ルドルフは暗殺者たちにサーベルで応戦したが、多勢に無勢で、彼は右手をサーベルで斬り落とされ、深手を負った。
(もう、これまでか・・)
―ルドルフ様。
またあの声が聞こえ、ルドルフが周囲を見渡している時、その隙を狙って暗殺者が彼に狙いを定めた。
2発目の銃声が響き、彼はゆっくりと床に倒れた。
痛みが全身を駆け巡り、呼吸すらもままならない。
(わたしは、死ぬのか・・)
もう死を覚悟してここに来たというのに、何故か生きたいとルドルフは皮肉にもこの時思うようになった。
―ルドルフ様・・
また、あの声が聞こえる。
ルドルフが目を開けると、そこにはカソックを纏った、死んだ筈のユリウスが立っていた。
(ユリウス・・)
痛みで幻覚を見てしまっているのだろうか。
―ルドルフ様、もう心配要りませんよ。
ルドルフの手を、ユリウスがそっと握った。
その温かな感触は、幻覚ではなかった。
―さぁ、一緒に参りましょう・・
(ああ、今度こそ一緒に・・)
ルドルフはゆっくりと、蒼い瞳を閉じた。
1889年1月29日深夜、マイヤーリンクににてオーストリア=ハンガリー帝国皇太子ルドルフが男爵令嬢・マリー=ヴェッツラと謎の情死を遂げる。
その死が自殺なのか他殺なのか、真相は謎に包まれたままである。
「そろそろ行くか。」
「ええ。」
皇太子の死を弔う鐘がウィーンの街に鳴り響く中、歳三と千尋は彼が愛した街を後にした。
「あいつは、死に間際に誰に会ったんだろうな・・」
「きっと、心から皇太子様が愛しておられた方でしょう。」
千尋はそう言うと、水平線の彼方を眺めた。
1944年10月、フィリピン・レイテ島。
日本軍は米軍の攻撃により劣勢に追い込まれ、米軍の戦力差により徐々に日本軍はその勢力を失っていった。
熱帯雨林の中で、日本軍の兵士達は泥や汗、血にまみれながら必死に敵と抗戦していた。
(もう・・駄目なのか・・)
学徒出陣で出征した秋山修司は、銃弾の雨の中、何時死ぬか解らぬ恐怖に怯えながらも銃を撃っていた。
その時、急に敵の攻撃が止んだ。
修司がそっと顔を上げると、そこには紺羅紗の上着の裾を翻し、銃器を持つ敵相手に刀を握り颯爽と敵を斬り伏せる男の姿があった。
修司が唖然とした様子で男を見ると、男はゆっくりと修司の方へと振り向いた。
「逃げる奴は俺が叩き斬る。だから、諦めるな。」
修司達は、男の言葉を受け果敢に敵へ突進していった。
熱帯雨林に、男達の咆哮と爆音が轟いた。
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