「沙良様・・」
振袖姿の少女を見た中年の女が、慌てて彼女の為に道を空けた。
「納屋に監禁している2人の鬼の様子をわたしに逐一報告しておくれ。」
少女はそう言うと、女の耳元で何かを囁いた。
「ありがとうございます、沙良様!」
女がそそくさと自分の元から立ち去った後、少女は村長の部屋へと向かった。
廊下の途中で立ち止まり空を見ると、そこには血のように紅い月が浮かんでいた。
少女はそっと、月に向かって手を伸ばして、それを掴んだかのような感覚を楽しんでくすりと笑うと、再び歩き出した。
「村長様、沙良です。」
「入れ。」
「失礼致します。」
部屋の襖を開けて村長に礼をすると、彼は数人の少年達と戯れていた。
「お前達、下がっておれ。」
少年達は名残惜しそうに村長の部屋から出て行った。
「沙良、脱げ。」
「解りました。」
少女は村長に命じられるままに、帯紐を解いた。
シュルリ、と贅を尽くした帯がまるで鮮やかな蛇がとぐろを巻いたかのように畳の上に落ちた。
「こちらに来い、沙良。」
「はい。」
村長のしわがれた手が、乱暴に少女の振袖を脱がしてゆき、長襦袢姿の彼女を抱き寄せた。
「いつ触っても、お前の肌は気持ちいいな。」
村長はそう言って、長襦袢を乱暴に脱がした。
少女の白い肌が露わになったが、そこには女性特有の乳房がなかった。
「村長様・・」
少年が村長の肩に手を回すと、彼は下卑な笑みを口元に浮かべた。
「お前だけは、儂のものだ、沙良・・」
「はい・・」
ルドルフとユリウスが納屋で監禁されてから3週間が経ち、その間2人は食事と水を与えられていたが、入浴はおろか、顔を洗う事すら許されず、換気が悪く、暑い納屋の中で彼らの体力は少しずつ落ちていった。
「ルドルフ様・・」
「大丈夫だ。ユリウス、お前少し熱があるんじゃないか?」
ルドルフはそう言うと、自分の額をルドルフの額にひっつけた。
そこからは微かに熱を感じた。
「そうですか? わたしは大丈夫です。」
ユリウスはルドルフを安心させようとしたものの、彼の息は少し荒かった。
衛生状態が悪い環境下で監禁されているだけでも過酷だというのに、ユリウスは毎晩村の男達に犯されていた。
それなのに、彼は自分の事よりも、ルドルフの事を心配してくれる。
そんなユリウスに対して何もしてやれない自分に、ルドルフは歯痒さを感じていた。
「ユリウス、本当に・・」
大丈夫なのか、とルドルフが再び彼に問いかけようとした時、納屋の戸が開いた。
『どうしました?』
あの振袖の少女が、床に伏しているユリウスを見た。
「熱があるんだ。早く彼の手当てを・・」
『村長様が、あなたをお呼びです。』
少女はそう言うと、ルドルフの両手首を縛めていた鎖を斧で壊した。
「ユリウスを、助けてくれ!」
少女の手を掴むと、彼女はユリウスを再び見ると、こう言った。
『この者は必ず助けます。では、参りましょう。』
少女に連れられ、ルドルフは3週間ぶりに外の空気を吸った。
ボロボロになったシャツは汗と垢で汚れ、全身の皮膚が痒くて発狂しそうになった。
『さぁ、どうぞ。』
少女がそう言ってルドルフを案内したのは、風呂場だった。
湯煙の中で、数人の少年達が動いている気配がした。
ルドルフが服を脱いで風呂場へと入ると、少年達が一斉に彼の身体をごしごしと洗い始めた。
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