「わたくしに、話ですか?」
イルディアはそう言ってシェーラを見た。
「実は、近頃南部で反乱が起きているようだ。」
「南部で、反乱ですか。それは、厄介ですね。」
「ああ。あそこは昔から争いが絶えぬ所であったが、反乱が起こる度に軍が鎮圧してきた。だがもうそれも限界かもしれぬ。」
イルディアは机上に広げられた地図を見た。
地図には、赤い旗が南部を中心につけられていた。
「今南部ではこのわたしに反旗を翻そうとしておる連中が集っておる。なんでもそやつらは自分達のことを“新しき王”と呼んでいるとか。」
「腹立だしい限りですね、陛下という方がいらっしゃるというのに。」
シェーラの話に、すかさずフェステル男爵が相槌を打った。
「そこでフェスティルよ、南部に赴きその連中の動向をわしに報告してくれまいか?」
「わ、わたくしがですか? イルディア殿ではなく?」
フェステル男爵がそう言ってイルディアを見た。
「そなたはわしの懐刀。わしの手足となって働くのは当然であろう?」
有無を言わせぬ口調で、イルディアはそう言うと青ざめているフィステル男爵を見た。
「あ、ありがたくその申し出。お受けいたします。」
閣議室を出たフィステル男爵は、じろりとイルディアを睨んだ。
「イルディア殿、陛下に何か変な事を吹き込んだんじゃないのかね?」
「そんな事はしておりません。それよりも、あなたも大変ですね。」
イルディアはそう言うと、セシャンを連れてフィステル男爵の元を去った。
「宜しいのですか、あんな事を言って?」
「何のことだ、セシャン? わたしは何も言ってないぞ。」
「あなたという方は・・」
セシャンは上司を見て苦笑いした。
その夜、セシャンが帰宅すると、ダイニングの方が何か騒がしかった。
「どうした?」
「セシャン様、それが・・」
執事がそう言った瞬間、ダイニングから酔っ払った女が出てきた。
「あはは、楽しい~!」
女はそう叫ぶと、セシャンに抱きついた。
セシャンは彼女を突き飛ばし、ダイニングへと入った。
そこには、あの娼婦―リーシャが仲間達と飲んで騒いでいた。
「お兄さぁん、一緒に飲もうよぉ。」
「今すぐ俺の家から出て行け。」
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