カテゴリ:読書
「グラスホッパー」の続編とはいっても犯罪組織の背景や登場人物の何人かは共通するものの全く別な話なので、前作を読んでいなくても十分楽しめます。
--- 毎度のネタバレ --- 主人公の殺し屋の名前は七尾、あだ名が天道虫(てんとうむし)。実は題名のマリアビートルは天道虫のことです。七尾はどちらかといえば気の弱い常識人で、とにかくツキの無い殺し屋なんです。ただし、動作が速く腕が立つ。 七尾の今回の仕事は東京から「はやて」に乗り、指定のトランクを盗み上野で降りる、たった5分で終わる仕事だった。そこはツイていない七尾くん。どんどんトラブルに巻込まれ、何度かトランクを手にするが、その度に途中下車できない出来事が起こり、とうとう終点の盛岡まで行ってしまう。 乗り合わせた他の殺し屋は、アル中の殺し屋、木村。彼は屋上から突き落とされて瀕死の状態にある小学生の息子の復讐のために、王子と呼ばれる邪悪な中学生を狙って、王子の乗るこの「はやて」に乗り込んだが、逆に王子に拘束されてしまう。 そしてもう一組の「蜜柑」と「檸檬」という殺し屋コンビ。人質と身代金を取戻して盛岡まで護送するはずだった。仕事はうまく行き「はやて」に乗ったところまではよかったが、ここで大事な人質は殺されてしまうわ、身代金は失うわの大失態。実はこの身代金が七尾の狙うトランクなんです。 さらに途中から、木村と孫の危機を察して年老いた両親が「はやて」に乗ってきます。この二人も現役を引退した殺し屋で、爺さん婆さんだが筋金入り。ブルース・ウィリス主演の映画「REDリターンズ」さながらの大暴れ。RED(Retired Extremely Dangerous)の意味は「引退した超危険人物」らしいのでまさにこの通り。 その他にも「グラスホッパー」に登場した、塾講師で妻の復讐のために教師を辞めて殺し屋になった鈴木、スズメバチと呼ばれる毒を扱う殺し屋もこの「はやて」に乗っています。 とにかく、次から次へと事件が勃発します。良く言えば息もつかせぬ展開!別な言い方をすれば殆ど収拾のつかないドタバタ劇の様相を呈してきます。さて、木村と子供の運命は?トランクと七尾くんの結末は?生き残るのは誰?というように最後までダレずに楽しめます。新幹線の中だけの設定で600頁を飽きさせずに書き下ろす伊坂幸太郎さんはやはり凄いですね。 この話に出てくるのは殆ど殺し屋なので社会的には同情の余地など無い人びとですが。。。七尾くんについては応援しながら読んでしまいました。「蜜柑」と「檸檬」についても木村親子も憎めないキャラクターなのです。 唯一、許せないのが王子です。見掛けは目のきらきらした絵に描いたような優等生。しゃべり方も純粋無垢な中学生。ところが根性は最悪で聡明&冷酷なキャラ。人を支配し、卑劣な方法で人を不幸に陥れ、苦しむのを見るのが趣味というような奴なのです。でも、人間の心の何処かには王子と同じような感情が潜んでいるのかもしれませんね。最後は、ざま~見ろの結末。伊坂幸太郎さんが責任を持って始末してくれました^^) 上のボタンをクリックしていただけると嬉しい お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016/06/28 08:38:26 PM
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