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2004 My best records short story (読書・コミック)楽天ブログ 【ケータイで見る】 【ログイン】
Mercy Mercy Me 2004

2004 My best records short story

To my brothers

Subject:About 2004 my best records short story

 2004年の夏に40歳になったんだ。
生きていると毎年年齢が1つづつ増えていくものだけれど、40歳という年齢ほど自分に似合わない
ものはないように思う。だって私は相変わらずお酒もタバコも辞めていなくて、ヘアースタイルだっ
て20代のときから変わっていなくて、奥様雑誌やブランド物に興味も持てなくて、ぶつけたままほ
ったらかしにしているから周囲に「ゲットー仕様車」って呼ばれている旧マーチに乗っている。K池
さんが部長だったときにさ、口ぞえで当時私のママが買った車なんだけどね、それをいくつになって
もこんな生活している娘のために、かどうかはわからないけどそのまま譲ってもらった。ママはさ、
新車買ったの、70歳にもなろうとしているほうがお金持ってるわけ。
 でも変わったことも確かにあって、明らかに加齢とともに目じりが下がってきたしシワも出てきて
白髪も増えて、PTAの役員とかやったり、日本語教師の資格をとったりもした。けれどもこういう
ことって変わったというよりもむしろ自然な流れで出来ちゃってたことだった。無理めだと思ってい
たこともさほど無理せずこういうふうになっていた。でも私が20代のときから考えている目標は、
ずーっと先のほうにあって、なかなか手が届かないんだ。そしてそれをまたぼんやりと見つめながら、
タバコをぷかぷかと吸って、風邪薬をビールで流し込む。
 何も変わっていないのか、本当は少しづつ変わっているのか、変わっていることに気付かないのか、
あるいは気付いていないフリをしているのか、本当のところ、よくわからない。でもよくわからない
ことはこれでいいんだと思うようにしている。そして最近よく思うのは、20代のときあんな年上に
見えたおにいちゃんたちも、こんなふうに時間の流れを感じてきたのかなあ、なんて。

 40歳になってすぐ、いろんな偶然が重なって私は20年ぶりにふるい友人と会ってお酒を飲んだ。
12歳で知り合って、彼は私にジョン・レノンとポール・マッカトニーを教えてくれたんだ。少した
って私は彼にマービン・ゲイを教えてあげた。自分の身の回りに起こった10代のときの出来事のほ
とんどを彼は知っている。そして私もまた10代の彼の大部分を理解してきたつもりだった。でも、
20年ぶりにあって10代のときの話をしたら、何かが微妙にズレていたんだ。ほんの少しのズレな
んだけど、なにしろ20年ぶりの再会だから私は耳をピンと立て、彼の一挙一動を見逃すまいとアン
テナを張りめぐらせている状態で、だからほんのわずかなことでも敏感に反応できたんだ。遠いとこ
ろでお互い別々の人生を歩いてきたし、何しろ20年の空白もあるわけだから、そのあたりの奇妙な
ズレは自分の中では当然のことだと受け止めることはできたんだ、いったんは。でもいや違う、そう
じゃない、ってまた思い直すと、今まで自分が理解していたと思っていたはずのことは実はすべて間
違いだったんじゃないかとも思える。心が震えた。私は20年以上、何か大事なことを誤解し続けて
いたんじゃないか、誰かのことをわかったつもりになっていたけれどそれはひどい妄想だったんじゃ
ないかそう思うと、なんていうの、心臓が凍りつくというか、とにかくそんな気持ちになって、けれ
ども今さらこの月日を撤回するわけにもいかなくて、身体のどこかを今誰かに押されたら、そこから
どどどって涙があふれてきそうな、身体の中はすべて涙で出来ている、ひどい状態になった。思い上
がりとか自分勝手とか、いろんなネガティブな単語が頭の中をぐるぐる回って、どうしたらいいのか
よくわからなくなって、そんなときなのに、私たちはふたりで一緒にビリー・ジョエルを歌った。
私は歌なんか歌いたくない、時間がもったいないからって言ったのに、彼はいや歌を歌ったほうがい
いんだ、次に会うのはまた20年後かもしれないだろ、ってそう言って歌った。ビルー・ジョエルは
私たちが中学生のときにデビューして、ふたりともFMラジオでエア・チェックして「ニューヨーク
52番街」のB面の2曲めは録音した、だの、オネスティとマイライフどっちがいいかだの、歌詞
なんかよくわからないまま競って報告しあっていた、あの頃のふたりが好きだったアーティスト。
だから、彼がビリー・ジョエルを歌おうって言ったときに、ああと思い出して、すべてが誤解だった
わけでもなかった、というのが私の結論なんだけど、あの晩、いい意味でも悪い意味でもぴかぴかに
光っていた宝石のようなあの時間というのが確かにあって、それは半年以上たった今でもまぶしくて、
そして40歳で最初に飲めたお酒がおいしくて、40歳で最初に聴いて歌った歌が胸をうったという
わけなの。

 いつも新しい音楽を聴いていなくてもそんなことは関係ないっておにいちゃん、ずっと前に私に
教えてくれたよね。20代のときは何か気でも違ったのか、というくらい新譜を入手することに躍起
なって、新しい音がインだと思っていた私へのたしなめだったのかもしれないけど。今、その言葉が
本当に胸に響いてくるよ。だってあの晩のビリー・ジョエルはきっと私生涯忘れないと思う。今まで
だって何度も何度もあちこちで聴いて歌っていたはずの1曲なのにね。でもあの夜のあの1曲は意味
が違うわけ。子供を産んでから音楽なんか全然聴いていないからって何度も言ってるのに、おにい
ちゃんたちが言いたかったのはこういうことだったんだなあって。何かこう、車に乗っていて太陽が
ゆっくりと落ちていく夕暮れにはジャミロクワイを聴きたいとかさ、その車に乗っている理由が子供
のお迎えだっていいじゃない、その夕暮れとジャミロクワイってぱっと頭に浮かぶその瞬間がさ、音
楽を必要としていて、愛すべき一瞬なんだよね。その一瞬のために生きているんだよね。今さら私が
言うことでもなく、みんなそんなことはとっくにわかっているんだろうけど、だからこそいつものよ
うに最後に私が記す言葉は、ありがとう。
(2005,6,3)


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