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こんな夢を見た。
森の中に居た。 比較的に明るくて、恐怖も感じない、絵本のような穏やかで、豊かな森だった。森は突然開けて、丸い小さな広場があって、その中心に切り株がひとつ、ぽつんとあって、そこに、頭の先から、つま先まで真っ白な男が、非常に深刻な顔をして座り込んでいた。 彼は少しのっぺりした顔立ちで、背は高すぎて、それでいて、手足が細いので、全体的に「細長い人」という印象だ。髪の毛、肌が白く、着ている服は真っ白のロープだから、とにかく真っ白で、森の中に浮いている。 「どうしたものか…」 彼はそう呟いて、私をさらっと一瞥すると、次は、大げさにため息をついて見せた。 どうにも、その態度から、私に相談にのって欲しいような素振りだ。それでも、私が微動だにせず、眺めていると、再び彼は、私の方をちらりとみて、「ああ、困った」とはっきりと言葉に出し始めた。仕方がないので、声をかけてみる。すると、「君には到底解決できない問題だ」と言われ、心底気分を害すはめになった。 私が帰ろうとすると、彼は慌ててひきとめてきた。 どうやら、ツンデレしているらしい。 彼の隣に座りこむと、彼は毅然とした態度で立ち上がり、空を仰いだ。森の青さに比べて、見上げた空は、今から雪でも降るかのように、灰色垂れこめていて、実に重々しい。 「子供の頃は愛されていたのに、それが大人になると突然嫌われるんだ、どうしてかね」 突然の言葉に何を言っているのかわからない私は、さらに不機嫌になった。 それを察してか、白い男はまた慌てた。 「ええと…なんだ…みんな子供の頃は私のことを好きでいてくれるんだよ」 そういうと、白い男は小さく体を折りたたんで私の貌を覗き込むようにした。 「それがどうだ、大人になったら、突然、私のことを嫌いになるんだよ」 男は折りたたんでいた膝と伸びあがると、空を仰いだ。 ははん、こいつ、「雪」だな。と私は思った。 彼は自分の正体を名乗っていないから、言っていることが一見して謎かけのようになっているが、私はこういう類の夢をすでに見たことがあったので、すぐにわかった。が、夢で見たことがある、という事実まで思い出してもなお、これ自体が夢であるというところまでは頭が回らない。 雪の化身は、本気で悩んでいるようだ。 確かに。相手が子供の時は、凄く喜んでくれるのに、そが大人になった瞬間、非常に煙たがられると、こっちは非常に困惑してしまう。考えると、とても辛いだろうが、実際に、その立場に至ると、きっと、もっと傷つくだろう。まして、この雪の化身、態度から見ていると非常に高飛車で、プライドが高い人格を持っているようで、そんな人物ないし、モノがその立場であるとすれば、したたかに傷つきそうだ。 私は、毛糸の手袋からしみてくる、雪の溶けた冷水に指を冷たくしていたのを思い出した。 「子供の頃、雪に降られて困ることはないが、大人になったら生活するに困ることがある」 そういうと、雪の化身は、ああ、と眉毛をあげた。 子供の頃、雪に降られて困ることはなかった。 雪はただ、普段より特別な遊び道具になったし、子供の生活なんか、全部大人に依存しているから、雪が邪魔になることはない。登校の時に邪魔になったとしても、なんの苦にもならない。でも、大人はどうだろう。雪が降った日には、会社に遅刻する、路面が凍って歩けない…大人の立場で雪を見た時、思いつくのは、嫌なことばかり。ひとつも面白いことなど思い浮かばない。 「ねぇ、アンタ、大人にも好かれたいの?」 「それとも、大人になると突然嫌われることにびっくりしているの?」 どちらだとも、雪の化身にとっては、嫌なことなんだろう。雪の化身は、ますます頭を抱えた。 「どっちとも…どちらもだ、私は人気者でいたい」 本音はココに出た。 つまり、誰からも好かれていたいようだ。それは出来ない相談だ、と私が言うと、雪の化身は私にすがるような目つきになった。 「君は!君は、僕のこと、嫌いかいっ」 その言葉がいい終わるか終らないか、語尾にかぶせるようにして「嫌いだ」というと、雪の化身はのけぞって、大地にふらふらと倒れた。 「寒いのも嫌だし、冷たいのも嫌いだし」 私は寒冷アレルギーなので、身体にダメージが如実に現れる。 雪の化身は、仰向けになったまま、自分が降ってくるような灰色の空を見上げて、はらはらと涙を流した。その涙の粒は、ひとつひとつ違う形をした雪の結晶だ。少し可哀そうだ。 「嫌、純粋な子供に好かれるから、君は真っ白なんじゃないのか?」 フォローを入れると、雪の化身は待ってました、という感じで反応した。 「ほら、だから、大人が多い都会の雪は、アスファルト色に汚れるだろう?」 さらにフォローを入れると、雪の化身は、悩みも何も、誇りを取り戻したのか、非常に嬉しそうにして、立ち上がった。 関東には、雪が降り続いているらしい。 [俺式夢十夜]カテゴリの最新記事
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