内容と感想
 ○東近江市  あいとうエコプラザ菜の花館

 「菜の花プロジェクト」の取り組みの経過について
東近江市は、平成17年1市4町が合併した市です。「菜の花プロジェクト」は合併前の愛東町で始まった取り組みです。
 この活動の始まりは琵琶湖の環境悪化による赤潮発生です。このことをきっかけに住民の環境問題への意識が高まりました。
 琵琶湖の水質保全のため昭和56年から「愛の田園あいとう消費生活学習グループ」がビンや缶とともに廃食油を回収し石けんへのリサイクルを行ってきました。さらに最終処分場の埋め立て地がいっぱいになるという事態になり、住民のゴミ問題への意識が高まり、昭和61年住民主体の資源回収活動(分別、収集、運搬)を住民が行う「あいとうリサイクルシステム」が確立しました。
 しかし、無リンの合成洗剤の発売により石けんの使用率が低下しました。新しい利用の道として環境生活協同組合との連携で、燃料化への取り組みが始まりました。 実験や使用テストを経て、平成8年、環境庁や滋賀県の補助を受けてBDF(バイオデイーゼル燃料プラント)が完成し廃食油の燃料として公用車等から利用が始まりました。
 廃食油燃料化を初めて3年目、環境生活協同組合の理事の「ドイツのように菜の花で車を走らせよう」との提案で、「あいとう菜の花エコプロジェクト」の取り組みが始まりました。菜の花の苗作りが始まり、環境学習で子ども達も係わるようになりました。
 平成11年「アースデイしが」の開催をきっかけに、県として菜種燃料化に向けて「菜種栽培実験事業」が始まり、その後、栽培面積も増え休耕田にも栽培されるようになりました。
 平成17年資源循環型地域作りの拠点として「あいとうエコプラザ・菜の花館」が完成。石けんの製造、廃食油の燃料化、菜の花からの菜種油の製造、もみ殻の炭化、菜種栽培の支援、環境学習の拠点等として利用されています。館の運営は幅広い市民が参加するようにNPO法人に運営一部を委託し、官民共同の体制で進めています。
 資源循環型の「菜の花エコプロジェクト」(別紙)は、全国に広がり、今では44都道府県約150団体が取り組んでいます。

「菜の花エコプロジェクト」の取り組みの成果
●環境に優しいBDF燃料利用
 ・地球温暖化の原因にならない ・酸性雨の原因にならない
  ・黒い煙が出ない       ・可燃ゴミの減量になる
 ・循環型で無くなる心配がない。
  化石燃料~再生可能なエネルギーへ
 ・使い方が簡単ー走力、馬力は問題がない。
●休耕地や耕作放棄地を利用して菜種を栽培することにより農業に新たな展望 が出てきた。
●子ども達の環境学習の教材として有効である。
●菜の花の開花期は周辺を訪れる観光客もふえ、観光資源となっている。隣接 している「道の駅」の売り上げに貢献している。
●地域から発信した運動であり、地域活性化がはかられている。

「今後の課題」
●燃料の利用について
 ・高濃度でゴムが劣化しやすい 
 ・寒冷地での利用 ・酸化しやすい ・取引税の対象となるー軽油と混同した場合
●廃食油の回収について
 現在はガソリンスタンドへの回収ボックス、まちづくり協議会が地域活動で回収をし ているが、今後は保護者宅へボックスを置くなどさらなる回収の工夫が必要。
●分別、回収など市民が努力したことが実感できるような取り組みが必要。
●菜種栽培には助成金が支給されている。農業としての自立していくにはまだ課題があ る。
「感想」
 菜の花の栽培ー食用油として利用・油かす等を肥料として利用 ー石けん、BDF燃料として利用、という資源循環型のサイクルが、循環型社会の地域モデルとして 、また地球温暖化対策としても注目され、全国に発信されています。
 活動の経過を見ると、琵琶湖の汚染問題から発した住民の取り組みから意識改革が進み、行政も巻き込んだ運動に発展しています。一朝一夕に成果が表れてきたのではなく、将来を見据えた息の長い取り組みがあってのことと思います。また、子ども達の環境学習においては非常にわかりやすい教材であり、将来のまちづくりにつながるのではないでしょうか。 茅野市において「菜の花」にあたるものは何かと考えさせられました。


○滋賀県 野洲市視察 
 
 【消費生活相談ー多重債務相談の先進的な取り組み】 
  多重債務の被害者が増えている中で行政として住民の一番身近な相談窓口としての機能を最大限発揮し、問題の解決にあたっている取り組みを視察しました。

 野洲市では99年から専門の相談員を配置し、相談窓口でのワンストップサービスを実施しています。 また、市役所として、・住民の身近な窓口としての機能 ・広報、啓発機能、 ・相談窓口への誘導機能 ・生活再建への支援 ・外部機関とのネットワークの役割を果たすようにしています。
 市役所内の市民生活相談室には4名の職員が配置され、法律相談、行政相談、消費生活相談の受付をする一方で、相談受付窓口として市民からの相談を一番先に受ける部署であり、相談者の内容を聞き取り市役所内の各担当課に案内しています。
 多重債務については市役所内の関係部署が参加する協議会をつくり、連携して対処するようにしています。(別紙参照)
 そこまでは他にも取り組んでいる自治体もあると思いますが、野洲市の取り組みのすごいところは、多重債務の解決だけでなく、その後の相談者の生活再建まで目を向け、多重債務に陥らない、発生の防止を目標として解決しようとしていることです。
 また、「多重債務を解決することは、税金の滞納を解決し、犯罪、自殺を防ぐことにもなり、市役所にとってもメリットになることである。」と、職員の市民に対しての研修もおこない、職員の意識改革も進め、市役所全体が同じ意識で市民に対応するようにしていることです。 そんな対応の結果、平成20年度の消費生活相談772件のうち多重債務の相談が227件だということです。

 感想としては まず、説明してくれた市民生活相談室の職員に圧倒されました。相談者の立場に立ち、何とか解決したいとチラシを作って市役所内を回ってうったえたとのことですが、その熱意には頭が下がります。市役所内の体制が確立するまでに大変だったことは?との質問に「役所の縦割り行政」をあげていました。多重債務に苦しむ市民をどう見ていくのか市職員の意識改革を重視し、それが浸透していっているのだと思います。
 
 【自然エネルギーの活用と地域通貨「すまいる」と実践について】   野洲市は市民や事業者が参加して地域エネルギービジョンを策定したことをきっかけに 、省エネ、自然エネルギーの利用等地球温暖化の取り組みを活発に展開しています。
 農業、水産業など地域にある資源を生かし、地域内の経済循環で内発的発展をはかる、環境と経済をきちんと位置づけようとしています。
 自然エネルギーに関しては市内のNPOと行政が連携して一般市民から資金を集め
(一口千円)、公共施設に太陽光発電機を設置していくという活動です。
 資金を出した市民には市内約150の加盟事業者で使用できる地域通貨「すまいる券」が渡されます。加盟業者は基本的に地域密着型の中小業者で地域や環境にこだわりを持つ農園や食料加工業者店舗などが多いとのことです。また、イベントなどでの出店や移動販売車の運行が行われそれが発展して常設の店舗が開設されました。運営は順調で新たに2号店か開設されました。現在ではその資金を使って2基の太陽光発電が設置されています。

 「感想」
 野洲市で実施されているこのプロジェクトは、自然エネルギーの普及だけでなく地産地消という意味合いを持たせていることが特徴だと思います。
 地産地消は温暖化の取り組みの意味もありますが、地域の農業や経済等の活性化にもつなげていること、市民の参加がしやすい取り組みであることが特徴だと思います。茅野市でもこれから地球温暖化計画に策定をすることになりますが、地域活性化の手段となる可能性を持つということ、市民参加と協働も不可欠な要素になると思います。

○京都市上京区春日学校区
 
  【春日学校区の住民福祉協議会の取り組み】
 京都は住民自治の伝統が位置付いており、町内会、自治会単位に各種団体が作られ、様々な活動を行ってきています。
 春日住民福祉協議会は自治連合会の一団体であった社会福祉協議会を昭和48年全住民参加の住民福祉協議会としたことから始まりました。自治、福祉、防災を地域作りの柱として 取り組んでいます。平成16年には特定非営利法人としての認定を受け高齢者、障害のある人、子ども等住民が安心して暮らせる地域作りを目指して様々な活動を行っています。
 自治・福祉・防災をトータルとらえ「住み慣れた地域で安心して暮らすことの出来る生活全般にわたる支え合いを作り、災害時には互いの助け合いで地域復興を進める力になる」三位一体の取り組みで、春日便りの発行、福祉防災マップの作成ふれあい拠点作り(春日デイケアセンター、ちびっこ広場、春日会館)等を、町内会、各種団体が一体となって取り組む住民組織住民組織を作って活動しています。

  春日のまちづくり活動として、ふれあい教室(料理教室・健康教室・防災教室・健康教室・文化講座・交通教室・防犯教室)ふれあい訪問(交通安全訪問・健康訪問・子どもふれあい訪問・配食サービス・寝具クリーニング)介護予防事業等を行っています。
 今子ども達との関わりを重点として小、中、高、大学との連携を強める取り組みを行っています。
 春日住民福祉協議会は「あしたのまち・くらしづくり活動賞」で内閣総理大臣賞を受賞、テレビや新聞でも何回も取り上げられ、全国でも評価の高い取り組みをしています。
 茅野市でもこれから地区コミュニテイを中心とした地域作りが課題です。春日学校区の住民福祉協議会は昭和48年から始まった息の長い歴史があります。一朝一夕にはいかないとは思いますが、参考にしていくすぐれた取り組みだと思いました。

4、その他
 蛇足ですが、一日目の宿泊場所の近江八幡市は、「近江商人の街」として、琵琶湖につながる八幡堀を中心とした散策路、旧商人の住宅、建造物が多く残されている町並みが印象的でした。
 今回は2泊3日、3自治体4つの課題の視察でした。どのテーマにおいても全国的に高く評価されているとりくみであり、非常に有意義な内容の研修となりました。大いに学んで市の施策に生かす必要があると思います。



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