表紙を開くと1行の文章が目に入ります。
「魔女でもあり、母親でもある、世界中の女たちに捧げる」
何の予備知識もないまま、童話なのかオカルトものなのかも分からないまま読み進めてゆくうち、すっかり魔法にかかって一気に読み終えてしまいました。
かつて偉大な力を持っていた魔女が森の奥にひっそりと住んでいました。あるとき森の中でかごに入った赤ん坊を見つけます。かごには「悪魔の妻へ、悪魔の子供を」とメモがついていました。
赤ん坊はとても醜い男の子でしたが、子育てをしたことのない魔女は全ての犠牲を払ってこの子を育てます。しかし子供が思春期を向かえ、自分の顔を見ただけで人びとが逃げ出したり攻撃したりするほど醜いことが分かり、母親(魔女)の愛情とは裏腹に母親を憎むようになり、屈折した感情はますます酷くなってゆきます。
魔女は子供のために魔界から追放されることになりますが、見返りのない愛情を注ぎ続けます。
出口の見えないシリアスな展開にどんどん引き込まれます。物語の中に有名な童話がたくさん出てきて、シックリと物語に組み込まれているのも面白いです。
「魔女でもあり、母親でもある、世界中の女たちに捧げる」
なるほど。納得の結末を迎えます。
三辺律子さんの訳も素晴らしく、とても素直に読めました。
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