森の中から出て来た“それ”は、赤い羽根を広げながらじっとエリスを見ていた。
胴体は鳥だったが、何故か顔は女の顔だった。
“あなたが、エリスね?”
女はそう言うと、エリスを見た。
「そうですが、あなたは?」
“わたしはずっとあなたいお会いしたかったのです。”
女は羽根を広げると、エリスに頭を下げた。
「エリス様、どうかなさいましたか?」
森の向こうから、南部軍の兵士の声がした。
「いいえ、なんでもありません。」
エリスが女の方へと向き直ると、そこに彼女の姿はなかった。
(一体彼女は誰だったんだろう?)
エリスは森を去り、再び南部軍とともに山道を歩き始めた。
暫く彼らが歩いていると、森の中から突然湖が現れた。
「今日はここで天幕を張ろう。」
リーダーの声を聞いた兵士達は一斉に歓声を上げた。
彼らは全身埃や血、汗にまみれ、入浴すら碌にできなかったからだ。
湖の傍に天幕を張った彼らは、我先に湖へと飛び込んでいった。
「やれやれ、騒がしいな。」
リーダーは溜息を吐きながら、自分の天幕へと戻った。
同じ頃、シンはユリシスとともに北方の村にいた。
「ねぇ、どうしてこんな所に?」
「それは知らなくていいよ。わたしはちょっと出かけてくるよ。大人しく待ってるんだよ。」
ユリシスはそう言うと、部屋から出ていった。
「全く、これからどうすればいいんだ?」
ベッドの端にシンが腰掛けると、シンは鬱陶しそうに前髪を掻き上げた。
その時、部屋に1人の少女が入って来た。
「あんた、誰?」
少女は敵意に満ちた視線をシンに送りながら、ドアの近くに立っていた。
「ノックもしないで部屋に入る方に、名乗る名もありません。」
「何さ、偉そうに!」
少女はそう言うと、ドアを乱暴に閉めると廊下を走り去っていった。
シンは呆然としながらも、鏡台の前に座ると、そこに置かれたブラシの誇りを払うと、それで髪をとかし始めた。
「失礼致します。お客様にお荷物が届いております。」
ドアの向こうから控え目な少女の声が聞こえ、シンは鏡台から離れてドアを開けた。
そこには、12,3歳位の少女が両腕に箱を抱えていた。
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