翌日、香が教室に入ると、クラスメイト達が何やら週刊誌を広げながら話をしていた。
「何かあったのか?」
ユーリに話しかけると、彼女はちらりとクラスメイト達の方を見た。
「何でも昨夜、通り魔事件があったらしいよ。塾帰りの子が誰かに喉笛を掻き切られて殺されたって。」
「そうか。」
やがて担任教師が入って来て、同級生達が慌ててそれぞれの席に戻った。
「それ、見せてくれない?」
週刊誌を持っていた生徒は、じっと香を見た。
「いいよ。あたしもう全部読んじゃったから。はい。」
「ありがとう。」
生徒から週刊誌を受け取った香は、先ほど彼女達が熱心に読んでいたページを見た。
そこには「いじめへの制裁か!? 通り魔事件から見える名門お嬢様学校の闇!」という見出しの下に、被害者と思われる少女の写真が映っていた。
担任がHRを進めているのを傍で聞きながら香が記事を読み進めてゆくと、被害者の少女は同じクラスの女子生徒をいじめていたらしい。
いじめの加害者が何者かに殺されたこの事件に、香は不知火の影がちらついて見えた。
「ユーリ、これを見ろ。」
昼休み、香はユーリの前に週刊誌の記事を見せた。
「昨夜起きた事件ね。この事件がどうかした?」
「この事件の陰に、不知火が居るような気がしてならない。調べる価値がありそうだ。」
昼食を終えた2人はPC室へと向かい、事件の事を調べたが、どれも事件の感想を述べているサイトやブログばかりで、めぼしいものは見当たらなかった。
「そっちはどうだった? 何か見つかった?」
「いいや。」
香は凝り固まった首の筋肉をほぐす為に首を回しながら、マウスで画面をスクロールさせた。
その時、彼の目に“煉獄通信”の文字が飛び込んで来た。
その文字をクリックすると、何やら不気味な壁紙に飾られたサイトが画面上に映った。
「それ、何?」
「さっき見つけたサイトだ。“煉獄通信”っていう名前だ。どうやら復讐請負人サイトのようだな。」
「今朝テレビでやってたわ。確か自分に代わって復讐をしてくれる人のサイトよね?」
香がサイトの案内を見ると、サイトの左下に「連絡板」と書かれているページを見つけ、素早くクリックしてそのページを開いた。
するとそこには、事件当夜に書かれた依頼内容が表示されていた。
「被害者は、このサイトの管理人に殺されたようだな。ここに被害者の名前が書かれてある。」
「そう・・」
(このサイトの管理人って、もしかして不知火さんだったりして・・)
「連絡用のメールアドレスに今夜、連絡して管理人に接触してみる。」
「そう、気をつけてね。」
「ああ。」
その夜、香は自分の部屋にあるノートパソコンを開いて“煉獄通信”の管理人にメールを書いた。
“わたしは元恋人に暴力を振るわれた挙句、彼との子を流産してしまいました。赤ちゃんの命を殺した癖にのうのうと生きている元恋人に復讐してください、お願いいたします。”
「これでよし、と・・」
香はそう呟くと、「送信」ボタンをクリックした。
「ふぅん・・面白い内容だね。」
画面の向こうで、不知火はそう言って笑った。
彼はキーボードを叩き始め、メールの返事を書いた。
“あなたのお話を詳しく聞きたいです。”
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