旧日本長期信用銀行(現:新生銀行)が経営破綻したのは1998年~もう10年も昔の話になってしまった。粉飾決算に関わったとされる旧経営陣の裁判で、最高裁が逆転無罪の判決を下した。新聞の一面に大きく掲載されたところで、いったい旧長銀って今の何だったのかも、忘れてた人も多いのではないか。
世論は沸騰したかと思うと、何事もなかったかのように静かになったりする。時間が経てば記憶の彼方に忘れ去られてしまう。そもそも元頭取らの刑事責任追及は、巨額の公的資金注入という一大事に、世論の「激高」に応えて行われた「国策捜査」と言えた。10年をかけて出た結果は「ずばり無罪」~真の責任は誰にあるのか、そして何処にあるのか、結局は分からないまま終わってしまった。
10年前の事件は、あくまで10年前の法律や証拠に基づいて行われる。だから、粉飾決算の刑事責任を追求することは、後で公的資金を注入することの有無とは別の問題だ。税金を注入したのだから、何がなんでも刑事責任を追及するんだという、後出しじゃんけん式の戦犯追及は、それこそ「東京裁判」と同じだ。
90年代後半の経営陣は、とにかく損だけこいた、と言えるだろう。元はと言えば、バブル時代に左団扇だった経営陣は時効の差で守られ、先代が残した不良債権を必至こいて処理しようとした人々が槍玉に挙げられた。歴史的な経緯と切り離せない問題を、どうやって責任追及するのかは、難しい問題だと思う。80年代後半、誰もがバブルの世を謳歌した訳で、その後始末は結局みんなでやらねばならなかったのだ。
太平洋戦争当時、ほとんどの国民が戦争に協力し、戦い敗れれば「戦犯」とされた人々に冷たい態度で接した。そして「戦後」が終われば、そんなことも忘れてしまった。今回の「旧長銀」の一件も、時代の大波に翻弄され、そして忘れ去られるという、人間のむなしさを強く感じる。
一方、巨額の税金を注入して再スタートを切った新生銀行の業績は厳しい。消費者金融「レイク」を買収するという積極策がニュースとなったが、新生銀行系のサラ金はこれで何社になるのだろう。貧困層から利息をがっぽり取って、富裕層たる預金者に還元・・・公的資金を返済するためとはいえ(?)、冷徹な資本の論理が巷を闊歩している・・・。
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最終更新日
2008.07.20 17:52:04
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