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蒼海に消ゆ 門田隆将 2011年
祖国アメリカへ特攻した海軍少尉「松藤大治」の生涯
山崎豊子の「二つの祖国」吉村昭の「深海の使者」にでてくる伊丹明は、アメリカ人ながら親の故郷鹿児島に学びに来て、大学を卒業し、開戦前には鹿児島出身の政治家の尽力でアメリカに帰国し、日系人収容所生活を強いられたそうだ。軍の要請で暗号解読に協力し、ドイツからUボートで要人を移送する内容の鹿児島弁暗号も翻訳したりしたそうだ。戦後は占領軍の通訳として東京裁判でも活躍したらしいが、最期は自殺を遂げたと聞く。アメリカにつくした日系留学生となる。
本書の松藤大治は、アメリカから日本に留学中に戦時突入して帰国できず、在米の親からの仕送りが途絶える中、友人等の支援をうけながら東京商大で文武両道を研鑽するも、学徒出陣に応じ、特攻隊員として出撃して戦果とともに命を落としたそうだ。剣道に秀で、頭脳明晰、人格温厚で皆に慕われる人物であったらしい。
国を支える志のある若者達を消耗させた軍と政治はやるせない。国力の違いを知り抜いている主人公が、意を決して母国アメリカへの特攻に果てる運命には言葉がでない。
自由を重んじてきた一橋寮の学生達が学徒出陣の前夜、たき火を囲んで決起に集うていると、賛美歌が武蔵野の森から流れてきて、見知らぬ津田塾の学生達が現れ、海ゆかばを一緒に合唱したそうだ。
学びを求めてやまない者の精神を断ち切り、命をさらっていく国。覚悟を決める国民。この結末は、合理的な学びを捨て、自らの論理、自らの組織の保身に溺れた指導者たちの所業の結果であるような気がする。
武力による精神・学問の支配、教条による精神・学問の支配は、許してはならないはずだ。
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Last updated
Aug 7, 2015 11:28:14 AM
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