あの誕生日の惨劇から何ヶ月か経った後、ルドルフはプラハ赴任が決定となった。
「そうですか、プラハへ・・」
ユリウスはそう言って心配そうな顔をしてルドルフを覗き込む。
「大丈夫だ。私はもう、あの日のことは忘れたから。」
だが、ルドルフの脳裏には炎に包まれた庭園と死体の山がいまだに消えることがなかった。
「そうですか。お体をあまり壊さないようにしてくださいね。」
そっと自分の手をルドルフの手に添えるユリウスの左手薬指には、永遠の愛の証がはめられてあった。
「ユリウス、私のそばにいてくれるか?どんなことがあっても、私のそばにいてくれれるか?」
そう言ってルドルフはユリウスの胸に顔をうずめた。
「私は怖いんだ・・自分が何者なのか、私は怖くて仕方がないんだ・・」
やっぱり、この方は無理をしてらしたのかーユリウスはルドルフの髪を撫でながら、そう思った。
“あの日”から、ルドルフの情緒が不安定になっていることは、宮廷の誰しもが知っていた。
だが誰1人としてルドルフをいたわろうとせず、ルドルフはいつも深い悩みを抱えていた。
そんなルドルフを、ユリウスは支えてきた。
「私はこのままだと心が壊れる・・だから、壊れる前に私を・・」
ルドルフはそう言って頭を抱えた。
「約束します。私はどんなことがあっても、あなたのおそばにおりますよ。」
「ありがとう、ユリウス・・」
ルドルフは恋人の腕に包まれながら、眠りについた。
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Last updated
2011.07.26 14:56:06
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